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Ms.BLACK  作者: 弓塚晋助
一章
9/16

殺意マシマシな暗殺者、一丁!

 王都の数多くの家の屋根を僕は跳んでいる。


 外は真っ暗な夜だが、街灯が機能している影響か。


 もう11時半に差し掛かる時間なのに、人の行き交う大通りに昼の時間帯と同じくらいの人が集まっている。


「そうか、剣国祭が近いからか」


 魔術院の支部で貼ってあったポスターを思い出す。


 そのポスターには剣国祭の内容が書いてあった。


 剣国祭とは、クリフ王国の初代王が激しい戦乱の世にこの国を守りきった偉業を讃える祭りのことだ。


 建国祭ではなく、剣国祭。


 読みが同じで間違えやすく、度々この国に来る旅行者や他の国の王でさえ間違えるという。


 剣国祭は武を競い合う祭りでもあり、四日かけて優勝を巡る戦いを繰り広げる、この国屈指の人気イベントだ。


 そのためか、来賓に他の国の王族や魔術院の幹部が来たりと国内外問わず、様々な人たちが訪れる。


 偶に、三の魔法使いも来るらしい。


(おっと、もうすぐだな)


 王城がくっきり見えてきた。王様のいる部屋が何処にあるのかわからないから、城に入る必要がある。


 城の外からだと立体図は把握できないし、何より誰かに見られて、目立ちすぎても困る。


「入り口は城の正門だけ。窓は沢山あるけど、鍵がかかってるから入れない」


 そう簡単にはいかないか、と思いながら思案する。


 王が住む居城はどの入り口も騎士が在住していて、入ろうとすれば見つかる。


 見つからないためには、侵入しかない。


「アナライズ、セット」


 僕は魔法を発動させる。


 手には三重の魔法陣のようなものを纏っている。


 僕は拳を城の壁目掛けて打ち込んだ。


 シーーーン


 音はしない。 

 

 魔法で音を未来に飛ばしたからだ。


 飛ばした音は無くなった訳ではないから、10分後には音がこの場所に戻ってくるだろう。


 破壊した壁から城の中に入る。


 城の中は綺麗で掃除が隅々までいき渡っている様子が伺える。


「この壺、高そうだな」


 売れば当分は、旅のお金に困らないかな、と思考を巡らせていたが、侵入したのがバレれば騎士たちが城を探索するだろう。早く王様のいる部屋を見つけなければ。


 歩いて探索を続けるがそれらしい部屋はない。


 扉を一つずつ開けていくが見当たらない。


「そう言えば、僕はその王様の名前も顔も知らないから。会えたとしてもわからないじゃないか」


 今頃になって気がついた。


 でも、王様は髭が立派っていうイメージあるし、髭が立派な人を見つければその人が王様かも知れない。


 そう考えていると、ガタッという音が聞こえてきた。


 気になって音のする方向に向かって見ると今まで見てきた中で一番大きい扉があった。


「もしかして、ここに王様がいるのかな?」


 僕は扉を静かに開けて中を見てみる。


 するとそこには、ベットで二人の男が上と下で交互に入れ替わっているのが見えた。


「……………お邪魔しました」


 小声でそう言って扉を閉めようとしたとき、ベットにいた男がナイフを持っているのが見えた。


 僕は瞬時に身体強化を施し、ナイフを持った男を遠く離れた壁まで吹っ飛ばした。


「ゴハッ!」


 僕は変態……ではなく、暗殺者と思われる男を蹴り飛ばし一瞥した。


「馬鹿者が。一国の王を殺るならば、気付かれたらすぐ逃げろ」


「………助かったが、お前は誰だ?」


 髭が立派な男は僕にそう質問した。


 髭が立派だから、この人が王様かな?


 そう思い、僕は静かな声で答えた。


「魔法使い」


 僕は驚く王様を無視して暗殺者の方向を向いた。


 暗殺者は僕を睨み、殺気を隠そうともしていない。


 蹴り飛ばされてぶつかった壁は凹んでいる。


「コロ…ス、コロ…ス、コロ…ス!」


 殺意マシマシな暗殺者は僕に向かってナイフを投げながら突進してくる。


 僕は投げられたナイフを全て取り、暗殺者に向けて投げ返した。


 暗殺者は身体に刺さるナイフの痛みを我慢して僕に向かって一際大きいナイフを取り出し、僕の首に狙いを定めて切り掛かってくる。


「シッ!シッ!シィーー!!」


 ナイフを避け続ける。


 暗殺者の動きにはキレがない。


 怒りで繊細な動きが出来ていないのだろう暴れているだけの印象が強い。


「アナライズ、セット」


 三重の魔法陣が両腕に展開される。


 暗殺者の大振りな一撃を避けて後ろに回る。


「ッ……!」


 やられる!と思った暗殺者は急いで振り返る。


 しかし、遅い。


 振り返る前に暗殺者の背中に向かって合計六発の拳を叩き込んだ。


 暗殺者が振り返るのと同時に僕は暗殺者の横を通り過ぎた。


「大丈夫かい?」


「あ、あぁ。身体に問題はないが……」


 暗殺者は呆然としていた。


 今まで戦っていたのに突然無視される侮辱を受け、敵の背中にナイフを突き立てようと動き出すのは必然だろう。


 だが、戦いは既に終わっていた。


「まだ気づかないのか」


 振り向かずに言う僕を暗殺者は理解できない。


「お前はもう負けている」


 すると、言い終わった瞬間。


 暗殺者の背中に大きい衝撃が遅れてやってきたように、寝室の窓に向かって盛大に吹っ飛んだ。


「ガハッ!」


        ガシャーーーン!!


 暗殺者は窓の外に飛んでいき、気絶したまま城の外に転がっていった。


「鈍いにも程があるな」


 そう吐き捨てて、改めて王様の方に向き直る。


 さっきまでいた邪魔者のことは、もう覚えていないだろう。


 壊れた窓から差し込む明るい月の光は、舞踏会に使われる光よりも綺麗だった。


 そこにいるのは黒の服に身を包んだ長身の女性と一国の王の姿だった。


 優雅なお辞儀を披露して、話しかける。


「初めまして、王様。僕はメビウス・ホロウ。同じ魔法使いとして挨拶をしにきたよ」


 壊れている所が見当たらない寝室。


 そんな場所で黒衣を身に纏った魔法使いはそう言い放った。




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