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COLOR PALETTE  作者: 猫神くん
エピソード II 【時空を駆ける彗星】
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第18話『混濁した風花』

「集まったな……」

 カラパレ3人とナルセが中央の机を囲むように座る。

「やっとか、なぜ秘密を話すのを躊躇(ためら)うんだ?」

 シバは対面のナルセに尋ねる。数秒経ってから彼が口を開いた。

「……この知識は、イデクラの大幅強化になる。言いかえれば、誤った扱いは危険だ。特に『君たち』の場合な」

 この文言で、3人はさらにそれが気になった。

「今から言うことを習得したらバーテックスを止められる可能性は高くなる。しかしこれは『最終手段』だ。これを踏まえて聞いてくれ……」





 ………………

 …………

 ……

 この世界に来てから二週間が過ぎ、それぞれが少しずつ生活に慣れることができた。もちろんこの世界にも雪が降るようであり、最近ますます雪の日が増えてきた。ここの科学力を生かせば天候を操作できるかもしれないが、そんなことをせずにわざと降らせるのは、それなりの(おもむき)なんだろう。そして今日も、雪が白く降り積もっている。

 シバとネコガミは新たな戦闘技術を身につけるため、コツコツと訓練をこなしている。簡単な話、それぞれが得意なことを教えれば早い。これならもう、バーテックスに対抗できるか……それはまだ先の話、いや、すぐ目の前まで来ているかもしれない。

 

「はーい!部活会議始めまーす!」

 サキが合図するとみんながそちらに視線を向けた。

 今回の部活会議は、それぞれの調査結果や気がついたことをまとめることがメインである。参加者はネム、ネコガミ、ナルセ、スイセイ、サキ、シオリの六人。もちろん、サキとシオリも、カラパレのことについては知っている。

「あれ、シバさんは?」

「シバさんは防衛隊の潜入で忙しいですって」

 ネムがシバの行方を問うとネコガミが返答した。

「では調査結果に移りまーす。では私から……」

 司会のサキが誰も止められないほどスピーディー(勝手)に話を進める。

「私とシオリちゃんは都市外部の調査について調べたんだけど、少しだけ紛争が増えたぐらいかな……それだけだよねシオリちゃん」

「う、うんそうだね……あと学園都市の出入り規制が厳しくなったぐらい……かな?」

「そうそう!あとそれも!」

「それは少し困ったわね……」

 女子高生三人だけで話を進めているせいか、ネムとネコガミは話についていけていない様子である。

「都市外部……ってなんだ?」

 ネムがやっと会話に入って質問をすると、スイセイが口を開く前にサキが話す。

「都市外部はね、環境が過酷なところなの。ここ学園都市は国で保たれているけど……いやそうでもないかも。けどとりあえず、あそこは国の科学実験場って言っても過言ではないし、それで色々戦ってるの」

(聞くだけで酷いなぁ……この世界の政府はイカれてんのか?)

「規制が厳しくなったし……調査は今回が最後かもね……」

 シオリが静かに提案をした。

「そうだね、外部調査は今回で終わりにしましょう」

 部活会議が順調に進んでいく。しかし、ネムだけは少し引っかかるところがあった。それはシアンのことである。

(シアンのことは良い情報になると思うが、ここで言うと逆に危ないかもしれないな。まだこの情報は控えとこう……)

 しばらく時間が経過しすると、部活会議という情報交換が終わった。

「ネコガミさーん、私たちと一緒に大通り行かない?」

 寮に帰ろうとしたネコガミに、サキが大声で呼びかける。その後ろには、シオリが居た。

「大通り?なんで?」

「そこにはお店がいっぱいあるの、なんか食べに行こ!」

「そうなんだ……暇だし、良いよ」

 ネコガミは学園外についてはよく知らないため、観察本意で着いて行くことにした。

 ………………

「サキさんとシオリさんは自分が男でも抵抗感がないの?」

「抵抗感?全然!むしろあまり男子と喋れなかったから大歓迎!」

「私も……問題ないです…」

(そうか……この人たちは優しいなぁ……自分だったら少し抵抗するのに)

 ネコガミは彼女らの寛大さに微笑む。

 しばらく商店街を見渡しながら大通りを歩いていると、普段無口のシオリが咄嗟に声を出した。

「あっ……部室にケータイ……置いてきちゃった……」

「えっまじか、じゃあ自分が取りに行くよ」

「いやいやいいよー、私とシオリで取りにいくからネコガミさんはまわっててー」

 サキがそう言うとシオリの両肩を掴み、Uターンして学校方面に戻った。

「一人でまわるって言ってもなぁ……」

 ネコガミは時間をかけて見慣れない道を彷徨い続ける。電子のポスター、ネオンの看板、3Dのアニメーション、それらは一層、色を強く感じさせる。

(てか寒いなぁ……一応マフラー巻いてきたんだけど。そもそも雪いつまで降ってんの……)

 トン……

「あっすいません……」

(やべ、よそ見してたら人とぶつかっちゃった……)

「あー大丈夫大丈夫、人が多いとぶつかっちゃうよねー」

 顔を合わせると、スーツコートを着た金髪の男だった。

「その制服……君、ベクトル学園の子だね?」

「あっはい、そうですが……」

 男が声かけてくるとは思わず、少しビックリした。

「あの戦闘訓練してるところだよねー。大変だけど頑張ってね。はいこれ、この通りで一番有名のハチミツケーキだよ」

「えっいいんですか!?ありがとうございます!」

 男は持っていた紙袋からひと切れのハチミツケーキをネコガミに差し出した。そして、「ハチミツケーキ♪ハチミツケーキ♪」と言いながら去っていった。それを見てネコガミはポカーンとした。

(……優しいけど、変な人)

 貰ったケーキを味わいながら歩き始めると、暗くなっていることに気づいた。

(にしても、この大通り長いなぁ……)

 ネコガミはそう思ったが、流石にひとあしが減っている。なんなら、周りに人はいない。きっと学園都市の外側に近づいているのだろう。

(よしUターンして、サキさんたちと合流するか……うん?)

 その時、路地裏のほうから物音がした。しかし、人影はない。ネコガミは不思議に思って、ゆっくりと足を踏み入れる。

(……!?)

 次の瞬間、ネコガミは本能で敵意を察知した。

(……来る!)

 小型ドローン型のバリアを展開する。その時……

 パァン!!

 バリアに銃弾のようなものが当たる。その向こうの暗闇から三人の人影が出てくる。

「おぉ……気づかれたのかぁ……?」

「学園都市の子が一人でこんなところにいちゃダメでしょ……お嬢ちゃん?」

 ネコガミは初めて経験する。『一人』だけの、対人戦を。





「私一人だけでも大丈夫なのに……」

「いいよいいよ!ダイエットになるし!」

「サキ……元々ダイエットしてないでしょ」

「えへっ」

 サキとシオリは笑いながら学校に戻っていった。誰が見ても仲良しの二人だ。

 ………………

「……でどうするんだ?……『黄金の果実』ってやらは」

「!?」

 二人は歩道を並列しながら歩いていると、すぐ横のガレージが閉まっている建物から『黄金の果実』というキーワードが聞こえてきた。

(シオリ……今聞こえた?)

(うん……『黄金の果実』って……)

 『黄金の果実』……バーテックスに潜入するための重要な手掛かりになるプログラムである。

(路地裏からまわって会話を聞こ)

 二人は機敏な動きで狭い路地裏に入り、換気用の窓に近いところで会話を盗み聞きする。

「それはリーダーが使うものだ。俺たちとは関係ない」

「それってどこにあんだあ?」

「たしか……第五化学倉庫にしまってある」

「おいおい。それじゃもう仕掛けられるんじゃねえのか?なんでまだ待機命令なんだよ!」

「確かにそうだが、どうせ俺らにあのプログラムは扱えない。命令を待つべきだ。」

「ちっ」

 男の片方が舌打ちをする。

(…………もしかして『革命軍』!?そして第五化学倉庫って……)

 第五化学倉庫は学園都市内に存在する、バーテックス本社の近くにある廃墟の倉庫である。ちなみに第二十三まで存在する。

(……そうだと思う……早く帰ってみんなに伝えよう……)

(うん……そうだね!)

「おぉい貴様らぁ、ここでなにしてんだぁ?」

 その場から立ち去ろうとした時、二人は革命軍の一人に見つかってしまった。

(やばい……今は銃持ってない!)

「おぉい!こっち来い!」

 男は二人の襟元をそれぞれ片腕で強く掴み上げ、建物内に連れて行く。

「いや!離して!」

 サキが暴れようとも、手が襟元から離れない。そして、二人を床に押し倒す。

「あぁ?誰だこいつら?」

「外で盗み聞きしてた奴らだ」

「おい、ベクトル学園の制服じゃねぇか」

「たしかバーテックスの学校だろ。へへ、いい情報になるかもなあ……おい、催眠能力で眠らせろ!」

「へい!」

 男が二人に近づく。

「いっ……いや……」

「やめて!触らないで!」

 ガチャ……

 奥のドアから人が入ってくる。それに全員が反応する。

「!!」

「おっと、シアンじゃないかあ……遅かったなあ」

「シ……シアン先生!?」

 部屋に入ってきたのはシアンだった。シアンは二人の姿を見て驚く。

「……っ!!ワタシの生徒には手を出さない約束だったはずのでは!?」

「『ワタシ』の生徒、だと?貴様はいつから教師になったつもりだ?あぁ?」

「たとえお前が幹部でも、それは勘違いしちゃいかんぜ?」

 一人が間に入って、怒号する男二人を止める。

「最初に仕掛けてきたのはコイツらだシアン。なら何しても問題ないだろう?」

「っ……!」

「シアン先生……まさか……」

 シアンは二人と目が合わないように目線を()らす。

「おい!ささっと眠らせろ!」

 二人は抵抗してイデクラを使おうとするが、催眠で力が入らない。

 シアンは助けを求めようとする二人の声を無視して背中を向け、近くにあるテーブルに拳を振り下ろす。

 ………………

 …………

 ……

「話が違いますよ!!そもそもなぜ彼らを学園に近づけさせたんですか!?」

 シアンは玉座の男に珍しく怒りをぶつけた。

「それは誤算だったな。しかしもうお前の顔もバレているし、流石に手放せない。仕方ないことだ」

「……っ!」

 リーダーの言うことは『絶対』である。シアンは眉間を寄せながら部屋を出た。

 

「……おのれぇ……レイデン……!」

読んでいただきありがとうございます。

少しずつバーテックスに近づいてきた反面、ハプニングが多発していますね!

ハチミツケーキ男、気になりますし……

では、次回も楽しみに!

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