表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

32.悪戯

 一時はどうなることかと思ったが、アベルが天界に戻った後、何事もなかったかのように、止まっていた時間が動き出した。

 周囲の人々が、空を仰いで歓声をあげている。みんな、僕からのいろはへの最後のプレゼントに気づき始めたみたいだ。

 僕は、穏やかな気持ちでいろはと竜司のそばに向かった。2人は、世界が止まる前と同じ、絶妙な距離感でリフトに乗っていた。

「あ……いろちゃん、見て。雪……。」

「ホントだ。ホワイトクリスマス……だ。」

 2人も雪に気づいたようで、少し嬉しそうに話していた。

「イルミネーションもだけど、雪もすごくきれいだね……今日寒いから、もしかしたらって思ってたけど、本当に降ったね。」

「わー……今日風も冷たいから、リフトの上だと余計に寒いね!でも、空気が澄んでいるからかな?すごく綺麗。」

「じゃあ……もっとくっつこっか?」

 竜司は、リフトに乗ったまま座る位置を少しずらし、少し照れた表情を浮かべながらいろはにぴったりくっついて寄り添った。

「……。」

「いろちゃん?」

「……はい。」

「なんで敬語?」

「え……なんか……竜司君近くて……ドキドキした……から?」

「そっか……いろちゃんが俺にドキドキしてくれるの嬉しいな。」

「でも、こうしてるとあったかいな……」

「うん。俺もあったかいし、幸せ。」

「竜司君、連れてきてくれてありがとう。」

「俺も、いろちゃんといたかったから……これから、いろんなところに行って、いろんなことして、もっともっとたくさん俺のこと好きになってもらうから覚悟しててね?」

 優しい笑顔でいろはを見た竜司と、固まって竜司を見ながらぼーっとした表情をしていたいろは。

 一瞬、至近距離で二人は見つめあったが、はっとしてすぐに目線をそらした。

 マジで中学生の恋愛日記を見ているレベルでピュアだ。二人がくっつけるように、あの時僕が神に頼んだのは「クリスマスイヴに雪を降らしてほしい」だった。

 もちろん、あの時点ではこんなにうまくいくかなんて分からなかったけど……。それでも、2人が近づくきっかけになったらいいと思って頼んでおいた。

 神は約束通り、この日に雪を降らせてくれた。しかも、僕の降らしてほしいタイミングで。感謝してもしきれない……。

 でも、雪のおかげで二人の距離が縮まったところまでは計算通りなんだけど……あーもう……見てらんね。僕にヤキモチ妬かせるとか言ってたあの宣言はどこいったんだか。

 仕方ないなー……。ヤキモチ妬かすなら、これくらいはしてもらわないとね。

「あっ!昨日賢太君、言ってたんだ。『俺はいろはのサンタだから、明日のクリスマスイヴに、最後のプレゼントを贈るよ』って。」

「もしかしてそれって……」

「「雪……!?」」

 二人の声が重なり、はっとして顔を見合せた。再び至近距離で視線が重なったその時……

 正解!今だ!!

 僕は、竜司が巻いていたマフラーを両手でつかみ、ぐぐっと下に引っ張った。

 物理への干渉、アベルと交渉したから、最後に一回だけできる!どうせなら何かおいしいものを食べたかったんだけどな……でもまぁ……これでいい。

 僕に突然引かれた竜司のマフラーは、一瞬で竜司の首ごといろはに近寄り、その唇を奪った。

 目を丸くして驚いている二人の顔を見ていたら、なんだか僕が笑ってしまった。

 いたずら大成功だ。

「え……。あれ……?なんで……?ごめん。いろちゃん、嫌……だった?」

 竜司が、おどおどしながら、驚いた表情でいろはを見る。固まっていたいろはは、竜司の言葉で我に返って、挙動不審になりながら、質問に答える。

「そんなことないよ……すごくびっくりしたけど……。でも、嬉しいよ。」

 はにかんで微笑む姿が本当にかわいらしい。100点満点の反応だ!

「なんか……今、いきなりマフラー引っ張られて……俺もびっくりした。」

「え!?何それ!?竜司君がしたかったからじゃないんだ……?」

「いや、そんなのずっと前からしたくてたまらなかったよ。さっきも……でも、本当にびっくりしたんだよ。下にがくって引っ張られて、気づいたら……してた。」

 竜司は必死に説明していた。でも、ずっと前からしたかったって、下心だだ漏れだ。

「もー……でも……さ、もしかしたら、これも賢太君……なのかな……。」

「俺も……そう思った……。」

「賢太君、いたずら好きだから!」

「でももし本当にそうなら、認めてもらえたみたいで嬉しい。」

 竜司が呟いた。もちろん認めるけど……もしも僕みたいに、いろはを泣かせたら許さないからな。

「賢太君……」

 いろはは、竜司の言葉に確信を得たように、不意に空を見上げて微笑んだ。

 まるで僕がそこにいるって分かっているように、その目は僕の姿をとらえていた。

「いろは……」

 姿は……見えていないはずなのに……。僕たちは少しの間、見つめあっていた。

 

 

 僕は君のサンタクロース。もう天国からしか君を見守ることはできないけど、誰よりも君の幸せを祈っているよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ