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COLOR PALETTE  作者: 猫神くん
エピソード I 【砂上の陽炎】
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第3話『全ての人のために』

「なるほど……狼のようなカラモンが居たっと」

「そうだよ……死にかけたよ……」

 思い出したくもない。とっとと報告して寝床に着きたいところだ。

「んで、なんでお前ここまで着いてくるんだ?」

 俺の隣にさっき一緒に行動したネコビトが居た。

「えっ……なんでって……」

 するとネコビトは博士の方を見つめた。博士が食い気味に言う。

「あっすまんすまん。普通に教えるの忘れてた」

 呆れた。声も出ない。

「この小僧は、俺の(おい)だ」

「あっどうもネコガミです。好きなように呼んでくださいネムさん」

 そりゃそうだ。親戚じゃなかったら逆に怖い。でも今の挨拶で腑に落ちないところがあった。

「なんでどっちも『ネコガミ』なんだ?もしかして苗字?名前は?」

「名前はあるっちゃあるんですけど……色々あって特に……」

 話のよると彼は17歳で普通なら学生だが、この世の中ではそもそも学校もやっていけないらしい。そのため外で一人、親戚である博士と裏でカラモンの調査をしていたとの事。しかも10年以上前から。だから自分の名前を忘れたとかなんとか……

「じゃ、ネコガミって呼ぶわ。よろしく」

 俺は挨拶を返すと、さっきの戦闘を思い出して気になったことを聞いた。

「さっき出してた半透明の銃とか粒子みたいなものはなんだ?」

 すると、ネコガミは手から先ほどの見た粒子のようなものを出した。

「あーこれはですね、エネルギーで光粒子を生成して物体を形成しているんですよ。さっきコアを持てたのも、これで支えていたからですね」

(チートじゃん……)

「あっでも、その物体の仕組みとかを理解していないとまともに使えないんですよねぇ。さっきの銃とかも中身を知らないと使えないし、制限あるし。だからチートスキルみたいだけど、案外そんなことないです。」

(心読まれた……)

 博士が入るように言う。

「でもお前にあげたカード、ポーズをとると手元に出現するように設計されてるぞ。まさか、わざわざポケットから取り出して使ってないよな(笑)」

(あっそうだったんだ……てかなんで知ってんの?こいつら家族揃って怖っ……)

 これはこれでミステリアスである。

 少し引いていると、ネコガミが博士の方に話しかけた。

「そういえば博士、それぞれのカラーコアの情報を世界に開放すれば色を認識できるようになるんでしょ?でも、黒と白は見えてるだけで認識できていないわけだから、認識できるようになったって何が変わるん?」

「…………」

 博士が下を見て黙り込む。

 ネコガミの言うこともわかる。何がどう変わるのかが問題だ。

 博士が少し考え込んでから口を開いた。

「そうだなぁ……正直わからない。ならば開放してみよう」

 すると博士は『黒』と『白』の情報が入っているUSBメモリをノートパソコンに挿し、ENTERキーを強く押した。

 ………………

 次の瞬間、目の前が突然ぼやけ始め、強いめまいがした。

「な……に……を」

(うっ…………)

 バタリ……

 力が抜け、俺はその場で倒れ込んだ。





 ………………

 …………

 ……

 目を開けると白い天井が見えた。

「まぶしっ……」

 研究室の蛍光灯が以前より一段と眩しく感じた。情報を整理するために少し時間を置いて、目を擦った。

(……あれ?)

 何かを理解した。俺はもしかしてと思い、急ぎ足で2階の大きな窓と開放感のあるカフェテリアに移動した。

「!!」

 太陽の光が差し込むカフェテリアが一瞬だけ天国だと錯覚した。この光を見たのはいつぶりだろう…… テーブルやイスの輪郭や影が鮮明になり、視力が上がったように思った。いや、これは気のせいだろうか?

 俺は落ち着いてゆっくりとイスに腰をかけて、のんびりしようとしたとき……思い出した。

(あれ?俺が目覚めたとき、なんか横に転がってなかったか?)

 飛び出すように一階に戻って床を見ると、なんか転がってた。……言い方が悪い、ネコガミが倒れていた。

 俺は彼を起こすために肩を揺さぶろうとしたとき、

「無理やり起こすと脳がバグるかもしれんからやめとけ」

 顔を見上げると博士が光景を見下ろしていた。どうやら博士は先に起きていたようだ。でも床に寝かせたまま放置するのは可哀想なので、ネコガミを休憩室のソファまで運んであげることにした。

「話の詳細はあとで聞く。……先に寝かせてくれ」

 俺は博士にそう告げ、自分の部屋に戻ってゆっくり休んだ……





 ――ネムさんとカラーコアを回収してから数日が経った。

「どうだ小僧、この研究所に慣れたか?」

 研究室で座りながらフラスコやビーカーを眺めていると博士に声をかけられた。

「うん、案外快適だよ。(建前)……んで博士、聞きたいことがあるだけど……」

「なんだ?」

「他の色のコアはどうするん?」

「もちろん残りの有彩色(黒と白以外)7種類は回収する。……ただ、全ての色を回収してから開放をすることにした」

「なんで?」

 食い気味に返事した。

「うんと、そうだなぁ……まぁ、『カラーパレット』が完成できないわけだ。極端に言うと例えば、お前が色を覚えているかは知らんが……『緑』は『シアン』と『イエロー』を混ぜると出来ることは知ってるか?これが『色の三原色』だ。一応、『光の三原色』ってのもあるが……これと『緑』のコアは一旦置いておいて、『イエロー』の情報が含まれているコアがない状態で『シアン』の情報が含まれているコアだけ開放したらどうなると思う?」

「あっ……水色の木が……」

 想像するだけでも気味悪かった。

「そうなるだろ。でも有彩色がひとつでも欠けたら、色の数値がバグるから、どうなるかはよく分からないけどな。だから()()()()()()()()に言ったんだ。」

 なんか馬鹿にされた感じがしたが、なんとなく理解はできた。

「まぁ、つまり『色』は三原色と白黒で形成できるという事だ。が、妙に気になるところがある」

 博士が悩み込むのは珍しい。だからか、自分も少し神経質になっている気がした。

「気になるとこ……?」

「そうだ。なぜか俺たちが集めるべき『有彩色』は三原色ではなく、『スペクトル色』……『虹色の七色』だ」

 このあとの話は急激に難易度が増したが、要約すると各地に散りばめられている『カラーコア』が太陽光の白色光を基準とした『赤』『(だいだい)』『黄』『緑』『青』『(あい)』『紫』の7色と、『白』『黒』の無彩色らしい。……バカな自分でも分かる、少し気がかりなとこがある。

「……なんで光の元の色があるのに、それとは別に『白』が存在するんだ?」

「正解。そこが矛盾している。」

 博士が笑顔になるのを確認するとつづけざま話し出した。

「これは『認識』の違いだ。」

「……にんしき?」

「七色の方は『視覚から消えた色』だ」

「……ふむふむ」

「そして白と黒は……『情報から消えた色』だ」

 ……ちょっと何言ってるのかが分からない。

「簡単に言うと前者は色盲同様、ただ単に見えない色で、後者は見えているはずなのに認識災害が邪魔して脳が情報として処理出来ていないということだ。あと…………」

 若干早口になっていて話の後半は聞き逃した。ずっと聞いてたら眠くなりそうである。

「ところで小僧、ちょっと実験台になってくれないか?」

 うわ、嫌な予感しかしない。しかし、今は暇でやることがないので仕方なく付き合ってやることにした。

 了承すると、実験で使われそうなコードが沢山あるヘルメットを被せられた。

「アーユーレディ?」

「ちょっと待って何こr……」

 プチッ……

 目の前が真っ暗になった……デジャブを感じる……





 目を覚ますと、ピンク髪の少年がいた。…………あれ?ピンク?自分は勢いよくイスから起き上がった。

「あれ!?なんで色が!?」

「おっ、ネコガミさん、無事成功したようだね!」

 コイツの名前はゼータ。博士のもとで実験を手伝っているプログラミング等を操れる凄い中学生だ。みんなからは“6番”と呼ばれている。(ギリシャ文字のゼータ『ζ』は第6番目だから)

「てかお前の髪色、ピンクだったとは……」

「博士とネコガミさんは白髪だからあんまり変わってない気がするけど、瞳が綺麗で澄んだ水色をしていてるよー」

 脳をフル回転させて状況を把握する。

 もしかして、自分が寝ている間にみんなあれを被せられたのか。あとこれもゼータが協力して作ったのか……相変わらず凄い。

 自分は研究室のベランダに出て景色を眺めた。空は青く澄み渡っていて、木々の緑が深く染まっており、地面に落下する落ち葉が赤みかかっている。この光景がどこかと懐かしく感じて涙が溢れそうになった。

 ……あとから聞いてみたが、この装置は通常のカラモンのコアから得られるわずかな『色』の情報を回収してそれを脳に流しているらしい。どうやらカラーコアだけでなく、カラモン一体一体に様々な『色』が存在する。我々の予測だが……

 【カラーモンスターは世界から散らばった[編集済]であり、それが凶暴化したものである。】

 とのこと。しかしそのカラモン単体から得られる情報は脆く些細なため、開放するまでは出来なく直接脳に流し込むしかない。……それでも、この装置を作れる目の前の研究者たちを自分は尊敬している。

「感動している場合じゃないぞ。あの機械は量産出来ないからあとのコアを回収しないとな。……全ての人のために」

 先客だったネムさんが手すりに背中を寄り添うように声をかけてきた。自分は少し溢れた涙を手で拭き、微笑んで言った。

「了解です……(笑)」

 すると、博士が1枚の資料をパタパタと扇ぎながらベランダに出てきた。

「キミたち。次のコアの場所がわかったぞー」

「そうか、何色だ?」

 ネムさんが聞き返すと、博士はいつものように微笑みながら言う。

「……『赤』だ」

第3話を読んでくださりありがとうございます。どうです?難しい話だったでしょ?自分も書いててそう思いました…(苦笑)

自分はこういうミステリアスで難解な話が好きなんです。こういう人にはオススメですね!次回もお楽しみに!(by 猫神くん)

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