クールキャラの弟子適正
僕は戸惑っていた。突然弟子入りを頼まれたのは初めてだったからだ。弟子入りではなく、求婚とかはされたことあるけど。元々の僕ではなく、女性になった僕は自分でも綺麗だとは思う。
18歳ぐらいの整った顔で黒髪、黒眼で黒一色の装備に身を包み、目線が鋭く冷静な雰囲気であり長身の僕は確かに美人と言える部類だろう。
(しかし、弟子か。)
魔法使いの僕はクールキャラとして振る舞ってはいるが、人に教えるのが実は上手くない。魔法と魔術は名前が違うだけで出来ることはほぼ同じだ。
魔法は凄い超常現象を起こす。
魔術は普通の超常現象を起こす。
僕が思う魔法と魔術はそんな感じのイメージだ。
だけど、僕の使う魔法は魔法の中でも使い勝手が難しく、魔力の消費が激しい。教えるとしても違う感覚で教えることになるだろう。
(でも、クールキャラが弟子を取って旅をする……なかなか有りな展開ではないだろうか。)
クールキャラは多くは語らない。
しかし、圧倒的な実力を持っているからこそクールキャラは存在として成立する。
冷静な人物でクールキャラという単調なことではない。様々な要因が集まってクールキャラを成り立たせているのだ。
「弟子って言うけど、君は何が出来る?」
「えっと、治癒魔術が使えます!」
「治癒魔術……中々やるね、君」
「あっ!はい!」
取り敢えず無難に質問したつもりだったけど、少し驚いたかな。
治癒魔術は繊細さと魔力コントロールが必要な覚えるのに時間が掛かる部類のものだ。
僕も少しだけなら使えるが、まだ触り程度で治癒魔術とは言えないものを使える。
「その年で治癒魔術か、ナルホドね。君には才能があるのかもしれないな」
「ありがとうございます。それで、その、弟子の件なんですが……」
「君、名前は?」
「はいっ、プルル・イヤハートです!」
「プルルって言うだ。もしかして、この島の村長の娘さん?」
プルルと名乗った女の子はこくり、と頷いた。
村長の娘ということはこの島では一番の権力者の娘と思って良いのかな。
そう思った僕はクールキャラとして静かに落ち着きのある声でプルルに話しかけた。
「プルル。弟子入りの件は、僕が明日の昼に君の住んでいる屋敷に訪れるからそのとき話そう。今日はもう遅い。明日また話そう」
「えっと、はい。わかりました。じゃあ明日、絶対来て下さい!」
「わかった。約束しよう」
そう言ってプルルは急ぎ足で来た道を戻って行ったのだった。
僕は傍らにあるネッシーをトランクケースから出した小瓶の中に入れた。
この小瓶は魔術院が売っている魔術品で対象に向けて蓋を開ければ小瓶の中に吸い込まれるという一品だ
(この小瓶便利だけど、高かったなー。)
魔術院の魔術品は大体高いが、この小瓶はその中でも凄く高いで有名なのだ。珍しい幻獣を10匹狩って、やっと一番安いのが買えた程だ。
(さて、明日はどうしたものかな?)
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そうして明日……今日になった。時刻は昼を迎えるぐ
らいの時間で約束通りプルルの家にやって来た。村の人から村長の家を聞き、こうして来たわけだが。
(普通にベルを鳴らして、”こんにちは”と言って良いものか。どうせなら、クールキャラとして特別な登場をした方が良いのではないか。)
僕は微笑んで、家の裏側に回った。そこでは偶然にもプルルが外のテラスで紅茶を飲んでいた。絶好の機会に僕は嬉しくなった。
魔力を物質化し、黒い蝶を作る。黒い蝶をプルルの目の前に渦巻く形で設置して、その渦巻いている蝶の中に僕は静かに入った。良いタイミングで僕は黒い蝶を離散させた。
「約束通り。会いに来たよ、プルル・イヤハート」
プルルは唖然としていた。予想通りの展開だ。僕は内心、クールキャラとして振る舞えた自分を褒めたくなった。僕、よくやった凄く良い感じだ。
「どうかしたのかい、プルル?約束通りに来たんだよ。何か話さないと会話は終わったしまう」
「その、凄かったです。魔力ってあんなこと出来るんですね。やっぱり、貴方に弟子入りしたいです。私を弟子にして下さい」
プルルは昨日とは違って落ち着いた様子で返答した。
「落ち着いてるね。昨日とは様子が違うように見えるけど、今の君が素なのかな」
「そうですね、昨日はなんかその……はい。魔法使いと言われて興奮状態だったのかもしれないです」
あー、と心の中で僕は納得した。確かに魔法使いは8人しかいないし珍しいのかもしれない。初めて見て、驚くのも納得できる。
「ふむふむ。確かにね」
「あの、今日の朝に両親に弟子入りの件を話しました。両親は良いと言っていましたが、条件付きで3年だけと言っていました。なので、貴方さえ良ければ私を弟子にしてくれませんか?」
ちゃっかりしていて、交渉上手だなこの娘。真面目で計画を入念に練るタイプかな。クールキャラの弟子としは申し分ないし、弟子入りを了承しても良いかもな。
了承しようと思った。
(でも折角の弟子入りイベントだし、こっちもクールキャラ兼、魔法使いとして条件を出すかな。)
「良いよ。でも、条件が2つある」
ゴクリと緊張からか喉を通る唾の音が聞こえたような気がした。
「1つ目は、僕は旅をしているから必然的に君は僕の旅に付き合ってもらうことになる。
2つ目は、君は僕の弟子になるから僕の教える魔術を覚えて貰う。これで良いなら弟子入りして良いよ」
「はい、わかりました、2つの条件を呑みます」
僕が質問してから即答した。やはり、この子はクールキャラの弟子として理想の存在だ!
「わかった。両親が帰ってきたら、弟子入りの件を伝えてあげなさい」
「はい、わかりました……あの、旅をしていると言っていましたが、ではこの島からいつ出ていくつもりなんでしょうか?」
「そうだね……明後日にはこの島を出るつもりだけど君にも準備とかあるだろうし、両親ともう一度しっかり話して、それでもよければ明後日、港に来て。僕は君を待っているから」
プルルは決意を決めた趣でしっかりと首を縦に振った。
「では、明後日の港に待っているよ」
僕は黒い蝶を作り出し、身体の周辺を黒い蝶たちで渦巻かせた。そして僕はプルルの前から霧散したように姿を消した。




