ある人の話-青空の向こう-
ある人が語った、青空に魅せられた小鳥の話。
あるところに、生まれたばかりの小鳥がいました。
小鳥が生まれて最初に見たものは、眩しいくらいに青い空でした。それは目が痛くなるくらいの強烈な青でした。
小鳥は、大きくなった自分があの空を自由に飛びまわる、そんな姿を夢に見ました。
小鳥は空を飛ぶ練習を始めました。天気はいつも曇りでした。
初めてふわっと浮いた日、これが自分の生きる道だ、と小鳥は思いました。
小鳥は誰よりもたくさん練習しました。でも、自分よりも早く飛べるようになった兄弟がいました。速く飛べる兄弟もいました。綺麗に飛べる兄弟もいました。
小鳥は幼い頃の夢だけを頼りに練習を続けました。
あるとき迷い込んだ旅人が、どこかにある大きな山の上には、真っ白な世界があって、そこでは真っ青な空に手を伸ばすことができる、と教えてくれました。
小鳥は旅に出ることにしました。
青空を飛ぶことを夢見る友と出会い、一緒に旅をすることにしました。
どれくらいの時が経ったのでしょうか、つらいこともありました。悲しい別れもありました。
虚しくなることも、道を見失うこともありました。支えてくれたのはいつも、大切な仲間でした。
そうして小鳥は、誰よりも速く、綺麗に飛べるようになりました。
小鳥は、空を自由自在に飛び回りました。
友は頭の良い鳥でした。
曇り空を突き抜けると、昔一度だけ見た、どこまでも広がる青い空が姿を現しました。手を伸ばさなくても、憧れの空はそこにありました。
小鳥は真っ白な世界の真っ青な空を、心の赴くままに飛びました。
気が付くと雲が晴れていて、眼下には故郷の森が見えました。小鳥は弟妹に手を振りました。
今や、夢見たあの空は小鳥のものでした。小鳥はもう眩しくはありませんでした。
小鳥は青空を飛び続けました。嬉しくて、楽しくて、悠々と飛ぶ自分の姿をみんなに見せつけながら飛びました。
でも、なぜか、どこか、さみしかった。
大切な仲間がいる。喜ぶ家族の顔も見た。夢は今叶っているところ。
なのに、何故か寂しくて、虚しくて、小鳥は赤く染まる荒野に一本だけ生えていた、枯れかけた木の枝にとまり、そして目を閉じました。
小鳥が目を覚ましたのは夜でした。
暗闇の中、小鳥は初めて月を見ました。闇に潰れてしまいそうなほど細いのに、涙が出るくらい眩しい月でした。
一筋の月に照らされた世界は、今まで見たことのないくらい色づいて見えました。
小鳥は自分の生きる意味を理解しました。
大人になった小鳥は、白み始めた世界へとまた羽ばたいていきました。




