崩れる気力
「貯水槽は、ボクにとって命綱だったんだゾー!!」
建物を囲んでいた四つの球体が動き出す。
「動いた!?」
雁斗は臨戦態勢に入る。
「水の恨みは恐ろしいんだゾ!」
「なっ!!」
雁斗の横を一筋の光が通り過ぎる。
「雁斗! 平気かよ!?」
「平気だから生きてんだろ。けど……当たったら間違いなく只じゃ済まねえ。気いつけろ!」
「……次は……当てる!!」
(今だ!)
「あれ。足が動かねえ」
自分が、沼のようなので身動きが取れないことに雁斗は気付く。
「貯水槽から噴き出した水を砂が吸ったのか!」
「雁斗!」
斬牙が動こうとするが、足を取られて動けない。
「ボクから水を捕ったバチが当たったんだ!!」
球体からビームが放たれる。
「こうなれば!」
斬牙は長剣を沼に刺しつつ、ビームの軌道を短剣で変えた。
「悪足掻きを!!」
(上手くいってくれよ!)
沼が一気に爆発した。
「よし!」
斬牙は空中でガッツポーズをする。
「一体なにをしたんだ!?」
雁斗が訊く。
「沼ならガスが発生してるかもと思ってな。ちょいと炎を加えてみたんだ」
「へー。まあなんとかなるんなら何でもいいや」
二人は、沼に落ちるたびに爆発で宙を舞う。
「調子に乗るな!」
四つの球体から、ビームが乱射される。
「その言葉、そのまま返してやる!」
物に着地した斬牙は放、火斬で球体を一つ破壊する。
「隙あり!」
斬牙の背後に球体が迫る。
「抹殺斬!」
雁斗の斬撃が、斬牙の背後の球体を破壊した。
「助かった」
「ボサッとしてんじゃねえよ。あと二つあるぜ?」
「分かってる」
放たれたビームは建物を直撃する。
「おいおい。その球体の精度からして失敗作じゃねえか?」
「馬鹿を。ボクの作った傑作が失敗作? 有り得ないんだよ!」
球体が上下に開くと、ミサイルを撃ってきた。
「俺の立ってる場所、わかんねえのか?」
ミサイルの当たる寸前で雁斗は避ける。
「な!!」
ミサイルは方向転換し、雁斗に向かってきた。
「追尾式かよ!」
雁斗は建物に入った。
「馬鹿野郎だな抹殺師。わざわざ中に入るとはな」
(やっぱり追ってきやがるか! しかも、どっかしらに当たれば自滅するかと思ったが、そう簡単な話じゃねえか)
ミサイルが雁斗を捉える。
(今だ)
雁斗はしゃがんでミサイルを避ける。
「……とりあえずは壁を突き抜けたか……」
雁斗が一目散に走り出す。
(すぐに追ってくるだろうが!)
(しゃがんで避けるまでだ)
追ってきたミサイルをしゃがんで避けると、再び走り出す。
※ ※ ※
「放火斬!」
残り二つの球体を斬牙は片付けた。
「はあ……はあ……」
「馬鹿だね。この砂漠の炎天下の中を走り回っちゃってさ。自殺行為だ」
「……うるさいぞ。原因をつくってるのは他ならぬお前だろうに!」
「好きに吠えろ。そろそろ紫頭が死んだかな? 感じるだろう……振動を」
「そう簡単にやられはしないさ」
建物の天井を突き破ってミサイルが出てきた。
「斬牙、頼む!」
「ああ」
ミサイルにしがみついていた雁斗が離れた瞬間を見計らって、斬牙は短剣を投げた。
「あ~あ。死ぬかと思ったあ!」
「ミサイルにしがみついて逃れていただと!!」
「避けるにも限界があるからよ。獲物が消えたらどうなるか試してみたら、案の定暴走しやがった」
「ボクの家を滅茶苦茶にした挙げ句、ボクの作品を壊しやがってぇぇ!!」
「こんなのが家か?」
雁斗が建物の屋根を足で小突く。
「貴様あああ!!」
別の位置から二足歩行の巨大ロボットが現れた。
「今度はロボかよ!? しつけえ奴だな、このカラクリ野郎!」
「抹殺師はやはりムカつく! だが紫頭にはムカつきを通り越して殺意さえ沸いてきた! 生かしては返さんゾ!!」
「勝手にしろ。カラクリ野郎」
雁斗はロボを見据える。




