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34.クリスマスプレゼント

 それから三年後の二月三日。

「「おぎゃあああああ。」」

 神奈川県にある大学病院で、元気な産声と共に男の子と女の子の双子が誕生した。母親は双子を愛おしそうに抱き、無償の愛情を注ぐ。出産に立ち会った父親は、涙を流しながら最愛の妻と我が子に駆け寄り、喜びの声をあげた。

「おめでとうございます。男の子と、女の子の双子の赤ちゃんですよ。」

 赤ちゃんを取り上げた助産師が、微笑みながら伝えた。

「……すげえ。頑張ってくれてありがとう!立ち会えて本当に良かった。俺、これからもっともっと仕事も子育ても頑張るから!ずっとずっと大事にする。」

「ありがと。これから、パパとママだね。お兄ちゃんと妹なのかな?それとも、お姉ちゃんと弟?」

 疲労の色をにじませながらも、幸せな疑問を抱く母親。

「お兄ちゃんと、妹ですね。」

 助産師がその疑問に優しく答えた。

「お兄ちゃんと妹かぁ。仲良しになるといいな。ケンタ、妹のことしっかり守るんだぞ。」

 父親が男の子に話しかける。

「ねえ。名前!ケンタって!!」

「それしかないだろ。強くて、かっこいい男になってもらわないと。それ以上の名前、いろちゃんは思いつくの?」

「そう……だね。竜司君、ありがと。なんか呼ぶの複雑だけど、嬉しいし、守りたい気持ちが強くなった。漢字は『石上』に合う画数考えないとね。男の子が『ケンタ』なら、女の子の名前ね、『カンナ』にしたいな。」

「おお、かわいい名前だね。あ……いろちゃん、ごめん。疲れたよね。休んでからまた決めよう。俺も調べてみるよ。」

「うん……ありがと。」

 疲労困憊の様子の母親は、個室に戻って休むことになった。

 


 次の日の個室。新米の母親と父親は我が子の寝顔を見ながら幸せそうに話す。

「俺、名前の漢字調べたんだけど、お兄ちゃんはいとへんに旬って字に大きいって字にして『絢大』はどうかな。」

「画数はクリア?」

「うん!けっこういい!見て?」

 スマホの画面を、父親が誇らしげに見せる。

「ホントだ。名前の意味は?」

「『絢』って字はさ、いろんな経験を通して、彩り豊かな人生を送ってほしい、魅力的な人になってほしいって願望。『大』は、賢太君みたいに、懐が深い大きな男になってほしいから。」

「素敵だね。かっこいいお兄ちゃんになりそう!」

「俺たちの息子なんだから、そりゃそうだ。カンナの方はさ、先になんでその名前がいいのか聞いてもいい?」

「単純にかわいいからもそうなんだけど、賢太君が昔飼ってたわんちゃんの名前でもあるんだ。なんかね、男の子がケンタだったら、離したくなかったの。」

「なるほど。絢大もきっと大事にするだろうな。」

「うん!かっこいいお兄ちゃんだから、絶対守ってくれる。」

「うん。俺たちも大事にしていこう。『カンナ』の名前なんだけどさ、しおりって漢字に、奈良の奈、で『栞奈』がいいかなって。『栞』は、道しるべの意味があるから、みんなの道しるべになってほしい、『奈』って字はさ、漢文だと疑問を表すから、いろいろなものに興味をもって、自分の気持ちを伝えられる人になってほしい、あとは、大きな木の意味もあるみたいで、芯のある強さをもって、元気に育ってほしい、っていう願望。」

「すごく素敵な意味だね。竜司君、たくさん調べてくれてありがとう。」

「もしいろちゃんが、もっと違う字が良ければ、言ってね。」

「竜司君がね、私の気持ちをちゃんと考えて名前をつけてくれていることが分かるから、漢字は竜司君に決めてもらいたかったんだ。だから、嬉しい。ありがとう。」

「……うん。俺、一生みんなを大事にするから。」

「ありがとう。みんなで幸せになろうね。」



 柔らかい日が差し込む穏やかな午後、大学病院の個室の様子を天界から覗いている影。満足そうな顔をして、映像を見るのをやめる。

「神様、なんでどや顔してるんですか?」

 隣で覗いていた狛犬が、首を傾げながら不思議そうにつぶやく。その声の直後、狛犬の隣に麒麟が現れた。

「あーあ。神様、甘いんじゃないですか?」

「何のことじゃ?」

 神はとぼけた顔をして二人を見た。

「時を止める行為は重罪ですからね。消滅って言ってたくせに……。」

 麒麟が追い打ちをかける。

「あいつらは綺麗な魂だったからのう。消滅させるにはもったいないじゃろ。それにな、三年間は存在を消滅させたぞ。嘘はついておらぬ。それに、あいつらは、離してはいけないと思ったんじゃ。まあ、あの二人が結婚するかどうかは、さすがに賭けではあったけどな。」

「そういうこと?あの夫婦の奥さんは、あのしつこい男がこだわってた子?」

 狛犬が思い出したように疑問を口にする。

「そういうことじゃ。」

「でも逆に、他の男との結婚生活見せられるって地獄じゃないの?」

「私もそう思います。それが彼への罰ということですか?」

 狛犬の疑問に麒麟も賛同し、神に疑問を投げかけた。

「いや、そんなことはせぬよ。あやつらの記憶は封じてあるからのう。これからどう生きるのかも、全てはやつら次第じゃ。まあ、あれじゃ。お互いのことばっかり思いやり続けるあやつらが気に入ったんじゃ。だから、いいものを見せてもらったお礼の『くりすますぷれぜんと』とかいうやつじゃ。」

 狛犬と麒麟が顔を見合わせる。

「神様……クリスマスって十二月ですよ。今何月か分かってます?」

 麒麟が冷静に突っ込みを入れた。呆れて、ため息をつきながら。

「なに!?そうなのか!くりすますとは、十二月だけのものなのか!知らんかったぞ。」

「うそでしょ。あいつらが誕生したの、昨日でしょ!節分じゃん!」

「あー……確かに。昨日地獄の鬼どもが天国の住人たちに豆をぶつけられて痛いと泣いておったな。」

 天界に響く大きな笑い声。

 綺麗な魂たちが、次の人生では大切な人たちと幸せに、長生きをするようにと神は祈った。

お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!

思いの外多くの方が読んでくださっていて、とても嬉しかったです。

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