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COLOR PALETTE  作者: 猫神くん
エピソード II 【時空を駆ける彗星】
23/27

第22話『未来のスイッチ』

 タッタッタッタッ……ガチャ!

「ナル先生!!サキと、シオリが……!」

 スイセイが勢いよく部室のドアを開け、中にいたナルセが目を丸くする。

「どっ、どした……そんなに慌てて…」

「朝から、どこ探しても二人がいません!電話も繋がりません!」

「それはまずいな……至急全員集めろ!」

「はい、呼んできます!」

 夜が明けて土曜日の今日、朝から予定があった研究部だが、サキとシオリの二人が学園に戻っていないことに気づき、集められたカラパレたち。昨日最後まで彼女らと共に行動したネコガミは経緯を説明した。

「ごめん……自分が離れたせいで……」

「仕方ない、あなたは悪くないわ」

 酷く落ち込むネコガミに対して、スイセイが(なぐさ)める。

「で、何か情報はあるか?」

 ネムがそう言うとシバは手を挙げた。

「昨日基地で聞いた噂だが、どうやらバーテックスは『子供』を集めていたらしい」

「子供……?まさかバーテックスが二人を拉致ったってんのか?」

 シバは昨日遅くまで偵察した防衛隊基地の情報を提供した。ネムは思わず目を見開く。

「理由はどうであれ、その可能性は高いわ」

 スイセイは透明なスマホをテーブルの真ん中に公開した。視線がスマホの画面に集まる。

「なんだこれ……『醍醐科学s』……?」

 これは数時間前のサキからスイセイ(あて)へのメールだった。

「なんて読むんだ?だいごかがく……?」

「!!」

 ナルセが何かを閃いて椅子から飛び上がる。そして周りをウロウロし始めた。

「せっ、先生?」

「だいごかがく……だいごかがく……あっ!『第五化学倉庫』!」

 この推理に納得したのはスイセイ一人、頭の中が「?」になったのはカラパレ三人である。

「なんだそれ?」

「第五化学倉庫はバーテックスの廃倉庫よ。この推測が正しければ二人はそこにいるはず」

「なるほど、それにしてもサキちゃんはこのメッセージを……やるなぁ」



 …………数時間前、第五化学倉庫にて

 ………………

 …………

 ……

(……シオリちゃん!起きて!)

(……うん、あれサキちゃん……ここは)

 二人は目覚めると、暗い部屋で手足を縛られた状態になっていた。

(私たち、革命軍に拉致られちゃったのよ!てかお腹減ったし……)

 シオリは下を見てうずむく。

(私が携帯を忘れなければ……)

(いや!結果革命軍の手がかりを掴めたし。大丈夫でしょ!)

 サキは前向きに話す。彼女のポジティブ思考は不安を残さなかった。

(しかも!私のポケットにまだスマホがある!)

(……でもその状態でスマホ打てるの?)

 シオリの言う通り手を後ろに組んでいるため、メッセージを送ることは難しいだろう。しかし……

(ノールックでやってみるわ!)

 ポチポチ……ピコン

 送信音が鳴る。

(ちゃんと送れてるといいけど……)

(モウマンタイ!スイセイちゃんはフレ欄の一番上だったはずだから!)

(あはは……)

 シオリは『……はず』という言葉に信用を持てなかった。……が、サキのことならと彼女を信頼した。

 ………………

 …………

 ……

「誤字ってるけど良く変換できたな!」

「今はそんなこと言ってる場合じゃないわ。場所が分かったのなら支度しましょ」

「スイセイ、あまり焦るな。返り討ちにされるぞ」

「でも!二人が危な……」

 ナルセが真顔で急ぐスイセイを落ち着かせるように止める。

「あぁ……作戦なしに突っ込むのは危ねぇ。まずは準備しようぜ」

 ネムもナルセの考えには賛同した。

「分かりました…………でも先に着替えさせてください」

 スイセイはそう言ってゆっくりと部屋から出ていった。

 ……部屋の中に残ったのには、カラパレメンバーとナルセの四人。男性陣のみが静かに机を囲んだ。

「……さっきシバが言ったことは本当だ。バーテックスは子供を使って実験したことがある。ネムには前言ったことあるな」

 イデクラの話のついでに聞かされた『実験体』のことだろうか。ネムは先日のことを思い出す。

「……なんて非人道的な!」

 ネコガミが感情的になる。

「ネコガミ様、巨大な『組織』ってのはそういうもんだよ。『権力』のためなら何しても良い。その上、その『権力』で都合の悪い物事を隠そうとするんだ。滑稽だろ?」

 シバの言う『組織』とは、バーテックスだけとは限らない。

「……スイセイを一旦退出させるように誘導したのはそういうことか」

 ネムはナルセを見て口を開く。ナルセは一瞬頷いた。

「……シバくんとネコガミくんにも話そう。スイセイは……『実験体』だったんだ」

 シバとネコガミはその場で唖然とする。ネムは目を閉じて顎を引いた。ナルセは続ける。

「バーテックスはプロジェクトにおいて他の次元からエネルギーを得るという目的の前に、まずは次元を繋ぐ扉を探ったんだ」

 もう話の流れからして予想はついていた。

「そして偶然にも『次元を越える能力』を持った子供を見つけたんだよ。アイツらからしたらかなり都合が良かったんだろうな」

「……でも、スイセイはかなり前に逃げ出したんだよな?」

「あ……そうだ」

 ナルセはネムの確認に返事した。

(何かが引っ掛かるな…………分析しよう)

 ネムは思考を巡らせる。



 バーテックスがスイセイを実験体にしていた理由は次元を経由する力を手に入れるためだ。だが、そのスイセイが逃げてしまった。その穴埋めをするために再び子供をさらったと考えることもできる。……否、それは噛み合わない。

 一つ目、バーテックスのような集団が数年以上前に逃亡した実験体を今更集め直すとは思えない。その上、話からすると逃亡後もプロジェクトが円滑に進んでいる様子だった。なおさら、扉の実験には困っていないだろう。

 二つ目、さらわれたサキとシオリのデータによると、彼女のイデクラは次元系の類ではない。そして昨日の部活会議の話をまとめると…………

「二人をさらったのは、バーテックスではない」

「「!?」」

 ネム以外の三人が彼に視線を向ける。

「…………」

「……なるほど」

「なんで分かるんですか?」

 黙り込むシバ、考えて納得を示すナルセ、即座に聞くネコガミ、三人に対して先ほどの分析結果を話した。

 ………………

 …………

 ……

「確かに、それは一理あるな。だとすると、次に挙げられるのは……」

「『革命軍』ですね……」

 革命軍がバーテックスの生徒である二人を人質にして本部を襲う。こっちの方が筋が通っている。

「いかんせんどっちも強敵だな。場所も分かってるし、やることは変わらない」

「頭が切れるなネムくん、さすが研究者だ」

 ネムはナルセの言動に「お前も元々そうだろ」とツッコミを入れようとしたが、雰囲気的に無理なので引っ込んだ。

「スイセイが戻ってきたら作戦を立てよう。突入は人気(ひとけ)が少ない夕方ごろにしようか」

「そんな時間経ってから行ってじゃあ、二人は大丈夫なんですか?」

 ネコガミはシバに疑問を投げかける。

「きっと問題ないよ。メッセージのタイミングと敵対組織的に彼女らの危険はない」

 シバの言う通りである。日が越してもスマホが使える環境と革命軍又はその他の組織が彼女らに被害を加えるメリットは無い。さすが元諜報員ってところだ。

 …………ふらっ



 ――何ひと安心しているんだ?キミは生徒を守ることが目的ではない。



 …………っ!?



 ――忘れるな、自分の分析(意思)を。



 ………………

 …………

 ……さん?


「……ネムさん?」

「……うん?あー大丈夫だ」

 一瞬立ちくらみのようなものがネムに襲ってきた。しかしそれよりも……

「作戦延長だ。時間がない」

 ネムは片方の手を机に差し出して言った。皆が急変したネムを見つめる。

「バーテックスはスイセイを必要としていない……すなわち、装置自体完成しているということだ」

 安心している場合ではない。バーテックスはいつでも俺たちの次元を破壊できる。文字通り相手は『スイッチ』を握っている。

 タッタッタッタッ!ガチャ!

「先生!テレビつけて!」

 さっきと同じように勢いよく戻ってきたスイセイが息切れする。ナルセは彼女の言った通りリモコンで小さな透明液晶のテレビをつけた。

「……速報です。先ほど、政府よりバーテックスとの共同プロジェクトを明日の昼頃に本実装するとのことです……」

読んでいただきありがとうございます。

1話書くつもりが、脅威の6000文字になってしまったので分けることにしました……笑

長いけど頑張って執筆します!

次回も楽しみに!

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