伝言
「はあ! ……はあ! ……このぐらいで勘弁してやりゃあ!」
「……がはっ……」
雁斗に殴られ、仮面の者の顔は酷く腫れ上がっていた。
「雁斗。流石に少々やりすぎじゃないか?」
「けっ! 甘えよ、斬牙。散々、好き勝手に暴れまわって迷惑かけやがったんだ。こんぐれー当然だぜ」
雁斗は仮面の者の胸ぐらを掴むと、頭突きをかました。
「雁斗さん、もうそのくらいにしないと!?」
「わーたよ」
雁斗は手を離した。
「青髪の。奴を治してやるんだ。話を聞かなければ」
「そうね」
羅阿奈が仮面の者の怪我を治す。
「……話せ。何者だかを……目的を。拒否権など無い」
ダガーが言う。
「誰が言うものか。ワタクシが負けたと、いつ言った?」
「なんだと」
「……ワタクシに……神に、負けなどない。あるのは勝利か……死だ!」
仮面の者の身体が膨れ上がっていく。
「自爆する気か!」
「神に近すぎたらどうなるかを身をもって味わえ゛」
「仕方あるまい! 甲多、我に風を頼む。空中で奴を爆発させる!」
「でも、そんなことしたら兄さんが!」
「案ずるな。我は死なん」
「……絶対だよ!」
甲多が風をダガーに起こした。
「ただでは死なさん。色々と吐いてもらう!」
「キッ!?」
ダガーの攻撃を受けて、仮面の者が上空に吹っ飛ぶ。
「名を名乗れ」
「……誰が言うか……」
「そもそも、抹殺師ではないと言っていたが、では、その力は何だ?」
「……知る必要はない……」
「下等と見下しておきながら、情報を与える勇気もないか。それでも神なのか?」
「……神が下等に与えるものなどない……」
「どうせ下等な我らは、その情報を活かせまい。言ったところで困ることはない筈だ」
「……下等は死ぬのだ……」
「ならば尚更、困らんだろう」
「……下等が生意気に……」
仮面の者の身体が更に膨れ上がる。
「ダガー。奴はゲロったか?」
「雁斗。何故来た」
「奴に嘗められっぱなしってのは気にくわねえ!」
「なるほどな。残念だが何もない」
「だったら……吐かせるまで!」
「望み通り吐いてやる゛。下等が」
「なっ!?」
殴る寸前で雁斗が止まった。
「ワタクシの名は、ラグナロク。人間を超えた存在。神に到達し者」
「名前はいい! お前の目的は何だってんだ!」
「言った筈だ……猿は人間に進化した。ならば人間は何に進化するのか見てみたいと」
「その力はどうやって手に入れた。人間の領域を超えてるが、抹殺師じゃねえんだろ?」
「フフフ。下等よ、冷獣はどうして生まれるか知っているか?」
「……どういう意味だ? ……」
「ワタクシも冷獣と同じ力を得た、と言ったら?」
「知ってんのか!? 冷獣が生まれる訳を」
「フフフ。コレだ」
ラグナロクが、小瓶に入った液体を見せる。
「何だよ……それ」
「コレが生物を進化させる」
「お前が造ったのか!」
「貰ったのだよ。ワタクシは利用したまで」
「誰から貰ったんだ!」
「それは……うぐっ……あああ!!」
ラグナロクが苦しみだす。
「退くのだ。これ以上は無理だろう。我等も巻き込まれる」
「クッソ! 肝心な事が分からねえままかよ!」
「いくぞ」
ダガーが降りていく。
「うぐぐ……へぁ……がはっ!? ……ワタ……クシは!! 神だ!! ニンゲンこえた……な゛の゛に゛」
「何度も言わせんな! お前は神なんかじゃねえ! 力に溺れた人間だ!!」
「……人間……。そうか……」
「ようやく理解しやがって!」
「クレテヤル。ガアアアア!! ……ヤツはレ……クイ!?」
ラグナロクの身体が木っ端微塵に破裂した。
「こんなケリの着けかた……ざっけんなあああ!!」
雁斗は、ラグナロクが渡した小瓶を握り締め、ラグナロクの血を浴びながら叫んだ。




