表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/39

05.朝の散歩

 花火大会の日、朝10時に駅で待ち合わせた。そわそわして、30分前に着いてしまった……。あー……なんか、遠足が楽しみすぎて仕方ない小学生みたいだ。待ち合わせ場所の、駅前にある時計塔の下で、今日のデートのイメージをしながら忘れ物がないかを念入りにチェックしていると、スマホが震えた。

『賢太君おはよう☀️なんか楽しみすぎて…早く着いちゃうかも!』

 いろはからのLINEに、思わずにやけてしまった。

『おはよう。めっちゃ嬉しい!俺なんてもう着いて……』

「あ、賢太君!」

 打っている途中で、声が響いた。

「うわああ!びっくりした」

 まさかこんなに早いとは思っていなかった僕は、情けない声を出してしまった。

「ね?早く着いちゃったでしょ?びっくりした?」

「返事返そうと思ってたところだったから、めちゃくちゃびっくりした……」

「ごめんごめん!今日いい天気だね!花火、きれいに見えるかな?」

 いろははそう言って僕に微笑みかけながら右手で太陽を遮った。ああ……もう太陽よりもいろはが眩しい。

「絶対きれいに見えると思うよ!約束の時間より早いけど、もう行こっか!」

 いろはの手を取って、並んで歩き出す。電車で熱海の手前、湯河原まで行く。湯河原駅から15分程歩いたところが僕の実家だ。

「わー!私、海好きなんだよね!湯河原って潮風が気持ちいいね!」

「15分くらい歩くと海が見えるよ。2人ともフライングして早く来たから時間あるし、散歩でもする?」

「え、いいの?」

「うん。ちょうど公園が近くにあるから、少し散歩してから行こうか。」

 微笑むいろはの手を引いて、海浜公園に向かって歩き出す。7月の朝の日差しが僕たちを焦がし、少し汗ばむ。それでも頬をくすぐるように、心地よい潮風が吹いていた。

 朝の海浜公園は人が少なくて、ゆっくり散歩を楽しむにはちょうど良かった。公園のデッキを海沿いに歩いていくと、犬の散歩をしている老夫婦が目に止まった。

「あ……」

 いろはが不意に足を止めた。

「どうしたの?」

「柑梨ちゃん……お散歩一緒にしたかったなって思って。」

「確かに……連れてきてたら、柑梨も喜んだだろうな。」

「わんちゃんとお散歩するって、夢だったんだ。」

「そうなの?」

「大好きなのに、今まで一度もわんちゃん飼ったことなくて。」

「家族にわんこ嫌いな人がいたとか?」

「うーん……みんな嫌いではなかったとは思うんだけど、飼ったことがないとさ、自信なくて。」

「しつけとか大変だもんね。俺、かわいがることしかしてない気がする……」

「うんうん。しつけもだけど、命を預かるって思うとなんか踏み切れなくて……めっちゃ飼いたかったんだけどね……悩みとか聞いてくれそうだよね。」

「犬ってホントに感情読めるんだよ。俺が親に怒られて凹んでる時とか、ずーっと寄り添っててくれたし、親が俺のこと怒ろうとした時とか……親に吠えてくれてたな。」

「え……柑梨ちゃん、賢太君のお姉さんじゃん。」

「んー……お姉さん???なんつーか、相棒って感じかな?」

「相棒……なるほど。でもなんか、守ってくれててお姉さんな感じする!あー……私のことも好きになってくれるといいな!」

「柑梨は優しくて賢い子だから、すぐいろはにも甘えると思うよ。」

 率直な意見を言うと、いろははかわいい笑顔を僕に向けた。

「賢太君、海連れてきてくれてありがとう!やっぱり緊張してきちゃってたけど、海見てたら緊張なくなっちゃった。」

 突然の天使降臨に、僕は魅了状態に突入した。そして、そのままいろはを抱き寄せた。

「緊張なんてしなくても大丈夫。いろはは、俺にはもったいないくらいの、最高の彼女だから。」

 そのまま耳元でささやいた。

「……賢太君、ありがと。でも、なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。」

 いろはの言葉で我に返った僕は、いろはの肩に手を置き、体を離す。

「あ、ごめ……」

「ふ、あはははは!」

 思わず吹き出した、という感じのいろはにつられて、僕も笑い出す。

「家、すぐそこだしそろそろ行こっか!」

 2人でたくさん笑ったから、僕の緊張も少しほぐれた。できたら今日は散歩もさせてあげたい……なんて思いながら、海浜公園を後にした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ