砂漠の迷宮
「何にも無え。よりによって何で砂漠なんだ」
「おい雁斗。迂闊に飛び込むな。何があるか分からんぞ」
「知るかよ。だいたい、どうやって砂漠までワープしたのかも解らねえんだ。俺達を乗せてきた物体は冷房が効いているわけじゃねえ。中にいれば蒸し焼きになっちまう。だったら少しでも可能性のある方を選ぶ……俺は」
「それなら日が落ちてからでも良い筈だ」
「待ってられっかよ。俺が暑いのが嫌いなの知ってるだろ?」
斬牙の言うことに耳を貸さずに雁斗は歩きだす。
「どうするの斬牙さん?」
「……仕方ない。甲多と美加は中で待機してくれ。どのみちその足じゃ満足に動けないだろう?」
「でも暑いんでしょ!? あたし堪えられないわよ」
「安心しな。ちゃんと有ったよ」
「それなら平気だけど」
「美加。甲多と留守番、頼んだ」
斬牙も砂漠に降り立つと、雁斗の元に駆け寄る。
「結局、追ってきたのかよ」
「砂漠での単独行動は危険だぞ」
「んなもん、砂漠に限ったことじゃねえよ」
しばらく砂漠を歩くが、何も見当たらない。
「……」
「雁斗!?」
雁斗は暑さのあまりに倒れこむ。
「……アッチーーー!!」
が、砂の熱さで飛び起きた。
「面白いように汗が絞れる」
「アホか~斬牙ぁぁ~。それだけ身体中の水分が持ってかれてるってことだぜぇぇ~」
雁斗も着ていた服を脱いで絞る。
「お前のほうが重症じゃないか!」
「言ったろ……暑いのは嫌いだってよ……」
「馬鹿か! さっきので懲りたろ!」
倒れた雁斗を斬牙が起こそうとする。
「ちからが……入らねえ!?」
「どうなっている!? ……このままじゃ」
「「!?」」
抵抗むなしく、二人は砂に飲み込まれた。
※ ※ ※
「……くっ! ……ってー!」
雁斗が意識を取り戻す。
「……って冷てー!?」
身体中に伝わる冷たさに飛び上がる。
「なんで水が溜まってんだ?」
訳が分からず辺りを見渡す。
「……斬牙!!」
雁斗は斬牙を見つけて駆け寄る。
「おい……おい!!」
「うっ!!」
斬牙が目を覚ます。
「……くたばってなくて上出来だ!」
「そもそも、お前が砂漠で倒れなきゃ、こうはならなかった……って水だと!?」
斬牙も水が溜まっていることに驚く。
「……どう見ても人為的に造られた空間だ。砂漠とは、似つかない岩壁に足首までの水だ」
「そうだとして、ここは何なんだ?」
斬牙が天井を見る。
「どうしたんだ?」
「雁斗。見てるようで見てないな? 砂漠から落ちたなら、天井は少なくとも砂で出来ててもいいはずだ」
「単に天井に仕掛けがあるだけだろ?」
「まあ、どのみち早いとこ出たほうがいいに越したことはない。進むぞ」
それから二人は、道なりに進んでいく。
「斬牙。あっちはどうだ」
「雁斗。こっちに進もう」
「……どうなってやがる! 行く道行く道、結局最初の場所に戻ってきちまう!」
「階段や扉は見当たらなかった。念のためと壁や天井も確かめたが何もなかった」
「……気のせいか……水かさが増えてねえか?」
いつの間にか、水が膝まで増えていることに雁斗は気づく。
「ヤバイぞ。このままでは水で身動きがとれなくなる」
「壊すか。天井」
「冷静になれ雁斗。天井を壊したら、大量の砂に埋まって身動きがとれなくなる。自滅するぞ!?」
「……どうしたらいいんだ! チクショ!」
雁斗は拳を水に叩きつける。
「熱くなるな雁斗! 少し頭を冷やすんだ」
「……頭どころか身体中が冷えちまってるよ。……おかげで冴えてきたぜ!」
「冴えてきた?」
「水かさが増してるってことは、つまり水が湧いてるってことだ。なら、一か八か水を勢いよく出させて、その勢いで砂を突破するんだ」
「無茶苦茶な提案だが……他に手は無さそうだな」
斬牙は納得した。
「んじゃ頼んだ。俺は斬る専門だ」
「仕方ないな。いくぞ!」
斬牙が短剣を力強く突き立てた。
「駄目か。ならば」
斬牙が長剣を突き立てる。
「そう簡単にはいかないか」
何度も何度も繰り返し長剣を突き立てる。
「無理そうか? 斬牙」
「……見くびるな」
「え!?」
次の瞬間、勢いよく水が噴き出した。
※ ※ ※
「ねえ甲多。なんか揺れてない?」
「そう?」
「気になるわね」
美加が甲多の風で上に登る。
「何かあった?」
「……水が……噴き出してる!」
「えええ!?」
甲多も登る。
「砂漠に水が湧くなんて凄いわ!」
「でもなんか違和感あるよ」
※ ※ ※
「なんとかなったな!」
雁斗は横たわる。
「砂は熱いぞ。……というか、しょっぱいな」
「なんで海水が湧くんだ!?」
「地震か!?」
斬牙は体勢を整える。
水が噴き出した場所から建物が現れた。
「抹殺師! よくもボクの貯水槽を! 許さない!」
「その声は!?」
「俺達を閉じ込めた罪はデカイぜ?」
雁斗が言う。
「程度が知れる!」
建物の周辺に謎の機械が現れた。
「気を付けろよ雁斗。相手は物体をワープさせたり、砂漠に理由は分からんが貯水槽を造って、尚且つ大層な科学力を持っているような奴だからな」
「よく分かんねえが、抹殺師を狙ってるってんなら容赦しねえ!」
雁斗は抹殺器を呼び出した。




