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34話 『黒沢一誠〜記憶の深淵にて〜』スピンオフ

■登場人物紹介(スピンオフ版)


れい

•年齢/性別:29歳/男

•職業・役割:探偵、チームリーダー

•特徴:冷静沈着で戦術・情報分析能力に長ける。チーム全体をまとめる存在。

•呼称:朱音からは「玲お兄ちゃん」、奈々からは恋人として「玲」と呼ばれる。


佐々木朱音あかね

•年齢/学年:小学4年生/女の子

•特徴:無邪気さと観察眼を兼ね備え、スケッチブックに描く絵が事件解決のヒントになることも。玲を「玲お兄ちゃん」と呼び慕う。


橘奈々(たちばな なな)

•年齢/性別:20代後半/女

•役割・特徴:玲の助手で、情報解析や現場サポートを担当。恋人として玲を「玲」と呼び、深い信頼を寄せる。


佐々木沙耶さや

•年齢/性別:30代前半/女

•特徴:チームの感情的支柱。鋭い直感で真実に迫る。


黒沢一誠くろさき いっせい

•年齢/性別:30代/男

•役割・特徴:十年前の倉庫事件の生存者で、事件の真相を追う。影班の指令に背き、仲間を守った過去を持つ。


川崎ユウタ/ユウキ

•年齢/性別:10代/男

•特徴:事件の証人であり、記憶の断片を頼りに真実を紐解く重要人物。


朝倉隼人あさくら はやと

•役割:記憶構造復元専門官エリートスペシャリスト

•特徴:断片的な記憶を時系列順に再接続する能力を持つ。


志水陽葵しみず ひなた

•役割:記憶改竄検出官/感情フレーム抽出技術者エリートスペシャリスト

•特徴:感情の歪みから改ざんされた記憶を逆算し、誰が嘘を植えつけたかを可視化できる。


御子柴理央みこしば りお

•役割:記憶構造統合/クロス記憶比較解析エリートスペシャリスト

•特徴:複数の記憶媒体を横断的に解析し、矛盾点・整合性を抽出する。


結城朔夜ゆうき さくや

•役割:記憶干渉物の物理残留解析エリートスペシャリスト

•特徴:現場に残る痕跡から記憶改ざん装置や薬剤を特定する。


羽瀬怜那はせ れいな

•役割:潜入・通信遮断・電子撹乱(影班新人)

•特徴:異常な集中力と直観的戦術力を持つ電子工作の天才。「サイレンサー」と呼ばれる。

【時刻:2025年10月13日 午前7時32分】

【場所:佐々木家 ロッジ・リビング】


封筒の中身を見つめる朱音の目に、突然、窓の外から**「バンッ!」**という鋭い銃声が響いた。


「ひっ……!?」


朱音は思わず机に身を伏せ、背後に倒れそうになる。紙片が床に散らばり、封筒は手から滑り落ちた。


「朱音、大丈夫か!」


透子の声が遠くから響く。窓の外を見ると、朝の霧の中に黒い影が一瞬揺れたように見えた。


「……誰か、いるの?」


朱音は小さな声で呟きながらも、震える手で封筒を握り直す。胸の奥に不安と好奇心が交錯する瞬間だった。


【時刻:2025年10月13日 午前7時32分】

【場所:佐々木家 ロッジ・リビング】


朱音は机の上で封筒を握りしめ、静かに中身を覗き込んだ。封筒の質感は妙に湿っており、開けるたびに紙の端がわずかに曲がる。


「……玲さんに見せなきゃ」


小さな声で呟き、朱音は封筒を抱えたままリビングのソファに腰を下ろす。窓の外では、朝の光が森の木々を淡く照らしていた。


「おはよう、朱音。何か見つけたのか?」


背後から沙耶の声がかかる。朱音は微笑みながら封筒を差し出した。


「うん、これを玲さんに渡してほしい」


沙耶は頷き、朱音の手元にそっと手を添えた。


【時刻:2025年10月13日 午前7時45分】

【場所:佐々木家 ロッジ・書斎】


カセットテープは静かに回転し続け、薄暗い書斎に微かなモーター音が響く。


朱音は慎重にイヤホンを耳にあて、再生ボタンを押した。テープから流れるのは、かすれた声。


「……これは、私たちに伝えなければならない記録だ」


小さな声が途切れ途切れに響き、書斎の空気は一瞬にして緊張に包まれる。


朱音は封筒からメモを取り出し、再生される音声と照らし合わせるように目を走らせた。


「……玲さん、これは……見てもらわなきゃ」


手元のカセットと封筒を抱き、朱音は静かに立ち上がる。朝の光が窓から差し込み、薄暗い室内を淡く照らしていた。


その記述の下に、かすれた文字でこう書かれていた。


「――“嘘の始まりは、真実の沈黙から”」


朱音は一瞬、息を呑んだ。

その筆跡は震えており、まるで誰かが急いで書き残したように見える。


紙の端には、薄く乾いた血のような赤い染みがついていた。

そして、そのすぐ下に、見慣れない印章――三重の円に貫かれた一本の線。


朱音は封筒を持つ手を強く握りしめた。


「……これ、誰が書いたの?」


その声は、朝の静けさの中で小さく溶けていった。


【時刻:午後4時12分】

【場所:神奈川県・港南第七倉庫跡地】


黒沢一誠くろさわ いっせいは、風に舞う砂埃を払いながら、封筒に記された座標を頼りに足を止めた。

錆びついた鉄扉、崩れかけたコンクリートの壁、そして雑草が侵食した敷地――。

地図の示す“点”は、まさしくこの場所だった。


「……ここか」


低くつぶやいた声が、静まり返った空間に吸い込まれていく。

かつては物流倉庫として使われていたはずの建物は、今や骨だけを残したように寂しく立っている。

風が抜けるたび、ひしゃげた鉄骨が軋み、遠くでカラスが鳴いた。


黒沢はゆっくりと扉に手をかける。

重い音を立てて開いたその先――薄暗い内部には、朽ちた棚と散乱する古い書類、

そして中央にひとつ、誰かが最近置いたらしい小さな木箱があった。


彼は周囲を確かめながら近づき、箱の前にしゃがみ込む。

埃を払うと、蓋の表面に何かが彫られているのが見えた。


「――“開けるな”」


黒沢は一瞬、息を止めた。

だがその目には、ためらいよりも確信の色が浮かんでいた。


「……どうせ、こういうのは開ける運命なんだよな」


小さく呟き、ゆっくりと蓋に手を伸ばした。


【回想:2015年10月13日 午後11時42分】

【場所:横浜市・第七倉庫地区 裏搬入口付近】


夜の倉庫街に、雨が叩きつけていた。

街灯の明かりが途切れ途切れに地面を照らし、血と泥が混じる冷たい匂いが漂っている。


黒沢一誠は息を荒げ、背後を振り返った。

その腕の中には、傷だらけの女性――沙月さつきが抱えられている。

彼女の意識はすでに薄く、震える唇で、かすれた声を絞り出した。


「……行って、一誠さん……。あなたまで……死ぬ……」


「黙ってろ。影班の指示なんか、今は関係ない」


一誠の声には、雨にも負けないほどの怒りと決意がこもっていた。

イヤーピースからは、影班の通信が途切れ途切れに響いている。


『黒沢、命令を無視するな! その女を渡せ!』

『お前は退避しろ! 敵はすでに包囲を——』


「うるせぇ!」


彼は通信端末を乱暴に外し、地面に叩きつけた。

その瞬間、倉庫の奥で金属が弾けるような音が響く。

闇の中から、黒い影が二つ、音もなく現れた。


「……やっぱり来やがったか」


一誠は沙月を壁際にそっと降ろし、拳銃を構える。

雨粒が銃身を滑り、指先まで冷たく染み込む。


「沙月、絶対に目を閉じるな。――俺が、終わらせる」


銃声が夜を裂いた。

光の閃きとともに、影が崩れ落ちる。

その直後、二人目の敵が背後から迫るが、一誠は反転し、至近距離で引き金を引いた。


だが、その弾丸が届くよりも早く、

何かが閃光のように走り、世界が白く塗り潰された。


爆音、土煙、そして――沈黙。


目を開けたとき、沙月の姿はもうなかった。

瓦礫と血の跡だけが、冷たい雨の中に残されていた。


「……沙月……?」


答える声は、どこにもなかった。


そしてこの夜、第七倉庫事件として記録されたその出来事は、

のちに“一誠の失踪”という形で幕を閉じた。


【現在:2025年10月13日 午後3時26分】

【場所:第七倉庫跡地・南側廃材区域】


陽は傾きかけ、錆びた鉄骨が赤く光を反射していた。

かつての事件現場――第七倉庫跡地。

風に乗って舞い上がる砂埃の中、黒沢一誠はスコップを握りしめ、無言で地面を掘り進めていた。


彼の足元には、古びたマーキングの跡。

十年前、通信記録の断片とともに残されていた“あの日の座標”。


「……本当に、ここに――あるのか」


額の汗を拭いもせず、黙々と掘り続ける。

土の層が硬くなり、鉄片のような感触が指先に伝わった。


やがて、スコップの先が“何か固いもの”にぶつかる。

乾いた音。

一誠は息を詰め、慎重に周囲の土を払った。


数分後――

そこに現れたのは、厚い泥に覆われた黒い防水ケースだった。


彼は膝をつき、指先で泥を拭い取る。

表面には、薄くかすれた刻印。


「K-07 / MEMORY SEAL / 2015-10-13」


「……やっぱり、隠してやがったか」


静かな独白とともに、一誠はケースのロックを解除した。

低い電子音が響き、錆びた空気の中で蓋がわずかに開く。


中には、古いデータチップと一枚の写真。


写真には、あの夜、倉庫の前で微笑む沙月の姿――

そして、その背後には、まだ若い玲の姿が映り込んでいた。


一誠はしばらく何も言えず、ただ拳を握りしめる。

指先が白くなるほど強く。


「……十年も、隠されてた真実ってわけか」


風が吹き抜け、土と錆の匂いを運んでいく。

その中で、一誠の瞳はゆっくりと決意に光を宿していった。


【2025年10月13日 午後7時18分】

【都内 第三区庁舎・特別監査室】


蛍光灯の白い光が、無機質な室内を冷たく照らしていた。

金属製の机の上には、散乱した資料と、湯気の消えたコーヒーカップ。

壁際のサーバーラックが低い唸りを上げ、機械の熱が静かに漂っている。


玲は椅子に深く腰を下ろし、モニターの光だけを頼りに報告ファイルを見つめていた。

眉間に刻まれた皺は、長時間の思考の跡を物語っている。


画面には、冷たい文字が並んでいた。


【解析結果】


影班の指揮系統の一部が、上層部の権力闘争に巻き込まれていた。

命令経路は分岐し、“二系統の指令”が同時に存在していた。

現場班は真の指揮者を把握できず、作戦は意図的に混乱させられていた。


玲は短く息を吐き、右手でこめかみを押さえた。

「……やはり、内側からの分断工作か。」


その声は低く、重く、そして疲れていた。


隣では橘奈々がタブレットを操作しながら、報告書の続きを確認していた。

彼女の指が止まり、玲の方を見上げる。


「これが十年前の倉庫事件にも影響していた可能性が高いです。

黒沢一誠が単独行動を取ったのも、この“二重命令”が原因だったかもしれません。」


玲は手元のカップを取ると、冷めきったコーヒーを一口だけ含み、静かに机に戻した。

目は画面から離れない。


「――つまり、黒沢は利用された。そして今も、その“上層の誰か”が動いている。」


奈々の肩がわずかに震えた。

「玲さん……この情報、報告に上げますか?」


玲はしばらく黙り込んだまま、椅子の背にもたれた。

蛍光灯の反射が、彼の瞳に白く滲む。


「まだだ。確証が足りない。……動かすなら、影班を完全に掌握してからだ。」


そのときだった。

机の端に置かれた通信端末のランプが、かすかに点滅した。


奈々が即座に画面を覗き込む。

「……未登録の暗号信号です。発信源、不明。」


玲はゆっくりと立ち上がり、黒いコートの襟を正した。

モニターに映る解析データをじっと見据え、低く呟く。


「……やっぱり見てるな。上層部の“目”が。」


彼の声は、静かに、しかし確実に空気を震わせた。

その瞬間、室内の蛍光灯が一瞬だけ明滅する。


まるで、見えない誰かが――返事をしたかのように。


【2025年10月13日 午後8時42分】

【都内 第三区庁舎・特別監査室 会議フロア】


壁一面に設置されたモニターには、衛星映像と現場写真、そして解析済みの報告ファイルが同時に表示されていた。

低く唸るサーバー音が、静まり返った室内の空気をさらに張り詰めたものにしている。


黒沢一誠は、分厚い封筒を机の上に置いた。

泥の跡がうっすらと残るそれは、倉庫跡地で掘り出した防水ケースの中にあった資料だった。


玲が視線を上げる。

「……現物か。」


一誠は無言で頷き、封筒から数枚の書類を取り出して机の上に並べた。

それは、影班の作戦指令書――だが、奇妙なことに、署名欄が二つ存在していた。


奈々が目を細め、即座に解析用スキャナを起動させる。

「やっぱり……命令系統が分岐してた痕跡があります。

上層部の“別系統指令”が、影班の正式ルートに混線していた形跡です。」


玲は腕を組んだまま、低く唸るように言った。

「黒沢、お前が単独行動を取った理由……これか。」


一誠は深く息を吐き、椅子に腰を下ろす。

「当時は命令のどっちが本物か分からなかった。

だが、あの“倉庫事件”の直後、影班の通信記録がすべて消去されていた。

――まるで、最初から真実を残す気がなかったみたいにな。」


室内の空気がさらに重くなる。

沙耶が沈黙を破った。

「……つまり、誰かが意図的に、班同士をぶつけたってこと?」


玲はゆっくりと頷く。

「そうだ。そして、その“誰か”は今もこの中枢にいる。」


奈々が端末を操作しながら、画面に新しいウィンドウを開く。

「上層の指令ログを追跡すれば、発信者を特定できるかもしれません。ただし……」


「リスクは高い、か。」玲が言葉を継いだ。


一誠は目を閉じ、静かに口を開いた。

「構わない。もう逃げる気はない。あの夜、守れなかったものを……今度こそ終わらせる。」


玲は彼をまっすぐ見据え、短く頷いた。

「――分かった。黒沢、正式にチームに復帰しろ。

これから先は、“倉庫事件の真相”を掘り起こす作業になる。」


沙耶が小さく息をつき、奈々は黙ってデータの複製を開始する。

外では雨が降り出していた。

窓を伝う雨粒の音だけが、静かに部屋を満たしていた。


その音の向こう――まだ誰かが、監視している。

玲はわずかに目を細め、呟いた。


「……これが、十年前から続く“影”の終着点、かもしれない。」


【エピローグ】


夕暮れのロッジ。窓の外には、柔らかなオレンジ色の光が差し込み、森の緑を淡く染めていた。


朱音はスケッチブックを抱え、静かにリビングの中央に立っている。目にはわずかな涙が光り、けれどその顔は柔らかく微笑んでいた。


「玲お兄ちゃん……ありがとう。本当に、ありがとう……」


その言葉に、玲は静かに微笑み、机に置かれた資料とコーヒーカップから目を上げた。


奈々もそっと隣に立ち、玲の手にそっと触れる。


「玲……本当に、ここまでよくやったわね」


玲は軽く頷き、穏やかな声で答えた。

「まだ、終わったわけじゃない。でも、みんなのおかげでここまで来られた」


沙耶も遠くから穏やかに微笑む。

「玲……あなたがいるから、みんなが安心できるのよ」


窓の外、森を渡る風がそよぎ、長い戦いの余韻を静かに運んでいく。

消された記録も、封印された記憶も、確かに光を取り戻した。


そして、朱音は小さく手を振りながら、玲お兄ちゃんに寄り添った。

「これからも……ずっと一緒にいてね」


玲は彼女たちを見つめ、深く息を吐いた。

「もちろんだ。これからも、ずっとだよ」


ロッジの中には、かすかな笑い声と、静かな安堵の空気が満ちていた。

真実を追う者たちの努力が、確かな光となってここにある——そう、誰もが感じていた。


【エピローグ】


【時間】2025年10月14日 夕方

【場所】玲探偵事務所・室内


玲探偵事務所の静かな室内。机の上には、未整理の書類や調査ノートが散らばり、かすかにコーヒーの香りが漂う。窓から差し込む夕陽が、部屋の壁を柔らかくオレンジ色に染めていた。


朱音は小さな手でスケッチブックを抱え、机のそばに座る。描き終えた絵を眺めながら、ふっと息をついた。


「玲お兄ちゃん……本当にありがとう」


玲は椅子に腰をかけ、朱音に視線を向ける。冷静な顔の奥には、長い戦いの疲労と安堵が同時に漂っていた。


「まだ終わったわけじゃないけど……でも、ここまでよく頑張ったな」


奈々も隣に座り、微笑みながら玲を見上げる。

「玲……本当に頼もしかった。ありがとう」


朱音はスケッチブックを抱きしめ、微かに笑う。

「これからも、ずっと一緒にいてね。玲お兄ちゃん」


玲は深く頷き、やわらかい声で答えた。

「もちろんだ。ずっとだよ」


窓の外に目をやると、森を渡る風がそよぎ、長い戦いの余韻を静かに運んでいく。

消された記録も、封印された記憶も、こうして光を取り戻した。


室内には、かすかな笑い声と穏やかな安堵の空気が満ちていた。

玲探偵事務所に、久しぶりの平穏が訪れていたのだった。

【2025年10月14日 午前9時32分】

【玲探偵事務所・執務室】


玲は資料に目を落としていたが、手元の端末が軽く振動した。画面を見ると、送信者は――黒沢一誠。


玲へ


先ほど、倉庫跡地での調査が終わった。防水ケースの中身、無事に確認できた。君たちに報告したかった。


状況は想像以上に複雑だ。影班の指揮系統が二重に存在していたこと、上層部の権力闘争に巻き込まれていたことも明らかになった。


だが、ここまで来れたのは君たちのおかげだ。朱音も無事で、本当に安心した。


詳しい話は、後で直接会って伝える。

このメールは、とりあえずの報告だ。


黒沢一誠


玲は画面を見つめ、軽く息を吐く。

「……やはり、一誠も動き出したか」


その時、朱音が執務室に駆け込み、小さな声で呼んだ。

「玲お兄ちゃん、メール来てた?」


玲は微かに笑みを浮かべ、頷いた。

「うん、ちゃんと届いてる。これで次の一手が読めそうだ」


奈々は静かに端末を覗き込み、玲に尋ねる。

「玲、黒沢さんから?」


玲は画面を見返しながら、淡く頷く。

「そうだ。事態はまだ落ち着いていないけど、一歩ずつだな」

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