時期を待つのではなく迎えに行く
魔力が世界に満ちて、魔法の設計図を見つけた人が魔法使いになるようにした僕は色んな場所に設計図を置いた。
何処かの王国の近くの洞窟だったり、滅びた民族の集落だったり、空に一番近いと言われる山の森の中など様々だ。
いつか設計図を見つけた人が心の底から望んだ魔法を使えるように、と。
(そういえば、僕の使う魔法は何にしようかな?)
8個ある魔法の設計図の内の1つは僕が持っている。
設計図を使って、望んだことがその人の魔法になる。
そういう風にしたのは自分だが、どんな魔法にするのかはまだ悩んでいる。
(いつまで悩んでいても仕方ないし、パパッと決めるか。よし、時間を遡行する魔法にしよう。)
なぜそう思ったのかというと、おばあちゃんから貰った時計が目に入って、その時計の針が規則正しく進んでいて、時間を進む、と頭によぎったからだ。
すると妙な確信と共におばあちゃんから貰った黒い時計が光だし、一瞬身体に光が灯ったのを見た
「これで僕は魔法使いになったのか?」
疑問を持ちながら、僕は魔法使いになった。名前をつけるとするなら、『時計』の魔法使いになるのかな。いいじゃないか強そうで。
魔法使いになった喜びは確かにあったけど、表には出さない。
だって僕はこれからクールキャラとして生きるのだから。それが新しい僕の夢だ。
ポケットから出したおばあちゃんの写真を出す。写真に映るおばあちゃんの若い頃はとても綺麗で凛々しかった。
黒い髪と黒い目、黒い服の若い頃のおばあちゃんは長身で美しいと思ってしまった。あのおばあちゃんがねぇ。
「こういう人ってクールキャラに向いてそう」
こういう人になるのも良いなと思った。
すると光が僕を包む。
目の前が光に包まれた僕はやっちまったかなぁ、と思いながら抵抗はせず光に身を任せる。
光が僕を包むのをやめたとき、僕は黒い髪の長身の女性になっていた。
いや、もうわかった。おばあちゃんの若い頃の写真通りの姿になったんだ。
「マジかあ、僕おばあちゃんになっちゃった」
正確には本当におばあちゃんになった訳ではないけど、僕は若い頃のおばあちゃんの姿そのままになった。
感覚的にもう願いが叶う力は残ってないと思ってたけど、少しだけ残ってたのかな?まぁ性別が変わるのなんて些細なことだ。
(寧ろ、女性のクールキャラって言うのも想像以上にカッコいいじゃないか。)
心機一転して僕は寝床にしていた洞窟から出てクールキャラとして初めの一歩を踏み出したのだった。取り敢えずは旅をしようかな。
(魔力を使えるようになって、この世界の人たちが何を起こすのか全くわからないな。)
魔力なんて凄い力を突然使えるようになった人類は今までの価値観を覆えされ、どのようなことを起こすのか、それが全く未知数だ。
それはそれで前世にはなかったことで刺激に溢れて良いと思うけど。
「取り敢えずは世界を旅して、魔法と魔術と魔力が世間に浸透するのを待とうかな」
おばあちゃんから貰った黒い時計を持ち、焼けた家から持ってきたおばあちゃんの古着の黒い服に身を包んで。あまり深く考えず、クールキャラとして僕は旅に出た。
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あれから色んなことがあった。世界を旅して多くのものを見て、多くの人と交流を重ねた。交流したって言っても積極的に関わった訳ではないけど。
原則としてクールキャラは多くは語らず、行動で示すと決まっているからだ。
僕は肩の荷が降りた気分で、誰も知らない僕だけの拠点を作った。そこは昼と夜で形が変わる森の中で、そこに家を建てた。森は昼と夜で木々の場所を変えるから誰かに見つかる可能性は低かった。魔力の影響で動植物にも変化があり、特異な植物も出始めたのだ。
充分に満足した僕は一つの実験を試そうと考えた。
それは遥か未来への遡行だ。僕は自分の魔法を色んな場所で使ったからわかるが、未来への遡行は多くの魔力を消費する。僕の魔力量では十分ぐらいしか飛べないのだ。出来るかどうかは試してみないとわからないけど、失敗なくして成功なしと言うしね。
人生は冒険だ!
まぁ、失敗したら死ぬかもしれないけど。
あは!
今の時期的に多分、クールキャラとして活躍はできない。
実力を見せつけたり、強敵を倒したりとか、 ”あいつは一体!”みたいなことは時代が魔力という超常現象に適応できたときだと思うから。
「じゃあ行ってみようか、未来へ」
僕は黒い時計を持ちながら、魔法を発動させる。
「アナライズ」
時計の針が徐々に進んで早くなる。針はカチカチと進んでいき。
「セット」
魔法の準備が完了した。周りの大気が震えるのを感じながら、僕は光に包まれ、丸い魔法陣のような円が身体の周りに三重に展開している。
「時間遡行、スタート」
そう言って僕の身体は瞬間的にブレて、まるで世界から消えたように姿を消した。
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視界がブレるのを感じて、僕を辺りを見渡した。
場所は元いた場所だが、辺りが木の根で覆われていて僕の家は朽ちていた。
(一体、何年後なんだろう?)
そう思った僕は一番近くの村の本が沢山ある家を見つけて忍び込んだ。不法侵入まったなしだったが今は構ってらんない状況だし仕方ない。
(ふむふむ。ほうほう。)
年号は元から知らないけど、どうやら六百年ぐらい経った世界みたいだ。遥か未来への遡行は成功していたのか!やったぜ!
(じゃあ、やっと出来るな。)
魔力が馴染んだ世界でクールキャラとして振る舞うのがやっと出来る。魔法使いとして理想の状況を見せつけてやる。僕はワクワクした思いを抑えきれず。
「ヒャッハー!!」
「誰だ!誰かいるのか!?」
「あっ」
この家の人だろう。思わず叫んでしまった。いけないいけない、クールキャラとしてあるまじき行動だったな反省反省。僕は慌てて窓を破って逃げ出した。




