抹殺師の力
「それにしても、こんなに可愛い猫なら誰か拾っててもおかしくないのに」
甲多が段ボールに入った猫を見ながら言う。
「動物を飼うのは生半可な気持ちじゃ駄目だ。それに野良には野良の生き方があるしな」
「……そうかもね。人間の主観では可哀想でも、動物にとっては余計なお世話かも」
甲多は猫に触る。
「ニャー」
「癒されるなあ」
「シャアアアアア!!」
「いたっ! ……いきなりどうしたの!?」
「野生の勘か?」
雁斗の目付きが変わる。
「どうしたの?」
「……甲多。悪いけど、猫を連れて離れてろ」
「え……う、うん」
雁斗から段ボールに入った猫を受け取り、甲多は後ろに下がる。
「ガウゥゥゥ!」
木の陰から冷獣が飛び出してきた。
「甘い!」
動きを予測していた雁斗が冷獣を蹴った。
「ガウゥゥゥ……」
「どうしたよ? もしかして相手がビビるとでも思ってたのか? ……俺は違うぜ」
雁斗は右手首に着けているリストバンドを外す。
「ガウゥゥゥ!」
冷獣が突っ込んでくる。
「雁斗さん! 危ない!」
甲多の声が届くよりも先に、冷獣が雁斗に襲い掛かっていた。
「ガウゥゥゥ!?」
「どうしたよ? その自慢の体で、俺を押し潰してみろよ?」
「ガアアアア!!」
冷獣が血飛沫をあげて倒れこんだ。
「雁斗さん、一体何したの?」
甲多は目の前の出来事に驚く。
「斬ったんだ……これでな」
雁斗はリストバンドを見せた。
「リストバンドで斬ったの!?」
「ちげーよ。こうしたんだ」
雁斗のリストバンドが、一瞬で武器に変わる。
「す……凄ーい!! ……でも変わった形だね?」
「まあな。トンファーに刃が付いてるって言えば分かりやすいか?」
「うん。……ねえ雁斗さん。抹殺師は今みたいに武器で冷獣を倒すの?」
「ああ。抹殺器って武器でよ、抹殺師によって種類は変わってるんだ」
「ほかには何があるの?」
「いろいろ有るぜ? それこそ弓とかな」
「へー。個性があって良いね!」
甲多は目を輝かせる。
「お!」
雁斗は、羽ばたいていく鳥を見届けた。
「あれが冷獣の正体!?」
「ようやく羽ばたけたんだ。さぞかし気持ちいいんだろうな」
雁斗はそう言うと、歩き出した。
「待ってよ、雁斗さん!」
歩き出してから数十分で目的の場所に着いた。
「ニャー」
猫は段ボールから出たあと、何回か雁斗と甲多の方を振り返りながら、仲間を見つけたのか走っていった。
「んじゃ次は甲多の番だな」
「……ねえ雁斗さん。良ければ僕ん家に来ない?」
「ん?」
雁斗は首を傾げる。
「助けてもらった御礼をしたいし、まだ雁斗さんと話したいし……迷惑かな?」
「俺は構わないけど、変わってるな……甲多は」
「どこが?」
「普通、化け物と戦ってる得体の知れない奴を家に連れていこうなんて思わないだろ?」
「得体の知れない奴じゃないよ。雁斗さんは命の恩人で、人知れず冷獣と戦っている抹殺師で、僕の友達だよ!」
甲多は向日葵の様な笑顔で言った。
(友達……か)
「んじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
雁斗は、どこか嬉しそうに言った。




