見上げる者は見下ろす者
「その憎たらしい紫頭を踏み潰してやるゾ!!」
ロボットは、足裏から空気を出して向かってくる。
「あんなデカブツでも、浮いてりゃあ砂漠もヘッチャラってか」
「どうする雁斗。相手は十五メートルもある。砂漠だろうと沼だろうと、なんともないロボットに乗っているぞ」
「簡単な話だ。ロボットだって機械だろ? 水は天敵の筈だ。だから、あの貯水槽の中に落とすんだ」
「お前聞いてなかったのか。相手は浮けるんだぞ!?」
「だから斬牙。お前の放火斬でロボットの熱を上げるんだ」
「どういう意味だ」
「機械は熱にも弱い。温度が上がればオーバーヒートして止まるんじゃないか?」
「……まさかとは思うが、貯水槽近くで浮いているロボットを止めて落とそうってわけなのか?」
「そうだけど」
「さすがにキツいぞ。机上の空論じゃないが、それぐらい無茶な作戦だ」
「じゃあ……大人しくやられてやるのか?」
「それもごめんだよ」
斬牙は双剣に炎を纏わす。
「多分、奴は冷静さを欠いてる。俺を殺すのに躍起になってやがるからな。誘い出すぜ」
雁斗がロボットに近づく。
「どうした? カラクリ野郎。俺を殺したくてしょうがないんだろ?」
「わざわざ殺されに来たか!!」
ロボットの指先が開く。
「貴様の考えなんかお見通しなんだゾ!!」
指先からミサイルが放たれた。
「しまっ……!!」
雁斗は身を屈むがミサイルは別の場所に落ちた。
「……貯水槽……が!!」
斬牙はミサイルによって沼も貯水槽も吹き飛ばされたことに愕然とする。
「紫頭。フッフッフ……これでボクは水に落ちることも、沼に沈むこともなくなったのだ!!」
「……チキショー!!」
「いい気味だゾ、抹殺師!!」
「……暑いー!!」
雁斗が叫ぶ。
「暑い……だと!? なんだ、ついに気が狂ったか?」
「うるせえ!! お前、ロボットの中は涼しいのか!!」
「だったら? 快適だとしたら?」
「決まってんだろ!! そっから引きずり出す!!」
雁斗はロボットの片足に近づく。
「抹殺斬!!」
「無駄だ。いくら抹殺師の攻撃といえどキズなど付かないゾ!!」
ロボットに摘ままれて、雁斗がロボットが見上げる程の高さまで挙げられる。
「離しやがれ!!」
「いいゾ? この高さから落下しても知ったことじゃないからな!!」
ロボットの指が緩まり、雁斗が落ちていく。
「クソッタレー!!」
雁斗が空中で体勢を変えながら、ロボットの口部分に着地する。
「なんだと!!」
「さっきから気になってたんだ……なんで口元だけが鏡みたいになってんだってな!!」
「そ……そ……んな!?」
鏡の向こうに、怯えた様子の子供が居た。
「マジかよ……年下か!?」
流石の雁斗も驚きを隠せないでいた。




