表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
COLOR PALETTE  作者: 猫神くん
エピソード I 【砂上の陽炎】
6/27

第5話『渚の戦いにて』

挿絵(By みてみん)

「着いたな」

 車を海岸沿いの駐車スペースに停めた。雑草が生え茂っていて整備が出来ていないことが一目で分かる。

「では、ボクが車の中から情報を送るんで皆さん、幸運を」

 ネムはゼータからマイクを手渡され、ヘッドホンに取り付けた。ネコガミはマイク付きのイヤホンを耳につけた。

「あぁ、任せとけ」

 ネムは気合のある返事をし、ネコガミと共に砂浜の上を歩き出した。冷たい風が吹いている。もうすぐ冬を迎える頃だ。

「冷え込んでますね……」

 ネムはネコガミの世間話のような会話に頷く。

「このヘッドホンからはコアの検知がされていないっと……ていうことは、この近くにはないと言うことか」

「「こちらの情報によるとその先にある建物内にあるようですね」」

 無線からゼータの助言を聞き入れたネコガミは望遠鏡を生成し、前方を確認した。

「あれは……木造の海の家ですかね……ちゃんと人が住めそうな……」

 しばらく歩いているとネムは何かに気づいた。

「待て、人が居た気配がするぞ」

 砂浜を見ると新しい足跡が残っている。しかも、建物に続いているようだ。

「おい6番、人がいるようだぞ」

「「本当?なら警戒しながら引き続きよろしくお願いします」」

 建物の入り口までゆっくりと近づくと、ドアが少し開いていることに気づいた。二人は顔を見合わせてから頷き、侵入した。

 どうやら人が最近までいたのは確定しているようだ。内装は汚いがある程度は片付いている。

 表側のキッチンのような部屋に入ると、釣り竿と最新型のクーラーボックスが目に入った。さらに、もう一つ部屋のドアに近づく。

「「カラーコアを検知しました」」

 AIからお知らせが耳に流れる。

(……!!)

 驚いた顔をしたネムを見てネコガミが静かに話しかける。

「……どうしました……?」

「……ここの部屋にコアがあるようだ……」

「……マジですか……なら開けてみますね……」

 ネコガミがドアノブを回そうとした……が、鍵がかかっている。

(ならば……力づくで!)

 ネムがドアを蹴りやぶr

「君達ー何をしているのかなー」

「「!!!?」」

 後ろから知らぬ声と同時に『殺気』を感じた二人は振り返りながら防御体勢に入った。

(コイツ……気配がしなかった!)

 そこには軍服を着た狐人が立っていた。

(この服に見覚えが…まさか!?)

 ネムは気づいた。これは『防衛隊』の軍服である。『防衛隊』とは、科学が急発展する前である『旧世界』の自衛隊のことで科学を利用した武器を持ったことによって軍事力が増し、科学が主体の『新世界』に入って勢力を拡大させたこの国の組織だ。政治の崩壊によって消えたと思われたが、なぜかその一人がここにいる。

 すると、狐人が笑顔で口を開いた。

「こういうご時世でも強盗がいるとはねぇ…良かったよ万が一、鍵をかけておいて…」

 その笑顔からも『殺気』が感じ取れる。イデクラの無いネムですらもだ。

 二人は一瞬の隙をつき、低い体勢で狐人の横を通り抜けて家から脱出した。

「ダメだ、防衛隊とはまとも戦えんぞ。奴とはレベルが違う!」

 ネムが喋りながら走ると、突然何かに引っかかって砂浜に転倒した。

「うっ!?」

「ネムさん!?」

 足首を見ると半透明の糸が巻かれていて、それが狐人が持っている糸と繋がっている。……まるでカウボーイのようだ。

「逃がさないよー」

 狐人はゆっくりと近づいてくる。

「誰だお前は!」

 ネコガミが叫ぶと、狐人は一瞬、目を見開いてからまた笑顔で話し出した。

「おっと、たしか公務員は名乗る義務があったな。まぁいい……俺は『防衛隊』所属、『諜報班』、『2等陸佐』のシバだ。」

(まさか、本当だとは……!)

 ましてや『諜報班』は組織の中でも情報が少ないグループであり、都市伝説のようなものであった。『諜報』とはいわゆる、スパイのようなものだ。しかもこの狐人は高めの(くらい)の2等陸佐(中佐)である。

(くっ……このままだとネムさんがやられる……)

 ネコガミはあらかじめ生成しておいた拳銃を咄嗟に腰元のホルダーから出し、シバに向かって発砲した。

「かっ……かわした!?銃弾を!?」

(……よし今のうちに!)

 ネコガミが驚いているうちにネムは一瞬緩んだ糸を足首から外して、素早く手からカードを召喚し攻撃体勢に入った。

 すると、シバが単調な拍手をしながらまた笑顔で話し出す。

「おっ、見事な連携だね。でも君たちがそうするなら、俺も容赦しないよ」

 シバの目つきが変わった。次の瞬間、彼も腰元から拳銃を取り出してレーザー弾を発砲した。

 ネコガミはかわしながら小型ドローンのバリアを展開し、防いだ。

「まずいな……あれは『ディメンションガン』だ」

「な……なんっすかそれ……」

「防衛隊が常備している光線銃だ。博士から聞いた話だが、今撃ったような『単発型』とレーザーのように撃ち続ける『チャージ型』の二種類がある」

「チャージ型を使われたらまずいですね……」

 ネムは説明しながら狙え定めるように前を見つめる。

「……いや、後者はチャージ時間があるからずっとは撃ち続けられない。使ってくれたら逆にチャンスかもな」

 今度はネムがカードをシバに向かって投げ飛ばす。

「おっとっと」

 シバはカードをかわす。

(いやこれは想定内だ…)

 カードがブーメランのように戻ってきてシバに向かって一直線。

(当たれ……!)

 次の瞬間、シバの後方にに半透明のバリアが展開された。

「うっ嘘でしょ……」

「それは強すぎるって……」

 シバは焦ったような顔をしたがすぐ笑顔に戻った。

「ふぅ……君達は思ったよりやるようだね。このバリアを使わせるとは…」

 『防衛隊』の武器や装備はもちろん一級品。防御面でさえ隙を見せない。

 二人は歯を食いしばりながらもまた戦闘体勢に入ろうとする。

 すると、ゼータからの無線が入ってきた。

「「ネムさん!ネコガミさん!あの防衛隊のバリアは一つの方向しか展開できないよ!」」

「本当か……?」

「ならば挟み撃ちですね……」

 ネコガミはナイフを生成しながらシバに向かって走り出す。

(大胆な動き……嫌いじゃない!)

 シバは銃を撃つ、それでもネコガミはかわす。イデクラで簡易な障害物を築き上げながら、背後に回ってナイフを振りかざす。

「ふっ」

 バシッ!

「うぐっ……!!」

「甘いよ!」

 しかし、シバは回し蹴りでネコガミを吹っ飛ばした。

 この間に、ネムはあらかじめ装備しておいたナイフを刺そうとするが、これも蹴り上げで防がれ、ネムは後方に飛ばされる。

「うっ!!」

(コイツ……やっぱ強いぞ……でもネコガミ、今だ!)

 ネコガミはシバに拳銃を一、二発撃った。

「それは効かないよ!」

 シバは振り返りながらバリアで銃弾を防ぐ。

「へへ……『チェックメイト』だ」

「!?」

 ネムの宣言でシバが焦るように反応し、足元を見た。

 そこには砂浜に刺さったカードがあった。

「『お手製手榴弾』だ」

 ネムの『陰陽カード』は、カラモンを排除するために作られた武器である。発動すると簡易的なブラックホールが出現するが、殺傷能力は無い。カラモンのコアを吸い込むことにしか効果がないのだ。

 ……しかし、この研究者の考え方は『無数』だ。地面に刺さったカードは、砂粒を吸い込んで『一点』に集めた。そして、一瞬の高密度と重力で無理矢理閉じ込められた砂粒(エネルギー)は一気に解放され……

(くっ!バリアの展開が間に合わない!)

 爆音と共に砂粒が舞い上がる。

第5話をご一読いただきありがとうございます。ついにアクションのある展開になってきました。謎深い物語の中に戦闘シーンがあると盛り上がりますね!次回もお楽しみに♪(by 猫神くん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ