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抹殺師  作者: 碧衣玄
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迫り来る脅威

「いきなり現れたのが悪いんだ!」


 男は刃物を引き抜くと走り去る。


「がはっ……」


 美加の腹部から血が溢れている。


(こう……た)


「美加!」


 一足遅く着いた雁斗が美加に治癒術を施す。


「あたし……刺してきた顔、見たよ?」


「見たのか!? 相手はフルフェイスのヘルメットしてたろ」


「してなかったよ」


 美加が首を横に振る。


「あの場にメットは無かった。通り魔なら、持つより被る筈だ。どうなってやがる!」


「冷静になれ。いくら夜とはいえ、フルフェイスのヘルメットを被った者が歩き回るか? 普通ならバイクに乗っているものだな」


「何が言いてえんだよ?」


「我を刺した奴は彼女を刺して去った。しかし、一連の犯行は単独ではないということだ」


「おいおい……まさか、バイクに乗ってる共犯がいるってことかよ!?」


「奴は慌てていた筈だ。一定の区間での犯行を決めていれば、落ち合う場所を決めていても不思議ではない」


「あくまでダガーを襲った場所だけの犯行予定だったとすりゃ、メット被る必要はねえって訳か」


「気配が遠ざかっていく……やはりバイクに乗る共犯がいるようだ」


「バイクに追い付くにはバイクだがよ……ダガー、免許持ってるか?」


「我は乗り物の類いが嫌いでな。免許など縁遠い」


「……持ってないでいいっての」


 雁斗は甲多を呼びにいく。


「あなたは?」


「偶然、居合わせただけだ」


(彼女は怪我を負っていた……あのときのか!?)


「美加!!」


 甲多が慌てて外に出た。


「甲多」


「怪我はない!? 怖かったでしょ!?」


「大丈夫だよ。雁斗君に治してもらったからね」


「ありがとう雁斗さん! もし雁斗さんが間に合わなかったら美加は……」


「礼なんか要らねえよ」


「あまり話をしているわけにもいかない。離されている」


「そうだな。甲多、俺を風で飛ばしてくれ」


「風で?」


「それなら追い付ける筈だ」


「分かったよ。やってみる!」


 甲多はクナイを召喚し、おもいっきり風を起こした。


「ううぉおお!?」


 甲多の風に乗って雁斗は飛んでいった。


「風の抹殺師か」


「あっ! あのとき助けてくれた!」


 甲多がダガーに気づいた。


「助けるつもりはなかった。そこに冷獣が居たからだ」


「それでも僕にとっては命の恩人です。助けてくれてありがとうございました!」


 甲多は礼をした。


※ ※ ※


「ヤーベぇっ! ……着地のこと、考えてなかった!」


 雁斗が空中で体勢を変えながら速度を殺そうとする。


(……うまくいかねえ……ちっ!)


 雁斗は覚悟を決めて、着地体勢に入る。


(くっ!?)


 身体に大きな影響なく、雁斗は着地した。


「……死ぬかと思った~!」


 安堵していると、前方から眩しい光が照らされる。


「あれか?」


 雁斗が半信半疑でいると、車が目の前で停まった。


「げっ……さっきの子供だ!?」


「お前は俺が治した奴!」


「なんだよ……顔、見られてたのか」


 もう一の男が言う。


「怪我してたからな。すまん」


「仕方ないな……始末するか」


 そう言うと男はスタンガンを取り出す。


「実行犯は刃物、共犯はスタンガンか。やれやれ……しょうがねえ奴等だな」


 雁斗は呆れる。


「今度こそ仕留めてみせる」


「しつこいね。まあ、相手になるけど」


「生意気な餓鬼だ!」


 スタンガンを持った男が迫る。


(隙だらけだ!)


 雁斗は男がスタンガンを突き出した瞬間、その右腕を掴み、流れるように背負い投げをした。


「こ……の!?」


「こんな子供が背負い投げするなんて思わなかったってか?」


(今だ!)


(バレバレ)


 背後からの突きをひょいとかわすと、相手の顔面に雁斗の裏拳が決まった。


「ぐっおおお!!」


「ダガーを襲ったときのようにフルフェイスのヘルメットを被ってたほうが良かったんじゃね?」


(……っと……念のため!)


 雁斗は相手の腕を蹴りあげ、刃物を落とさすと、それを足で踏み押さえる。


「次から次と~!」


「まさか、ダガーを刺したやつとは別に刃物を隠し持ってたとは……。んでよ、美加を刺した刃物とは別に持ってたりするのか?」


「残念ながら、ダガーってのを刺した分と小娘を刺して、お前に踏まれている分しか持ち合わせてない」


(俺は、な)


「!!」


 雁斗の身体を電撃が走る。


「ふふふ! 切り札は最後までとっておくものさ」


(……コイツ……スタンガンだけじゃなかったのか!?)


 雁斗の視界にヘッドライトに照らされて眩しく光るやいばがはいる。


「まさか共犯おれが実行するとはな!」


 雁斗目掛けて刃物が降り下ろされる。が、刃物は突き刺さる前に止まった。


「がはああ!!!?」


 共犯の腹部を剣が貫いている。


「アニキ!!」


 実行犯は膝から崩れ落ちた。


(この気配は……)


 薄れゆく意識の中、雁斗は気付いた。


(斬牙)


 雁斗が気を失った。


「傷なら治してやる。その代わり、二人揃って自首するんだ。今夜の事は無かった事にしてやるが、これ迄の犯行の事は吐けよ? 幸い通り魔は人を刺しても殺してもないんだからな」


 斬牙は治癒術で共犯の傷を治すと刃物を溶かした。


「何なんだ……お前!?」


 目の前で刃物を溶かす少年に実行犯が驚く。


「教えない。それが今夜の事を無かった事にする条件だ」


「分かった。行こう……アニキ」


「しゃあねえ」


 車が遠ざかっていく。


「世話かけやがる」


 気を失っている雁斗を見て、斬牙はほっとしていた。

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