友への誓い
「また……俺のせいで!?」
※ ※ ※
一年前。
「ガウゥゥゥ!」
「はあ……はあ!」
(もうダメだ!)
「ガアァァァ!」
(え? ……化物は?)
「平気か!?」
(……人の手……)
「おい! ……おい!」
「う……うー」
「気がついたか!」
「ここは?」
「とりあえず水を飲め」
「……うん。ありがとう」
「俺が来なければどうなってたか」
「助けてくれて、ありがとう。僕は風太。麻生風太。それじゃあ」
「おい! まだ寝てねえと」
「黙って外に出てきちゃったから、早く戻らないといけないんだ」
「……俺は雁斗」
「教えてくれてありがとう。バイバイ雁斗」
風太が雁斗の家を出た。
「……なんだったんだ? 不思議な奴だった」
※ ※ ※
翌日……。
(誰だ? 朝、早く)
「やあ、お礼に来たよ」
「風太!?」
雁斗は驚く。
「昨日は息子が助けてもらったみたいで……つまらない物ですが、お受け取り下さい」
風太の母親が雁斗に菓子折を差し出す。
「俺はそんなつもりで……!?」
「受け取ってあげなさい。感謝されてるんだ、恥じることじゃない」
雁斗の父親が言った。
「……戴きます」
雁斗は菓子折を受けとると、奥に引っ込んだ。
「こんな山奥まで、わざわざご足労くださいまして申し訳ありません。特別、雁斗のが何かした訳じゃないですが、感謝されることをしたのならば父親として誇りに思います」
「まあ。ご謙遜しないでください」
親同士が話してる間に、風太は雁斗の元に行く。
「すまない雁斗、水をくれないか?」
「良いけど……どうしたよ? 顔色が悪く見えるぞ」
「そう? まあ、だから飲むんだけど」
「?」
「水、ありがとう。……会話が済んだみたいだ」
風太が外に出る。
「大してお構いも出来ずにすみません。わざわざご足労くださいまして、ありがとうございました」
雁斗の父親が礼を言った。
「いえいえ。こちらこそ本当にありがとうございました!」
風太の母親が礼を言った。
「それじゃ行くよ雁斗。バイバイ」
風太は母親と共に帰った。
「抹殺師として当たり前の事をして感謝されたんだ。素直に喜べ」
「当たり前の事をして感謝されてるから戸惑ってるんだよ」
「一丁前なこと言うねぇ~」
雁斗の父親は、雁斗をからかうようにクスクスと笑った。
※ ※ ※
翌日……。
「はーい!」
「すみません!! うちの風太が来ませんでした!?」
風太の母親が血相を変えて来た。
「いや……来てないです」
雁斗は父親にも目配せで確認する。
「あの子、今日は大事な日だから……。てっきり黙って病室を出て、雁斗君の所に行ってるとばかり……!」
「大事な日?」
雁斗が訊く。
「今日は手術なんです! あの子は生まれつき身体が弱くて、満足に走り回ることも出来なくて。私も風太も今日を待ち望んでいました」
(昨日、顔色が悪かったのは!)
「心配ですね。一緒に捜しましょう」
雁斗の父親が言う。
「お願いします!!」
辺りを手分けして捜していく。
「……! ……この気配は!」
雁斗は気配のする場所へ急いだ。
「ガウゥゥゥ!」
「あはは……。参ったね、これは……」
風太が倒れこんでいる。
「風太!」
雁斗が冷獣を切りつけた。
「ガウゥゥゥ?」
「効いてねえ……なら……!」
雁斗は砂を巻き上げて冷獣を目眩ます。
「バカ野郎! 今日は大事な日なんだろ! こんな所で油売ってんな!」
「ごめんよ。どうしても手術前に雁斗に会いたくてね……」
「んなもん手術後でも……」
「ガウゥゥゥ!」
「大人しく斬られやがれ!」
雁斗の抹殺器が冷獣を斬る。
「ガウゥゥゥ!!」
「なっ!?」
冷獣は砂を起こして雁斗の目を眩ませる。
「ガウゥゥゥ!!」
(目が……!)
「危ない!」
(風太……?)
雁斗が目を開く。
「ぐはっ!」
風太が雁斗を庇い、冷獣に踏み潰されていた。
「風太!!」
雁斗は抹殺器で斬りつけるも、冷獣には通用しない。
「クッソー!」
冷獣は雁斗の攻撃をウザったく思ったのか、風太から退くが、手も足も出ない相手に雁斗は勝機を見いだせないでいた。
「ガウゥゥゥ!!」
冷獣が雁斗に飛び掛かる。
「ガアァァァ!」
冷獣が斬りつけられて倒れこむ。
「何をしてる!さっさと、とどめをさせ!」
「……親父!? ……俺……俺は!?」
雁斗は放心していた。
「……そこで見てろ。いいな?」
「ガアァァァ!!」
冷獣は血を噴いて倒れた。
「……終わったか」
「風太!」
風太の母親が駆けつける。
「母さん……今度は……僕が雁斗を……」
「うん! そうね……、良く頑張ったね!」
母親はそう言いながら涙を流す。
「傷口は私が防げます。あとは、すぐに病院に!」
雁斗の父親がリストバンドを風太に当てると、風太の傷が塞がっていく。
「これは一体!?」
風太の母親が驚く。
「うっ……」
風太は苦しみだす。
「急ぎましょう!!」
雁斗たちは急いで病院に向かった。
※ ※ ※
一ヶ月後……。
「嘘だろ!? ……風太、冗談だろ!?」
「ごめんよ。本当だよ……僕は二度と歩けない」
「……すまねえ……俺があのとき、ちゃんと戦えてれば!」
雁斗は責任を感じて泣いた。
「泣かないでよ。雁斗と会えなければ、僕はとっくに死んでいたんだ。歩けなくなったけど、生きることは出来るんだよ? 雁斗に出会ったから僕は、手術の日を迎えられて……こうして命を灯していられる」
「けど! 俺が守れてれば……お前は、足を使って立つことが出来たんだ!」
「雁斗と会えたから……僕は友達と出逢えたんだ」
風太は、雁斗を見て言いきった。
「……あり……がとう……な」
雁斗が涙を拭いて言った。
「麻生風太君。問診です」
「分かりました」
「んじゃ……俺、出るわな」
「待って!」
「うん?」
「……またね。雁斗」
「おう」
雁斗は病室を出た。
「しっかり向き合ったんだな?」
「俺と会えたから、友達と逢えたって言ってた」
「そうか」
雁斗の父親は安堵した。
「雁斗君!」
風太の母親がやって来た。
「何ですか?」
「これを渡したくて」
風太の母親は黒いベストを差し出す。
「これは?」
「あの子に買ってあげたんだけど、雁斗君にあげてって言われちゃってね」
「せっかく買ってくれたのに、なんでだ?」
「さあ? ただ、手術のあとから雁斗君の話をよくするのよ。もしかしたら……自分の代わりに、これを着て歩いてほしいのかも」
「俺なんかが貰っても良いのか?」
「風太は雁斗君に着てほしいのよ。だから、私からもお願い、貰ってください!」
風太の母親は涙を浮かべながら言った。
「……大事にします。絶対に!」
雁斗はベストを受け取った。
(もう俺は負けられない! 負けたくない!)
※ ※ ※
「あの時、誓ったんだ! 風太に!」
雁斗が立ち上がる。
「またな……ってな!」
「ガウゥゥゥ!」
「だから負けるわけには!」
雁斗が構える。
「死ぬわけには……いかねーんだ!!」
雁斗が走り出す。
「ガウゥゥゥ!」
冷獣は翼で風を巻き起こす。
「抹殺斬!」
雁斗の刃が冷獣を一刀両断した。
「うっ!!」
雁斗の身体に激痛が走る。
「にゃー?」
(戻れたんだな……良かったぜ)
雁斗は気を失って倒れた。




