明かされる真実
「あ、お兄ちゃん!」
「よう、螺雨。親父は?」
「おじさんなら地下に居るよ」
「そうか。掃き掃除、ありがとな」
雁斗は螺雨の頭をポンと触れると地下に行く。
※ ※ ※
「……お前な……帰るなら連絡を寄越せと言ってるだろう」
「メンドーだったんだ。どうせ居るだろうと思っていたしな」
「それで? お前の事だから、何か用があるんだろう」
「まーな」
雁斗は、飾られている水晶玉に触る。
「親父……この水晶玉は、どうやって手に入れたんだ」
「なんだ? 珍しく真面目に」
「茶化すな」
「貰った。それがどうかしたか?」
「誰に貰ったんだ」
「誰でもいいじゃないか」
「茶化すなって」
「……研究者、だ」
「んだよ、その歯切れの悪さは」
「お前、何が言いたいんだ?」
「この水晶玉は、元々は液体だった。そして加工されて渡された」
「お前!?」
「作ったのは、その研究者……そんでもって……冷獣を生み出したのも、その研究者、とか」
「何を根拠に!?」
「……コイツを知ってるか?」
雁斗は迅に、液体の入った小瓶を投げる。
「これは!?」
「知ってるみたいだな」
「これをどこで手に入れた!?」
「渡されたんだ。ラグナロクという男から」
「ラグナロク?」
「ああ。ラグナロクは、その液体で冷獣を生み出したと言ってた。ラグナロク自身も冷獣と近い力を得ていた」
「そのラグナロクという男は、どこにいる?」
「死んだ。自爆したよ、目の前でな」
「なんと!?」
「親父、その研究者の居場所を知ってるか?」
「知らんな」
「……じゃあ名前は?」
「知らない」
「ざけんなよ。親父は、名前も知らない奴から貰った水晶玉を、危険も承知で俺達に使ってたのか」
「雁斗、お前……」
「その液体から水晶玉が出来てるとしたら……抹殺師も冷獣も……同じってことになる」
「雁斗……」
「教えてくれ。俺の予想が合ってんのか!」
「……合ってる。抹殺師と冷獣の源は同じだ」
「研究者の名前、本当に知らないのか」
「……黙っていてもしょうがない。知ってる、というよりも、もっと深い関係だ」
「研究者の事を教えてくれ!」
「彼の名は、レクイエム。俺とは親友の間柄だ。この液体は、彼のとある実験の過程で偶発的に出来た」
「どうして冷獣が生まれたんだ?」
「ある日、彼の飼い犬が誤って液体を飲んでしまったんだ。そして、みるみるうちに変貌した……それが冷獣の祖だ」
「祖って!? つまり親父達は、その冷獣に逃げられた?」
「何もできなかった。それどころか、俺は怪我を負った」
「どうしたんだよ?」
「解らず仕舞いの毒に感染した。怪我の深さも相まって俺は時間の問題だった。だが、それを彼が治した」
「治癒術……いや、魔癒術のほうか」
「どちらも違う。俺が、その液体を飲んで解毒したんだ。彼の指示でな」
「の、飲んだ……って!?」
雁斗の血の気が引いていく。
「どうした?」
「ラグナロクの野郎は、抹殺師じゃなかった。なのに、あの人間離れした力は!? ……親父は、なんともないのか!?」
「お陰さんでな」
「頼む! レクイエムって奴の居場所を教えてくれ!」
「すまないが、本当に今の居場所は知らない」
「そうか」
(液体を見て、抹殺師と冷獣の関係は推測できたが、ラグナロクが液体を飲んでいたとすりゃ、あの強さの説明がつく)
「雁斗?」
「祖は今、どうしてる?」
「分からない。レクイエムが液体を水晶玉にして俺の元に持ってきたのが十五年前……すぐに俺は、彼の実験により抹殺師になったが、行方知らずだ」
「レクイエムと最後に会ったのは?」
「……十年前だ」
「十年前!?」
「……家に来たんだ……お前の顔を見にな」
「俺、会ってるのか!?」
「会っている。二歳じゃ覚えてなんかないだろ」
「……レクイエムは……お袋を知ってるのか?」
「知っている。父さんと母さんを繋いだのも、レクイエムだ」
「……お袋が事故で死んだ事も知っているのか?」
「知っている」
「……そうか」
雁斗は、大きく息を吐いた。
「もう帰るのか?」
「うん?」
「もう少し居たらどうだ。詳しく、ラグナロクの事を聞きたい」
「いいけど?」
雁斗と迅が地下を上がった。




