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抹殺師  作者: 碧衣玄
32/80

死守

「「ガアアアア!!」」


 十体の冷獣が力を溜めていく。


「おいおい!? 十体同時に撃ってくる気か!? 冗談じゃない!!」


 斬牙が放火斬を使う。


「ガアアアア!!」


「くっ!」


 冷獣が地響きを起こして、斬牙が攻撃を防がれる。


「迂闊に近付けないんじゃ、どうしようもねえ!」


「はあ!」


 甲多が風を放つ。


「ガウウウウ」


「……今の僕じゃ敵わない……」


「諦めんな! 色々と不利だが、勝てねえ相手じゃねえ。俺達が守んなきゃ学校は終わりだ」


「でも!」


「甲多。お前の風で俺を飛ばせ。抹殺斬で斬る」


「だけど地響きが!?」


「風で浮いてりゃ問題ねえよ」


「……分かったよ!」


 甲多は雁斗に向かって風を放った。


「うおおお!」


 甲多の風を受けて雁斗が冷獣に急接近する。


「ガアアアア!!」


(無意味だぜ)


「ガウウウウ!?」


「一撃じゃ駄目なのは計算内だ」


 雁斗が冷獣に乗ると、そのまま抹殺斬を放った。


「ガウウウウ!!」


 冷獣は苦しみだす。


「この調子なら……」


「ガアアアア!!!!」


 苦しんでいた冷獣が、眩い光を放ちながら飛翔する。


「雁斗!?」


「雁斗さん!?」


「翼付き……だと……」


「ガアアアア!!」


 翼の冷獣が雁斗を乗せたまま飛び立つ。


「降りろ。雁斗!」


「斬牙の奴、何か言ってるが聞こえねえ。これだけ高く、遠くに飛ばれちゃ、降りるに降りれねえ!」


 雁斗が学校から遠ざかっていく。


「……どうしよう!? ……斬牙さん」


「さあな。正直、今は自分の方で手一杯さ」


「斬牙さん。僕に案が有るんだけど……上手くいくかは分からないけど……」


「聞かせてくれ。一つでも可能性が有るのなら、それに賭けてみよう」


 斬牙は耳を貸した。


※ ※ ※


「お前、いつまで飛んでる気だ!」


「ガウウウウ」


「えっ」


 雁斗が暴れるため、翼の冷獣が速度を上げた。


「冗談じゃねえー! 止まりやがれー!」


 冷獣にしがみつきながら雁斗が言い聞かすが、冷獣は聞く耳を持たない。


「ぶつかるううう!?」


 冷獣がビルの間を抜けて進んでいく。


「ガウウウウ!!」


「いってー!? いきなり消えやがってえ」


 落下した雁斗が痛がりながらも起き上がる。


「助けてやったんだ。有り難く思え」


「ダガーじゃねえか!?」


「だったら何だ。我は急ぐ」


 ダガーが歩き出す。


「待ってくれ! こちとら訊きてえ事が!」


「ガアアアア」


「現れたか!」


「……こんなときに冷獣かよ!」


「こんなときに?」


「学校に冷獣が現れてヤバイんだ。残り九体を相手に甲多と斬牙が戦ってんだ!」


「何……甲多だと!?」


「ガアアアア!!」


「確か、雁斗という名だったな。都心部に大量の冷獣の気配が在る。学校に現れた冷獣も流れに関係しているかもしれん」


「都心部に?」


 雁斗は疑問を持つ。


「全国の冷獣の気配が都心部に集まっている。何かが起きている。この国で」


「確かめに行くのか?」


「無論だ。全ての冷獣を滅するのが、抹殺師の役目だ」


「んじゃ……俺も行く。冷獣在るところに抹殺師在りってな!」


「ガアアアア!!」


 冷獣が更に現れた。


「片付ける」


「おう!」


 二体の冷獣を前に、雁斗とダガーが構えた。

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