特訓の成果
「しかし、さっきの抹殺斬は凄かったよ!」
甲多が興奮気味に語る。
「あれでか? 俺は半分ほどの威力に留めてたんだがな」
雁斗は得意気にコーヒーを飲む。
「なんで全開でいかなかったんだ?」
「冷獣相手に使うのは初めてだったからな。様子見も兼ねてたんだ」
「そうだったのか」
(そうなると見てみたくなったな。全開を)
斬牙は立ち上がると、庭に出る。
「斬牙さん?」
「試したいんだ、雁斗。今のお前の力を」
「……望むところだ!」
雁斗も庭に出る。
「二人共、ほどほどにね!」
甲多が注意する。
「……行くぜ!」
雁斗のリストバンドが変化する。
「武器の感じは変わってないんだな」
斬牙は双剣を構える。
「おりゃ!」
雁斗が一瞬で間合いを詰める。
「忘れたのか?」
斬牙は短剣を差し向ける。
「予測済みだ!」
雁斗はバックステップをしながら、斬牙の手首を蹴った。
「痛っ!」
斬牙が短剣を落とす。
「隙アリ!」
「同じ手は食らわん!」
斬牙が長剣から炎を放つ。
「おわっ!?」
雁斗は体勢を崩す。
「……形勢逆転だな」
斬牙は炎を纏った長剣を雁斗に向ける。
「お前の抹殺器はリーチが短いのが最大の弱点だ。近付けさせなければ恐くない」
「しくじったな、斬牙。油断大敵だ」
「うっ!!!?」
斬牙の腕に痺れが走る。
「ご要望通り、使ってやったぜ? 全開の抹殺斬をよ」
雁斗が立ち上がる。
「腕が……痺れて動かない!」
斬牙は抹殺器をリストバンドに戻す。
「なんだ? もう終わりでいいのか?」
「腕が痺れてたら戦えない。抹殺斬の威力は感じれたしな」
斬牙が家の中に戻った。
「……まだまだ甘いな……俺のは」
「え!? 十分凄かったよ」
「……親父のは、もっと凄かった。俺のは、相手の腕を痺れさせる程度の威力だ」
雁斗は抹殺器をリストバンドに戻すと、家に戻っていった。
(僕にとっては二人共、凄いよ)
「誰か来たみたいだぜ?」
「誰だろう?」
甲多は玄関に向かう。
「はーい」
甲多が、玄関のドアを開けた。
「やっほー! 甲多!」
「美加、どうしたの?」
「ひどーい。今日はショッピングに行く約束でしょ」
「そうだった、忘れてた!」
「もう! 甲多は忘れっぽいんだから」
美加が頬を膨らませる。
「すぐに支度するから待ってて!」
「慌ただしいな甲多。どうした?」
斬牙が訊く。
「今日は、美加と出掛ける約束をしてたんだ!」
「そうか。気を付けてな」
「分かってるよ、斬牙さん。ありがとう」
甲多が玄関を出る。
「忘れ物はない?」
「大丈夫だよ。じゃあ行こ!」
「うん!」
甲多と美加が歩き出した。




