援軍
「いくよ、斬牙さん!」
「ああ!」
甲多が風を巻き起こし、その風に斬牙の火が纏う。
そして、九体の冷獣を取り囲んだ。
「「ガアアアア!!」」
九体の冷獣が一斉に光線を放つ。
「うぅぅー!!」
「伏せぎれるのか!?」
風の外に居る二人に衝撃が伝わる。
「「ガアアアア!!」」
光線の威力が上がる。
「甲多、もう一だ!」
「うん!」
二人は再び、火の風を放った。
「ガウウウウ」
火の風の威力が増して光線を抑えていく。
「「ガウウウウ!?」」
九体の冷獣を火の風が追い込む。
「攻撃が効いているのか」
「だといいけど」
「「ガウウウウ!!」」
冷獣達の断末魔が響く。
「やっ……たの? 僕達」
火の風が消えた場所に鶏が居た。
「やったのさ。助かったよ、甲多」
「斬牙さんが僕を信じてくれたからだよ!」
二人は鶏を飼育小屋へ戻しに向かった。
※ ※ ※
「「ガウウウウ!!」」
「……な……何が起きた……んだ!?」
雁斗が目を丸くする。
「急ぐぞ」
「待てって! ダガー。お前、何したんだ!?」
「歩きながら話す。我のペースで歩け」
雁斗とダガーが歩き出す。
「だいたい。お前、抹殺器を使ってねえ!」
「使っていた」
「嘘つくな。素手で倒しただろが!」
「そうだ。我の抹殺器は己の身体そのものだ」
「……んな話、聞いたことねえよ!」
「そうだったか」
「そうだったかじゃねえ! 納得できねえよ!」
「我は、光の抹殺師だ。抹殺器を持たぬ代わりに、己の身体を強化し、冷獣を滅する効果を得る」
「光の……って……お前も属性持ちかよぉぉ!!」
雁斗が頭をかきむしる。
「お前も、か。甲多は風だが、白髪の少年も属性持ちか?」
「火だよ」
「そうか。自分が持ってないモノを他者は持っている。羨ましいのだな」
「そんなんじゃねえよ! ただ、稀少な存在が周りに居るから、自分が劣ってるんじゃないかって思っちまう」
「若さだな。若いうちは、物思いにふける時間がある。だが年を取れば、物思いにふける時間が自然と無くなっていく」
「急になんだ? まるで自分が年食ってるみたいに」
「もう三十路を過ぎた。甲多と話しているとき、自分にも、同じ歳の子が居ても不思議ではないと思った」
「……ったく! 三十代なんてこれからじゃねえか。今から死ぬこと考えてたら、冷獣なんて倒せねえよ」
「ふっ……。一杯食わされたようだ」
「食わしちまったようだ」
そうこう話していると、都心部にたどり着いた。
「こりゃ……」
雁斗が愕然とする。
「人の気配がない。建物の中に避難しているのか」
「気味悪ぃ……。冷獣が道の其処彼処に居やがるぜ」
冷獣が歩道や車道、ビルや信号機の上にまで居た。
「気配の区別がつかん。視界に入った奴から倒すしかないようだ」
「ざけんなって! たった二人で全てを倒せってか」
「泣き言を言っても始まらん。いくぞ」
ダガーが動き出す。
(また、あの動き!)
「フン!」
「ガウウウウ!!」
ダガーの攻撃を受けて冷獣が倒される。
「ガウウウウ!!」
(目じゃ追えねえ!?)
「ガウウウウ!!」
連続で冷獣が倒される。
「雁斗。攻撃をしない気か?」
「す……するっての!」
(ダガーの動きが見えなかった! 攻撃を終えた頃には次の冷獣を倒してた!)
「ガアアアア!!」
「後ろ!?」
雁斗は後ろの冷獣に気付けなかった。
「ガウウウウ!!」
雁斗に攻撃する前に冷獣が倒された。
「どうなって!?」
雁斗はダガーのほうを見るが、ダガーは動いていない。
「……後ろを取られるなんて……情けない」
「誰だ!?」
雁斗が声の方を向く。
「さーね」
コートを羽織り、顔を隠して声の主が雁斗に近付く。
「何者だ」
「警戒しないで……敵じゃない」
「根拠はあるのか」
ダガーが構える。
「ま、いいか。顔を見せれば信じてくれるし」
声の主がコートの帽子をとる。
「知らん顔だ。そっちは?」
ダガーは雁斗に訊く。
「俺も知らねえよ。お前だれ……」
パチンッ! と音を立て、雁斗の頬は赤くなる。
「サイッテー!! 覚えてないなんて!!」
「いきなり平手打ちった何様だ!? 大体、青髪でショートの女なんて……! 青髪……ショート……女……」
雁斗の顔が強ばっていく。
「敵か味方か早くしろ。囲まれている」
「ガアアアア!!」
冷獣が光線を放つ。
「させん!」
ダガーが掌から光線を放った。
「ガウウウウ!!」
ダガーの攻撃を受けて冷獣が倒されるが、次々と冷獣が襲ってきた。
「ガアアアア!!」
(間に合わん!)
ダガーが移動する前に、光線が雁斗に放たれる。
「ガウウウウ!!」
「セーフ!」
コートを羽織った者が、ダガーの前に現れる。
「彼女の仲間か?」
「察しがいい」
コートの帽子を取る。
「ウチは凖。これでも抹殺師な! そんで彼女は、羅阿奈な!」
少年が陽気に紹介を終える。
「凖! なんで言っちゃうの!?」
羅阿奈が文句を言う。
「羅阿奈……らあな……そうだあああ!!」
雁斗が大声を出した。
「うっさいわね! よーやく思い出したの?」
「思い出した。叩かれたからな」
雁斗が羅阿奈に叩かれた左頬をさすりながら言った。




