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04.僕がアベルになった理由~トラウマ~

お久しぶりです。

忙しくてなかなか更新できませんでした(^^;

変な時間目が覚めたので、久々に執筆しました!

少しずつ更新していきたいと思いますので、お付き合いいただけると幸いです!

 また昔の記憶の夢を見た。あれは、僕の目がまだ見えていた頃のこと。

 中学生だった頃の賢太は、僕をいろんな場所に連れていってくれた。僕の特等席は自転車のカゴ。賢太は、僕をそこに乗せていろんな公園に連れてってくれた。僕は自転車のカゴに前足をかけて風を感じるのが好きだった。パタパタと風になびく耳も、そこから見える景色も大好きな賢太とのお出かけも、全部全部大好きだった。

 広い芝生のある公園に連れていってもらった日のこと。天気のいい夕方。5月のことだった。公園の周りは一面の田んぼになっていて、植えられたばかりの苗が弱々しく初夏の風になびいていた。公園の周りの道を賢太と歩いていた時、不意に賢太の手から僕のリードが離れた。賢太はスマホに夢中で気付かない。

 おりこうな僕は、賢太の隣をちゃんと歩いていたんだけどね、突然……僕の横をちょうちょが横切ったんだ。そんなの、追いかけちゃうじゃんね。

 僕は、ちょうちょを賢太に捕まえてあげようって思って近づいたんだ。ゆっくり、ゆっくり、ちょうちょにばれないように。今だ!

 ちょうちょに飛びかかった僕。めいっぱいジャンプして、ぱくってくわえようとしたけど、ちょうちょは上手に空を飛んで……逃げられちゃった。惜しい!そう思った瞬間……うわあああああー!!体が一気に落ちていく感覚が僕を襲う。必死で地面を見ると……迫ってくる泥の沼。とっさに目をつぶって、もうダメだ!と思った時、体がビクッとなって目が覚めた。

 

 あーびっくりした……

 昔、本当にあったことだけど、また夢に見るとは思わなかった。

 あの後、僕は顔面から田んぼにダイブした。スマホを見ていた賢太は、突如聞こえた『バシャバシャ』という、僕が田んぼで溺れる音で振り向いた。

 「え、え!?なんで!?」

 最初は驚いて、困惑している様子だった。すぐに僕のそばに駆け寄り、

 「柑梨、大丈夫か?」

 そう言って僕に手を伸ばして助け出してくれた。僕は必死でしがみついた。

 「血統書つきのわんこなのに……なんてみすぼらしい姿に……って、おまえ、なんで田んぼに自らダイブしてんだよ……ぷっ!あははははは!」

 泥だらけの僕の体には、泥だけじゃなくて道路の砂もこびりついてより一層汚さを増していた。それにしても、悔しい。そんなに笑わなくても良かったじゃないか。

 もう目は見えなくなってしまったけれど、目が見えていた時間がある僕は、昔の記憶を映像として夢に見ることがある。この夢は、僕のトラウマの夢だ。僕の自慢のお鼻に泥が少し入って、本当に呼吸するのがつらかったんだ。

 夢からさめた後も、あの時の全身に泥がつく不快さと、賢太に笑われたことを思い出したので、寝ている賢太のほっぺに肉球を押し付けてやった。……ただの八つ当たりだが。

 「んー……いいにおいする」

 ふがふがと寝言を言いながら僕の足のにおいをかいで喜んでいた。八つ当たりじゃなくてご褒美だったみたい。

 あきれた視線を送りながら、賢太に体をぴったりとくっつけ直し、再度眠りについた。

 

『ピピピピピピピ!』

 突然音が鳴ったので、驚いて飛び起きる。

 賢太!起きて!お散歩行くんでしょ!

 僕は、一心不乱に賢太の顔をなめ続けてやった。

 「んんー……やめてぇー。あー……でもしあわせー。」

 そんなことを呟きながら、賢太が僕を抱きしめる。尻尾がついつい動いてしまう。朝起きて賢太がいてくれて、僕だって幸せなんだからね!

 すぐに着替えを済ませた賢太は、僕を抱き上げて階段を降りた。

 ママが起きている音がする。バタバタ動いて、賢太に「降ろして」という意思表示をすると、優しく床に降ろしてくれた。すぐにママのそばに駆け寄って、おはようの挨拶をした。ママは、僕を優しくなでながら賢太とお話していた。その会話の中に、『散歩』という言葉が聞こえた時、嬉しくて嬉しくて、ついついその場でくるりと回ってしまった。

 僕のリードの準備をしている賢太に体当たりする。

 「うお、びっくりした。よしよし、お散歩行こうな」

 やったー!!賢太は、僕の首輪にリードをつけてくれた。

 「いろはー?散歩行ける?」

 「行けます!」

 間髪入れずに返事が返ってきて、僕の期待も高まる。あかりちゃんの部屋のドアが開く音が聞こえて、昨日かいだいい匂いが僕の鼻をくすぐった。

 いろはー!おはよー!

 僕は、二本足で立っていろはにもおはようの挨拶をした。いろはは、喜びであふれた匂いをさせて、僕をたくさんなでてくれた。

 いろはに見とれていた賢太は、おはようの挨拶すらせずに突っ立っている。

 「あんま見ないでー!日焼け止めくらいしかついてないから恥ずかしい!」

 少し照れているいろはの声がした。

 「え、そうなの?朝イチのいろは、かわいすぎて天使かと思った」

 天使ってなんだろう?よく僕も賢太に天使って言われるから、かわいいって言葉とおんなじなのかな?

 そんなことを思っていると、『行こ?』という言葉が聞こえたので、僕はご機嫌になる。

 玄関の扉を開けてもらうと、朝の匂いがした。遠くから流れてくる海の匂い。まだ新鮮な緑の匂い。朝の匂いが僕は大好きだ。

 今日は、いろはが僕のリードを持ってくれるみたい。

 「え、持っていいの?初めてだから不安だよぉ……」

 不安そうな匂いと、僕を守ろうとしてくれている匂いが伝わってきた。

 大丈夫だよ。僕、お散歩上手だからね!僕がいろはを守ってあげるんだから!

 昨日からずーっと楽しみにしていた、朝の散歩が始まった。

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