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09.花火とサプライズ

 色鮮やかな野菜を使った前菜から始まり、かぼちゃの冷製スープ、真鯛のポワレ、レモンソルベ、和牛のステーキ……何を食べてもおいしいものばかりだった。

 デザートに『Happy Birthday 』と書かれたチョコが乗った、いちごのタルトが運ばれてきた。

「うわ、すごい!え、これも用意してくれてたの?」

「お店の人にお願いしといたんだ!いろは、改めて誕生日おめでとう!」

「ありがとう!」

 お酒の効果も相まってか、とろけそうな表情のいろは。喜んでくれているのが分かって、本当に嬉しい。

「このケーキ、すごくおいしい!」

 いろはがあげた感動の声を聞いていた店員さんが答える。

「ありがとうございます。こちらのケーキは、『Chanceシャンス』というお店で作ったものを、お出しさせていただいております。」

「ここのお店で作ったケーキじゃないんですね!お料理もすごくおいしかったです!」

「ありがとうございます。もしよろしければ、『Chance』の割引券を私から誕生日プレゼントとしてご用意させていただいてもよろしいでしょうか?」

「え、良いんですか?嬉しい!ありがとうございます!賢太君、今度行こう?」

 いろはの目がキラキラしている。なんて微笑ましいんだ。

「いいね、行こうか!」

 いろはは、デザートも食べ終わって一段落しながら、紅茶に手を伸ばした。

 その時、海の方が騒がしくなった。そろそろ、花火が始まるようだ。空を仰ぐいろは。喧騒から外れた静かなテラスで、胸に響くような大きな音と、夜空を彩る華やかな光を眺める。

「うわぁー……すごい……」

 空に釘付けになるいろは。

「もう少し近付いて見ていいみたいだよ。」

 僕はいろはに声をかけて、席を立ち、いろはの手を取る。テラスの、手すりがある場所まで手を引いて横に並んだ。

「打上花火、久しぶりに見たなぁ。」

「デートでは初めて?」

「うん。賢太君は?」

「俺も初めて。」

「きれいだね……」

「うん、ねぇいろは。」

「うん?」

 花火に見とれていたいろはは、呼ばれて僕を見た。

「これ、プレゼント!」

 そう言いながら、僕はいろはの首にネックレスをつけようと近付いた。甘いいい香りが鼻をくすぐる。においをかいだだけで、こんなにドキドキするなんて……。あれ?手が震えて、うまくつかない。あれ?

「え?」

「なんかさ、カッコつけようと思ったんだけど……緊張して手が震えてつけらんない。」

「ふっ……あははははは!もー!めっちゃドキドキしたじゃん!」

「俺のがしてた!」

 対面してつけるのをあきらめた僕は、いろはにネックレスを見せる。

「あ、ラリマーだ!」

「うん。トリロジーネックレス。3つついてるでしょ?」

「ホントだ!トリロジーのトリって、トリプルのトリ?」

「んー……分かんないけど、そうじゃないかなぁ?」

「めっちゃキレイだし、めっちゃかわいい!賢太君ありがとう!」

「いや、でもほら、完全に失敗しちゃったから悔しい。」

「じゃあ……留め具見ながらできるように後ろ向くから、賢太君がつけて?」

 そう言いながら、いろはが僕に背中を向ける。その動作すらかわいすぎて、抱きしめたくなるのを堪えながら、ネックレスを首にかけ、留め具を止めようとする。

「ふふ……ホントだ。震えてるのわかる!」

「言わないでくれ……」

 留め具を見ながらなのもあって、今度は震えていてもちゃんとつけられた。

「できた……ってか、このやりとり公共の場でやるのってちょっとアレだよね。」

 急に不安になってくる僕。

「大丈夫。みんな私たちなんて見てない。花火に夢中だよ。」

 周囲を見渡すと、他の客たちも皆テラスの手すりに身を預けて、花火を見あげていた。

「ホントだ……良かった。」

「賢太君、大好き。」

 安心する僕が気を抜いた瞬間、いろはの腕が首にまわり、耳元でささやかれた。その後すぐ、頬に柔らかい感触がした。

「え。」

「しー!」

 口元に人差し指を立て、ウインクをしながら僕を制するいろは。待って。脳内処理が追いつかない。深呼吸して、言葉を絞り出す。

「待って、酔ってる?」

 おい。こんなの、少しも気が利いた言葉じゃないじゃないか。ムードも何もない。

「酔ってるのかな?わかんない?でも、そうしたかったから。賢太君、やだった?」

 少し不安そうに僕を見るいろは。はい、降参。

「……んなわけない。めちゃくちゃ嬉しすぎて、今もうね、叫びたい。そしてさっきのウインクもかわいすぎて……暴れたい。」

「ばか!!からかってるでしょ?もうしてあげないよ?」

 少し顔を赤らめて、細い目で僕を見るいろは。

「もう大丈夫。落ち着いたから、何回でもして?」

 絶対またしてほしいので、一瞬で真顔になってアホなことを言ってやった。

「ほんとばか!」

 2人の笑い声を、大きな花火の音がかき消していった。

 

 

 

 ねぇいろは。あの時贈ったトリロジーネックレスには、意味があるんだ。こんなこと、付き合ってまだ2ヶ月しか経ってない僕が君に言うのは、重たいかなって思って、言わなかったんだ。

 僕も大好きになったラリマー。それが三つ並んだ「トリロジーネックレス」はね、並んだ三つの石に、それぞれ過去・現在・未来の意味があるんだ。

 だからね、トリロジーネックレスを贈るということは、「あなたの過去も現在も未来も愛しています」という意味があるんだ。

 僕は……過去も、現在も、まだ見ぬ未来も、全ていろはを大切にしていきたいという願いを込めてこのネックレスを贈ったんだ。

 もちろん、ラリマーの持つ意味を考えると、僕のことも幸せにしてほしいという願望も含まれていたりするんだけどね……。




 同じ時間を過ごせること、同じ話題で笑い合えること、それだけで僕は本当に幸せだった……って、もう戻れないから……今本当に思うよ。

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