スクープ
「大丈夫!?」
「あたしは大丈夫! けど……」
美加は甲多の顔色が良くないことに気付いていた。
「僕は大丈夫だよ」
「あたしに嘘は通じないよ。甲多の顔色が悪いのは気付いてるんだから!」
「……美加は鋭いなあ……。実はね、さっき足を痛めたんだ」
甲多は痛めた左足を見せた。
「足首が腫れてるよ!?」
「結構、無理な着地をしたからね」
「触るよ?」
美加が足首に触れる。
「うっ!!」
甲多の額から、じんわりと汗が出る。
「ごめん甲多!?」
「だ、大丈夫……だから」
甲多は立ち上がろうとするが、痛みで立ち上がれない。
「無茶しないの!」
「甲多の電話から?」
美加は電話に出る。
【もしもし。俺、雁斗だけど】
「雁斗君!? どうして雁斗君が」
【甲多がケータイ忘れてったから届けてやろうと思ってよ。んで……今どこだ?】
「それなんだけど」
美加は雁斗に、居場所と事情を話した。
【わかった。そこで待ってろ】
「雁斗君と斬牙君がこっちに来るって」
「え? どうして二人が」
「甲多。ケータイを忘れたでしょ」
美加に言われて甲多は、ポケットを確認する。
「……ホントだ。慌ててたから」
「あたしが確認したのに」
「でも、良かったかも。このままじゃ動けないから」
「あっ、居ました!」
女性が甲多に近付く。
「先程の戦いは凄かったですね!」
女性はマイクを甲多に向ける。
「な……なんのことですか?」
甲多は顔を背ける。
「とぼけても無駄ですよ。先程の様子は、しっかりと記録させていただきました!」
「TVの人ですか!?」
甲多は戸惑う。
「是非とも、あの化け物の事とキミの事を話して貰えたらと」
「困りますよ!?」
「私達、報道は真実を伝えなければいけません。ですので是非とも協力を」
「ちょっと! さっきから何なのよ! いい大人が寄って集って。恥ずかしくないわけ」
「あら、あなたも関係者? なら、是非とも話を聞かせてもらえる?」
「どこの局? 名前を名乗りなさいよ!」
「良いわよ」
女性は局と名前を名乗った。
「へえ。分かったわよ、ありがとう。これで連絡できるわ!」
美加がケータイを見せた。
「どこから録っていたの?」
女性の目付きが変わる。
「あら? 困るわけ?」
「大人しくしてあげていればイイ気になって!」
「そこまで必死になるってことは、余程スクープに飢えているの?」
「当然よ! ここぞのネタを得れば、視聴率はうなぎ登りだもの。戦いに遭遇できた報道陣は私達だけ。だから欲しいのよ、スクープを」
「それじゃ困るの。甲多は偶然、化け物に遭遇して無我夢中で立ち向かっただけだもん! それを報じられて甲多が困ったらどうするの!?」
「……偶然!? ……本当に偶然なの?」
「ええ、そうよ!」
「……消していいわ」
女性はカメラマンに指示する。
「良いんですか!? せっかくのスクープを」
カメラマンが訊く。
「……この子たちは部外者だった。あの化け物とは関係無かった。真実を伝えるには不十分。だから消して」
「……分かりました」
カメラマンがデータを消した。
「確認させて!」
「いいわ」
美加がカメラを確認する。
「本体からも、外部からも消えてる。しっかりと確認したわよ」
美加がカメラを返した。
「……手間を取ったわね。それでは」
取材班は去っていった。
「ありがとう美加」
「いいわよ。その代わり、あたしには教えてよね、真実を」
「うん……分かったよ」
「おーい!」
「雁斗君!」
「捜したよ。……で、甲多の具合は?」
「ごめんよ雁斗さん」
「よく頑張ったな。苦労したろ?」
「苦労したよ。けどね、倒したのは、僕じゃないんだ」
「どういうことだ?」
「背中しか見れなかったけど、大柄な男の人が助けてくれたんだ。冷獣はカラスになったから、その男の人も抹殺師だと思うよ」
「そうか」
雁斗がしゃがむ。
「その足じゃ歩けないだろ? 俺がおぶってやる」
「ありがとう! 雁斗さん」
雁斗が甲多をおぶった。
「あれ? 斬牙君は」
「現場にいるぞ」
雁斗達は、表通りに出る。
「斬牙。無事に合流できた」
「ああ、そうか」
「どうしたんだ? 浮かない顔してよ」
「これが落ちてたんだ」
斬牙はペンダントを見せる。
「……この十字架は……!!」
「どうしたの? 雁斗さん」
「多分……お前を助けたのは……ダガーだ」
「ダガー?」
「……数いる抹殺師のなかでも謎が多い奴だ。確かに判ってるのは……冷獣を躊躇なく殺す」
「抹殺師としては良いことだよ」
「……そうだよな……」
雁斗はゆっくりと言った。
「ずらかろう。騒ぎを聞き付けて人が集まってきたようだ」
斬牙の言うように、街の人や警察や消防、報道陣が集まってきた。
「さっきの女の仕業ね。化け物が居たって目撃情報と、この有り様だけでもスクープになるから」
美加は眉をひそめた。
「さあて。ショッピングに行くんだろ? 付き合うぜ」
「でも雁斗君、甲多を背負ったままじゃ!?」
「気にすんなって。今なら荷物持ちも付いてくるしな」
雁斗は斬牙を見ながら言った。
「仕方ないか。本来なら甲多と美加の邪魔をしたくはないが、状況が状況だしな」
「べっ、別に邪魔じゃないないわよ!!」
美加が動揺する。
「ごめんね雁斗さん、斬牙さん」
「気にすんなって言ったろ。んじゃ、行くか!」
四人は歩きだした。




