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第7話:封じられた記憶 — 真実の痕跡

神崎かんざき れい

•年齢:29歳

•性格:冷静沈着、論理的だが内心に熱い正義感を秘める

•役割:探偵事務所のリーダー、事件解明の中心人物

•写真イメージ:黒のロングコート、端正な顔立ち、鋭い眼光、窓越しに考え込む姿



藤堂とうどう

•年齢:33歳

•性格:軽妙で冗談好き、だが仕事は緻密

•役割:情報収集・調査担当、玲の相棒

•写真イメージ:眼鏡、スーツの上着を軽く羽織り、デスクで資料を確認する姿



佐久間さくま 直人なおと

•年齢:35歳

•性格:冷静かつ理知的、囚われていた経験から慎重

•役割:十年前に施設に囚われた人物、事件の鍵を握る

•写真イメージ:白い研究員服、血や埃で汚れた姿、深い傷痕が顔に残る



篠原しのはら

•年齢:41歳

•性格:分析力鋭く慎重、口数は少ない

•役割:暗号・技術解析担当、元政府機関情報解読官

•写真イメージ:端末に向かう姿、指先でキーボード操作中の横顔



秋津あきつ

•年齢:38歳

•性格:冷静、危機管理能力に長ける、直感的判断も得意

•役割:情報分析・通信履歴解析、元軍情報分析官

•写真イメージ:端末画面を凝視、眉をひそめて集中する姿



八木やぎ

•年齢:40歳

•性格:洞察力鋭く、静かに状況を見極める

•役割:監視映像解析・心理洞察担当、元潜入捜査官

•写真イメージ:腕を組み、倉庫映像をモニターで確認する姿



社会的波紋(一般反応)

•状況:事件の公表により市民・メディアが注目、内部犯行や封印された記憶の実態が明らかに

•写真イメージ:街頭スクリーンのニュース、スマートフォンで情報を確認する人々

時間:午後8時

場所:神崎探偵事務所


玲は静寂な事務所でコーヒーを啜りながら、過去の事件の余韻に浸っていた。


「……ふう。」彼は小さく息をつき、机の上に置いた資料に目を落とす。


その瞬間、電話が鋭く鳴り響いた。玲は眉をひそめ、受話器を手に取る。


「神崎探偵事務所です。」


受話器の向こうから、かすかに震える女性の声が聞こえた。


「……あの、十年前の事件について、調査をお願いしたいのです……」


玲の瞳がわずかに細まり、机に置かれたコーヒーカップの縁を指で軽く叩いた。

過去に封印された記憶が、微かに揺らぎ始めていた。


時間:午後8時30分

場所:神崎探偵事務所


扉が静かに軋む音を立てて開く。玲の視線の先に立っていたのは、黒いスーツに身を包んだ女性。


手には封筒を固く握り、指先は微かに震えていた。


「失礼します……調査をお願いしたいのです。」


声には、不安と焦りが入り混じっていた。玲はゆっくりと椅子から立ち、無言で封筒を受け取った。


時間:午前10時

場所:都内郊外・封鎖された研究施設


玲は車のハンドルを握りながら、依頼人の顔をちらりと見た。封鎖された施設の重い鉄門が視界に入る。


「ここが……十年前の現場ですか。」

依頼人の声には、かすかな震えが混じる。


玲は無言で頷き、目を鋭く光らせた。施設内へ足を踏み入れる瞬間、冷たい空気が二人を包み込む。

荒廃した廊下を歩くたび、床の埃が舞い上がる。錆びた扉や割れた窓から冷たい風が吹き込み、玲の背筋をぞくりとさせた。


「……十年前の罪の声が、今もこの空間に残っているようです。」

依頼人が低くつぶやく。その声に、過去と現在が交錯する静寂が重なる。時間:午前10時30分

場所:封鎖された研究施設・生体実験区域入口


玲は警告標識をじっと見つめ、手袋をはめ直した。空気には金属と消毒液の混ざったような異臭が漂い、かすかな緊張が肩越しに伝わる。


「……ここで、何が行われていたのか。」

依頼人の声は震え、言葉は途切れ途切れだった。


玲は深く息を吸い込み、慎重に一歩を踏み出した。過去の封印された記憶が、今まさに現実として彼の前に立ちはだかる。


時間:午前10時45分

場所:封鎖された研究施設・奥部通路


玲と依頼人は足を止め、赤い点滅に照らされる通路を見つめた。金属製の床が微かに軋む音が響く中、壁の影からかすかな人影が浮かび上がる。


「……直人!」

依頼人が叫ぶ。


玲はすぐに警戒態勢を取りつつ、影に近づく。そこにいたのは、十年前に消息を絶ったはずの直人だった。痩せ細り、無表情ながらも目だけがかすかに光を帯びていた。


「……ここから出るんだ、直人。」

玲の声は低く、しかし揺るがない決意に満ちていた。


直人の声はかすかに震えながらも、どこか達観した響きを帯びていた。


「……来たか、玲。」

玲は一歩前に踏み出し、冷静な視線で直人を見据える。

「ここで何が起きたのか、全て話せ。時間はない。」

直人の瞳の奥に、過去の痛みと秘密が滲む。静寂の中で、二人の間に緊張が張り詰めた。


低くかすれた声が闇の中から響き、次の瞬間、直人の姿が一筋の閃光と共に浮かび上がった。


「……玲、こんなところまで来るとはな」


玲は間髪入れず応じる。

「直人、話すんだ。全部、今すぐ。」


背後で依頼人・美咲が静かに息をのむ。過去の影を追う二人の間に、再び現実の緊張が重くのしかかる瞬間だった。


彼の白い研究員服は血と埃にまみれ、顔には深い傷痕が刻まれていた。


玲は思わず息を飲む。

「……こんな状態で、よく生きていたな」


直人は微かに肩をすくめ、かすれた声で答える。

「生きているだけじゃ意味がない。封じられた記憶の真実を、俺は知っている……」


美咲はその言葉に震え、封筒を握りしめた手に力が入る。


直人の声はかすれていたが、決意がにじんでいた。


「俺は……ここでずっと待っていた。」


玲はじっと彼を見つめ、息を整える。

「待っていた……何のために?」


直人は目を伏せ、静かに答える。

「全てを知る者として、封じられた記憶を解き放つために……だ。」


美咲は肩を震わせ、声を詰まらせながらも封筒を胸に抱きしめる。


その言葉と共に、直人は膝を崩して床に倒れ込む。

息は荒く、血走った瞳が微かに揺れる。


玲はすぐさま近づき、彼の肩に手を置いた。

「無理はするな……ここから出る方法を考えよう。」


美咲も恐る恐る直人のそばにかがみ込み、手を握る。

「ずっと……心配してたのよ、兄さん……」


直人はかすかに微笑むように顔を上げ、かすれた声で答える。

「ありがとう……ここまで……来てくれて……」


沈黙が一瞬流れ、施設の冷たい空気が三人を包む。


直人は床に崩れたまま、かすかな震えを伴って語り始める。

「……十年……この施設で……ずっと、監禁されていたんだ。」


玲は静かに膝をつき、直人の目をまっすぐに見据える。

「十年間……誰も気づかなかったのか?」


直人は小さく首を振る。

「いや……監視の目は常にあった。だが……声をあげることも、助けを求めることも……許されなかった。」


美咲は涙を堪え、震える手で直人の手を握る。

「でも……もう大丈夫。私たちがここにいる……」


直人は深く息をつき、ようやく肩の力を抜く。

「……ありがとう……来てくれて……本当に……」


沈黙の中、十年の時を超えた重みが、三人の胸に静かに降り積もった。


玲は低く息をつき、直人を見据えながら確認する。

「……10年前の、あの拉致事件からずっと、ここに囚われていたのか?」


直人はかすれた声で小さくうなずく。

「……あの夜から……外の世界は、俺にとって夢のようなものだった……」


美咲は目を伏せ、震える声で問いかける。

「……誰が、こんなことを?」


直人はゆっくりと首を振り、目の奥に深い闇を浮かべる。

「……分からない……ただ、組織が……ずっと俺を監視していた……」


静寂が施設内を満たし、十年間の沈黙と恐怖が重くのしかかる。


直人はかすれた声を震わせながら言った。

「……あの夜から、俺を監禁していたのは『アークス』という組織だ。」


玲は眉をひそめ、低く問いかける。

「アークス……一体、何の目的で?」


直人は床に崩れたまま、遠い目で答える。

「……目的は研究……人体実験……そして……記憶の操作だ……」


美咲は手を握りしめ、怒りと恐怖が入り混じった声で言う。

「……そんなこと……どうして……」


直人の口元にわずかな笑みが浮かぶ。

「……俺が生き延びたからには、真実を暴くしかない……」


施設内に、重く沈んだ緊張が漂う。


玲は低くつぶやき、直人の肩を支えながら立ち上がる。

「ここは危険だ。とりあえず脱出しよう。」


美咲も息を整えながら、慎重に足元を確認する。

「うん……でも、あの組織の手はまだ届くかもしれない……」


直人は苦しそうに立ち上がり、施設内の闇を睨む。

「……奴らの監視が解けたわけじゃない。足音ひとつで気付かれる。」


玲は周囲の扉や通路を見渡し、迅速に出口ルートを判断する。

「静かに行く。無駄な争いは避ける。」


三人は互いの動きを確認しながら、冷たい風が吹き抜ける廊下へと足を踏み出した。


時間:午前11時22分

場所:封鎖された研究施設・外部出口付近


玲は直人の腕を支えつつ、扉の手前で立ち止まる。

「あと少しだ、もう少しで外に出られる。」


美咲は息を殺しながら周囲を警戒する。

「警備システムはまだ生きてる……センサーに触れないように。」


直人は弱々しくも決意を込めた声で答える。

「……十年間の暗闇から、やっと光が見える……」


玲が扉を押し開くと、冷たい朝の光が三人を包む。

施設の鉄扉が重く閉まる音と共に、外の空気が流れ込み、束縛されていた時間が一瞬だけ解放されたように感じられた。


三人は無言で深呼吸し、警戒しながらも外の世界へと歩を進めた。


時間:午前11時25分

場所:封鎖された研究施設・敷地外


玲たちは施設の門をくぐり抜け、外の光を浴びる。

直人の目には久しぶりの青空が映り、わずかに涙が滲む。


「……空の匂いがする……久しぶりだ。」

直人は声を震わせながら、肩を揺らして深呼吸した。


美咲がそっと手を握り、安心した表情を見せる。

「もう大丈夫。私たちがついてる。」


玲は周囲を見回し、背後の施設を警戒しつつも、わずかに微笑んだ。

「まだ油断はできないが、まずはここまでだ。外の世界が、君を待っていたんだ。」


三人は固く手を組み、沈黙のまま歩き出す。

長く閉ざされていた時間が、外の光に溶けていくかのようだった。


時間:午前11時40分

場所:施設外・警察本部へ向かう車内


玲は運転席でハンドルを握りながら、直人に低く言った。

「ここまでの経緯を、全て警察に話すんだ。隠し事は無意味だ。」


直人は俯き、苦しそうに息をつく。

「……わかってる。でも、全部話すと、あの組織の名前も出る。俺たちだけじゃ済まなくなる……」


美咲が助手席からそっと手を握る。

「でも、黙っていても誰も救えない。玲さんが守ってくれるから、正直に話そう。」


玲は静かに頷き、視線を前に戻した。

「真実を明かすことが、君を自由にする唯一の道だ。」


車は警察本部へ向けて走り出し、閉ざされていた過去の記録が、ようやく外の光に晒されることになる。


時間:午後0時10分

場所:警察本部・受付ロビー


玲は受付カウンターに立ち、直人と美咲を横に並ばせた。

「こちらの者です。十年前の事件に関する重要な証言と証拠を提出したいのですが。」


受付の警察官は一瞬目を細め、書類と身分確認用の手続きを指示する。

「承知しました。こちらに身分証と事件内容の概要をご記入ください。」


直人は深く息をつき、封筒を差し出す。

「十年前……全て、これにまとめました。」


玲は低く、しかし落ち着いた声で言った。

「これで、全てが明らかになります。」


受付ロビーの蛍光灯の光が、二人と封じられた記憶の入った封筒を冷たく照らしていた。


時間:午後0時15分

場所:警察本部・受付ロビー


玲は封筒をそっと手に取り、表面に刻まれた微かな折り目や手書きの印を確認した。

「これが……全ての真実を含んでいる。」


直人は肩を震わせ、声を絞り出すように言った。

「もう……誰も傷つけたくないんだ。」


美咲は玲の横で、震える手で封筒を支えながら小さく頷いた。

「どうか……これで、過去の悪夢が終わりますように。」


玲は封筒を丁寧に受付へ差し出す。

「こちらを、事件担当に渡してください。十年前の記憶と事実を、すべて明らかにするために。」


警察官は無言で封筒を受け取り、慎重に保管用の棚へと運んだ。

受付ロビーに沈黙が戻り、外の世界の光と共に、長年封じられた記憶が静かに解放される気配が漂った。


時間:午後0時20分

場所:警察本部・事件担当室


玲と美咲、直人を迎えたのは、事件担当の刑事・石田慎一。中肉中背、眼光鋭く冷静な表情を崩さない人物だった。


「なるほど……これが十年前の件に関わる資料か」

石田は封筒を慎重に開き、内部の文書や写真を確認する。

「詳細な記録ですね。被害者の証言や目撃情報もすべて整理されている。」


玲は静かに説明を始める。

「直人が拉致された当時、組織の介入があったこと。施設内での監禁と実験の痕跡、そして彼が残した暗号すべてです。」


直人は声を振り絞る。

「これで……もう、誰も犠牲にはさせないでほしい。」


石田は頷き、封筒の内容を慎重にファイルにまとめながら言った。

「分かりました。これで公式に事件として再調査を開始します。君たちは、今後、証言として必要になります。」


静まり返った事件担当室で、玲は深く息をつき、長く封じられていた記憶と真実が、ようやく光を取り戻す瞬間を見つめていた。

時間:午後九時

場所:都内警察署・特別保護室


玲は直人の腕をそっと支えながら、警察署の入り口へ向かった。夜の風が冷たく吹き、街灯の明かりが路面に反射している。


「ここなら安全だ。全て、ここで話せる。」


署内に一歩踏み入れると、制服姿の警察官が静かに迎えた。直人はまだ震える手で胸を押さえ、目を閉じたまま小さく息をつく。


「こちらの特別保護室で待機してもらいます。外部からの接触は一切遮断します。」


玲は頷き、直人の肩を軽く叩いた。「もう大丈夫だ。ここで、君の話を聞こう。」


室内に案内されると、静寂の中にわずかに空調の音が響く。直人は椅子に腰を下ろし、深呼吸を重ねながら、玲に封筒を手渡した。その中には、封じられた記憶が詰まった資料が収められていた。


「ここから、全てを整理しよう。」


玲の声は落ち着いていたが、その瞳には決意が光っていた。過去の十年、閉ざされていた真実が、今、ゆっくりと解き放たれる瞬間だった。

時間:午後九時三十分

場所:都内警察署・特別保護室


玲は静かに封筒を開き、中から取り出された資料と写真に目を通した。紙片には、十年前の直人の拉致の経緯、組織の関与、そして彼が囚われていた施設の位置が詳細に記されている。


直人は震える声で口を開く。

「……あの日、突然連れ去られた。誰も止められなかった……。俺を拉致したのは、“セレスティア財団”の下部組織だった。目的は……俺の研究データと家族の関係性を利用することだった。」


玲は資料に指を置き、冷静に質問を続ける。

「その施設には、誰がいた? 何をされていた?」


直人は目を伏せながら語る。

「研究員として扱われたけど、実態は……人体実験に近い拘束と監視だった。外界との連絡は禁止され、わずかな食事と睡眠だけが与えられた。毎日、監視カメラの前で課題をこなす生活だった……。」


玲はメモを取りながら頷く。

「組織はまだ動いているか? 脅威は残っている?」


直人の瞳にわずかに恐怖が戻る。

「……残党はいる。俺を追跡してくる者も、今も。だけど、ここまで連れてきてもらえれば……少しは安全だ。」


玲は深く息をつき、封筒の資料を胸元に引き寄せた。

「全て整理し、警察と協力して事実を公にする。君の過去も、真実も、隠させはしない。」


直人は小さく頷き、肩の力を抜く。封じられた記憶の重みが、少しずつ解き放たれようとしていた。

時間:翌日 午前十時

場所:警察特殊対策室・作戦本部


玲は作戦図の前に立ち、直人の証言と封筒の資料を指でなぞる。

「追跡者の行動パターンはほぼ把握できた。直人を標的にする可能性が高い拠点は三か所だ。」


警察担当官の一人が頷き、作戦班に指示を出す。

「潜入班は第一拠点の制圧を開始。防犯カメラと通信は篠原班が監視。玲、藤堂、直人は安全区域で待機せよ。」


直人は腕を組み、まだ緊張の残る声で言った。

「……奴ら、俺を取り戻そうと必死だ。だが、俺はもう逃げない。」


藤堂は机を軽く叩き、冗談めかして声を上げる。

「逃げないって言っても、俺たちがついてるんだから大丈夫だ。夜食は後回しだぞ。」


作戦は緊迫して進行する。潜入班が拠点に忍び込み、暗号通信を傍受、組織内の動きを封鎖。赤外線センサーの切り替え、警報装置の解除、そして逃亡経路の封鎖。


午後二時、第一拠点での突入が始まる。玲の指示で、特殊部隊が静かに施設内へ進む。


「標的を確保、抵抗なし。残党も制圧完了。」


無線越しの声に、玲は直人に微笑みかける。

「もう安全だ。君を狙う者はいない。」


直人は目に光を取り戻し、肩の力を抜く。

「……これで、ようやく終わるんだな。」


作戦終了後、玲たちは直人を保護施設へ送り届ける。外界の光が差し込む廊下を歩く直人の表情には、十年間の恐怖から解放される安堵が漂っていた。

時間:午後八時

場所:各ニューススタジオ・オンライン報道サイト


ニュース速報が画面を埋め尽くす。キャスターの声は緊迫していた。

「東京都内で発覚した極秘研究施設事件。十年前から失踪していた科学者・佐久間直人氏が、警察と探偵チームの協力により無事保護されました。事件に関わる組織の実態も明らかとなり、社会に大きな衝撃を与えています。」


SNSには、直人の救出劇や封印された記憶の存在に関する投稿が殺到する。

「これは……まさかの国家レベルの隠蔽じゃないか?」

「十年も誰にも知られずに……想像を絶する。」


研究機関や企業の関係者の間では緊急会議が開かれ、法的調査と内部監査が加速する。記者や専門家は事件の深刻さを分析し、倫理問題や安全管理の甘さを指摘する。


一方、ネット掲示板では事件の詳細を求める書き込みが相次ぎ、匿名の内部告発者や関係者が情報提供を申し出る動きも出ていた。


玲は事務所でニュースを見つめ、静かに呟く。

「十年分の秘密が、ようやく日の目を見た……だが、これで本当に終わったわけではない。」


藤堂が傍らで書類をまとめながら、軽く笑みを浮かべる。

「まぁ、ひとまず一杯飲むか。夜食でも食べに行こう。」


外の街灯に照らされる都会の夜。十年間の封印が解かれ、社会は新たな真実と向き合うことになる。

玲の後日談


時間:午後三時

場所:神崎探偵事務所


玲はデスクに向かい、事件の資料と証拠を整理していた。封じられた記憶が解き放たれた後の余韻が、静かに室内を満たす。


「……やっと、すべて整理できそうだな。」


指先で書類を丁寧にまとめながら、次の依頼に備える覚悟を静かに胸に刻む。その瞳には、冷静さと穏やかな達成感が混ざった光が宿っていた。


時間:午前十時

場所:神崎探偵事務所


端末を閉じ、藤堂はゆっくりと珈琲を淹れる。香ばしい香りが漂う中、微かに笑みを浮かべ、先日の事件の一連の動きを思い返していた。


「さて……次はどんな騒ぎが待ってるのかね。」


カップを手に取り、一口啜る。穏やかな朝の光が窓から差し込み、探偵事務所に静かな日常が戻っていることを感じさせた。


時間:午後六時

場所:警察保護施設内


直人は慎重に資料に目を通し、十年間封じられていた記憶や組織の情報を整理していた。手元には封筒に入った証拠と、玲たちから受け取った報告書。


「これで……やっと、終わりにできるのか」


深く息をつきながらも、その表情には微かに安堵の色が浮かぶ。外の世界の光に目をやり、今後の生活を少しずつ思い描いていた。


時間:午後四時

場所:神崎探偵事務所・解析室


篠原は暗号化通信のログを再確認し、過去の解析データと照らし合わせながら慎重に目を走らせる。


「この手の暗号は、いつでも裏切る可能性がある……」


彼は眉をひそめつつも、完璧を期すように一つひとつの記録を点検し、次の緊急事態に備えてデータを整理していった。


時間:午後五時

場所:神崎探偵事務所・解析室


秋津はモニターに過去の通信履歴を映し出し、眉をひそめながら慎重に復元作業を進めていた。


「ここに潜む微かな信号……見逃すわけにはいかない」


指先は軽快に動き、複雑に絡み合ったデータの糸を一つずつ紡ぎ出すように解析を進めていく。その表情には、専門家としての鋭さと責任感が滲んでいた。


時間:午後六時

場所:神崎探偵事務所・解析室


八木は倉庫の監視映像を再確認し、腕を組んで静かに考え込んでいた。


「……やはり、あの時の動きに不自然な点がある」


過去の潜入捜査官としての勘を頼りに、映像の一コマ一コマを慎重に目で追い、人物の動線や細かな違和感を見逃さない。冷静さと洞察力を併せ持つ彼の目は、事件の全体像を静かに紐解いていた。


時間:午後八時

場所:都内各ニューススタジオ・街頭スクリーン


事件は大々的に報道され、封印された記憶と内部犯行の実態が明らかとなった。


キャスターの声が街角のモニターに響く。

「本日明らかになった情報によりますと、過去十年間封印されていた事件の真相が、神崎探偵事務所の調査により公開されました。」


通行人たちはスマートフォンの画面に見入る。新聞やネットニュースも一斉に取り上げ、SNSでは事件に関する議論が白熱する。


「誰が、なぜこんなことを……」

「封じられた記憶がこれほどまでに……」


一般市民の間にも衝撃と関心が広がり、社会全体が事件の影響下に置かれる夜となった。

受信トレイに「佐久間直人」からのメールが届いた通知が表示される。



件名:無事です

送信者:佐久間直人

時間:午前8:47

本文:

玲さん、藤堂さん


先日は本当にありがとうございました。

おかげさまで、安全な場所で保護され、体調も徐々に回復しています。

あの封印された記憶の内容も整理がつき、今後の調査や証言にも協力できます。


この件に関しては、まだ公にできない部分がありますので、どうか慎重にお願いします。


佐久間直人



玲は画面を見つめ、深く息をつく。

「ようやく、一区切りついたか……。」


画面越しの直人の安否を確認し、心の奥で事件の余韻が静かに溶けていくのを感じた。

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