修学旅行
「よし。チェック終わり!」
多はバッグを閉じた。
「おまっ!? またチェックしてたのかよ」
「えへへ。どうも不安でね。そう言う雁斗さんはチェックしたの?」
「バッグに入れる前に、入れるとき、入れた後に。しっかりチェックしたぞ」
「流石は雁斗さん。抜かりないね」
「電話だね」
「座ってろ、俺が出る」
雁斗が電話に出た。
「雁斗か?」
「……誰だ?」
「凖だ。夜分にすまない」
「凖!」
「明日は修学旅行だったか。楽しめ」
「は!? 用件はそれだけか?」
「そーだ。冷獣の事なんか忘れて、子供らしく羽を伸ばしてこい」
「おう、のばしてくらあ!」
「……羅阿なんを振」
雁斗が電話を切った。
「凖さん、何だって?」
「羽を伸ばせだとよ」
「それだけ?」
「……ああ」
雁斗は甲多から目を反らした。
(怪しい)
甲多が疑いの視線を向ける。
「……どうした? 甲多」
風呂上がりの斬牙が訊く。
「雁斗さんが怪しいんだ」
「はあ?」
「何でもねえって! 凖から電話があっただけだ」
「凖からか。大人しく自宅静養してればいいが」
「無茶は出来ねえだろ……したくても。利き腕が無いんじゃ日常生活だって困難な筈だ」
「義手は着けないんだっけ?」
「作るらしいが、出来るまでに時間が掛かるうえ、リハビリも簡単じゃない。俺達の想像なんか遥かに超える苦労が待ってる」
「僕達は凖さんに感謝しないとね!」
「おう。凖の望み通り、存分に羽を伸ばすぜ」
「だな……。ところで雁斗。ラー嬢の事なんだが」
「羅阿奈がどうかしたのか?」
「転入してきて一ヶ月。男女問わずの人気者。そして、ラブレターの数も日に日に増えている」
「だから何だよ」
「この修学旅行で告白しようとしているのが何人かいるみたいなんだが……」
「別に羅阿奈が誰に告られようが知ったこっちゃねえ」
「本当に?」
甲多が顔を覗かせる。
「なんだよ!? その疑いの目は!」
「べーつーにー」
甲多は風呂場に行った。
「甲多は鋭い。お前がラー嬢と男子が話していると、目くじらを立てていると言っていたしな」
「知るか!」
雁斗は自室に行った。
※ ※ ※
翌日。
「何よ?」
「何でお前が、美加ん家から出てくるんだ!?」
「美加ちゃんから泊まりに誘われたのよ。なんか文句あんの?」
「ねえよ。ただ驚いたんだ」
「おはよう。美加、羅阿奈さん」
「おはよう、甲多君」
「皆、おはよ! さあ行こ!」
五人が学校に向かった。
※ ※ ※
「今日は良い晴れだね」
「そうだね。この天気なら問題なく出発しただろう」
迅は螺雨の淹れたコーヒーを飲む。
「どう? おじさん」
「旨いよ。いつも美味しく淹れてくれて嬉しいよ」
「ボクも喜んでもらえて嬉しいです」
螺雨が微笑む。
「おじさん……幸せだよー」
迅はコーヒーの香りを楽しんでいた。




