死守
「「ガアアアア!!」」
十体の冷獣が力を溜めていく。
「おいおい!? 十体同時に撃ってくる気か!? 冗談じゃない!!」
斬牙が放火斬を使う。
「ガアアアア!!」
「くっ!」
冷獣が地響きを起こして、斬牙が攻撃を防がれる。
「迂闊に近付けないんじゃ、どうしようもねえ!」
「はあ!」
甲多が風を放つ。
「ガウウウウ」
「……今の僕じゃ敵わない……」
「諦めんな! 色々と不利だが、勝てねえ相手じゃねえ。俺達が守んなきゃ学校は終わりだ」
「でも!」
「甲多。お前の風で俺を飛ばせ。抹殺斬で斬る」
「だけど地響きが!?」
「風で浮いてりゃ問題ねえよ」
「……分かったよ!」
甲多は雁斗に向かって風を放った。
「うおおお!」
甲多の風を受けて雁斗が冷獣に急接近する。
「ガアアアア!!」
(無意味だぜ)
「ガウウウウ!?」
「一撃じゃ駄目なのは計算内だ」
雁斗が冷獣に乗ると、そのまま抹殺斬を放った。
「ガウウウウ!!」
冷獣は苦しみだす。
「この調子なら……」
「ガアアアア!!!!」
苦しんでいた冷獣が、眩い光を放ちながら飛翔する。
「雁斗!?」
「雁斗さん!?」
「翼付き……だと……」
「ガアアアア!!」
翼の冷獣が雁斗を乗せたまま飛び立つ。
「降りろ。雁斗!」
「斬牙の奴、何か言ってるが聞こえねえ。これだけ高く、遠くに飛ばれちゃ、降りるに降りれねえ!」
雁斗が学校から遠ざかっていく。
「……どうしよう!? ……斬牙さん」
「さあな。正直、今は自分の方で手一杯さ」
「斬牙さん。僕に案が有るんだけど……上手くいくかは分からないけど……」
「聞かせてくれ。一つでも可能性が有るのなら、それに賭けてみよう」
斬牙は耳を貸した。
※ ※ ※
「お前、いつまで飛んでる気だ!」
「ガウウウウ」
「えっ」
雁斗が暴れるため、翼の冷獣が速度を上げた。
「冗談じゃねえー! 止まりやがれー!」
冷獣にしがみつきながら雁斗が言い聞かすが、冷獣は聞く耳を持たない。
「ぶつかるううう!?」
冷獣がビルの間を抜けて進んでいく。
「ガウウウウ!!」
「いってー!? いきなり消えやがってえ」
落下した雁斗が痛がりながらも起き上がる。
「助けてやったんだ。有り難く思え」
「ダガーじゃねえか!?」
「だったら何だ。我は急ぐ」
ダガーが歩き出す。
「待ってくれ! こちとら訊きてえ事が!」
「ガアアアア」
「現れたか!」
「……こんなときに冷獣かよ!」
「こんなときに?」
「学校に冷獣が現れてヤバイんだ。残り九体を相手に甲多と斬牙が戦ってんだ!」
「何……甲多だと!?」
「ガアアアア!!」
「確か、雁斗という名だったな。都心部に大量の冷獣の気配が在る。学校に現れた冷獣も流れに関係しているかもしれん」
「都心部に?」
雁斗は疑問を持つ。
「全国の冷獣の気配が都心部に集まっている。何かが起きている。この国で」
「確かめに行くのか?」
「無論だ。全ての冷獣を滅するのが、抹殺師の役目だ」
「んじゃ……俺も行く。冷獣在るところに抹殺師在りってな!」
「ガアアアア!!」
冷獣が更に現れた。
「片付ける」
「おう!」
二体の冷獣を前に、雁斗とダガーが構えた。




