初執筆
まだ夏のしっぽが残る頃、しっぽを勢いよく振りながらここは俺様の庭だ!とでも言ってるかのように走り回るブックを呼んでベンチに腰かけていると、カップルの会話が耳に入った。
「私が浮気したらどうする?」と彼女。
「月に代わってお仕置きする」と彼氏。
「月が綺麗ですね」と彼女2回目。
「夏だから月はおやすみしてるよ」と彼氏2回目。
そのテンポの良さに思わず笑ってしまった。とてもお似合いだ。セーラームーンを知ってる彼氏とおそらく知らないであろう彼女、夏目漱石を知っている彼女とおそらく知らないであろう彼氏。その2人のアンバランスさに嫉妬すら覚える。この僅か2往復の会話で2人を知った気でいる私は3人目だろう。今日はツイてる日だ。そんなことを思っているとブックが帰ってきた。お気に入りのぬいぐるみもしっかりくわえている。流石賢い。お気に入りのおやつを今日は特別に3つあげて足を拭いてあげた。ブックは賢いので帰り道は歩こうとしないから毎回私がお家まで送っているのだ。そうやっていつも通りブックを鞄に入れようとしてるとまたカップルの会話が気になった。
「セーラームーンよりプリキュア派だな~」
あぁなんだ彼女は知っていたのか。この2人は長くないなと3人目の私は思った。