あの家、飛び込みやすそう
今日の朝から王都を見て回っているが王都は平和そのものだ。
行き来する住人たちの笑顔は明るいし、品物を売り出す店の従業員は通りかかる人に声を掛けている。
至って普通の日常。
異常なことは何もなく、楽しい毎日だ。
一定の速さで道を歩いていく。
太陽は眩しく輝いていて、サンサンと王都を照らしている。
(剣国祭が近いからかな。祭りの準備で忙しいみたい)
私はその祭りのことよく知らないけどね。
この国の王様は魔法使いだけど、国民は王様の使う魔法を使うところは見たことがないらしい。
一部の貴族と騎士がその魔法を見たという。
最近だと四の魔法使いと喧嘩して。というくだらない理由で。
喧嘩って言うが、その喧嘩は凄まじく、近くの平原一帯が焼け野原になり、中心には大穴が空いていて、今もなお復元中だ。
どんな凄い喧嘩なんだ。魔法使い同士なんだから仲良くできないのかな?
ふらふらと足を路地裏に運ぶ。
王都の中心部から大分離れた場所だ。
そこには怪しい人が何人かいるが干渉してこない。
最近では先生から格闘技の指導を受けている。だからそこら辺のチンピラでは私をどうにか出来ないという確信がある。
どんどん奥に入っていく。
さっきまで見ていた王都の雰囲気とはかけ離れた場所だが、昼までは歩くと決めた為、歩くのを辞めない。
「決行は夜だ」
「わかりました。ではその手筈で」
声が聞こえて、曲がり角を曲がる直前で足を止めた。
気になって、姿を確認する。
そこには身なりが良い貴族の男と怪しいフードを被った背が低い男の2人だった。
「村で実験したのがバレたのは不味かったが、その程度では全く問題にならない」
「今夜で正解でしたな。昨日、送り込んだ暗殺者は捨て駒。警戒態勢が高まっている今なら、アレを送り込んで王を殺せます」
「そして私が王となる」
怪しい。絶対悪いこと企んでるでしょ。
どうしようかなと考える。
「アレをこの王都に出現させれば、間違なく王は魔法を使うだろう」
「はい。対応に精一杯の王は周りに気が回らなくなる、そこをエンド様が周りが見ていない所で王を仕留める」
「私が魔法を継承し、アレを倒すフリをすれば国民は私を次期王として支持するだろう」
「全てが成功した暁には、エンド様は王となり、魔法使いになります」
見て見ないふりをするのは難しい状況だと思い、倒そうと思った。
魔術を本格的に覚えて、二週間ぐらい。
実践が必要な状況はいつかは来ると思っていた。
幻獣じゃないだけ、まだ大丈夫か。
深呼吸をし、一気に2人組の男に距離を詰める。
魔力を身体に巡らせる。
身体強化は魔力を身体に巡らせることで発動するお手頃なものだ。
魔術と言われている身体強化は魔力を身体に巡らせるだけだから、魔術とは言えないと先生が言っていた。
男二人が驚く。
貴族の男が魔力で強化した剣を抜く。後ろに下がったローブの男が火を出して私に向けた。
魔術を発動させ、素早く動き回避する。
繰り出された剣と火を躱し、距離を取る。
警戒する貴族の男の視線を感じながら、魔術を使うローブの男にも注意を払う。
今の私は深くフードを被っている。
先生から渡されたフード付きの服を来ているからだ。
その服は先生が合成した幻獣の素材で出来ていて、頑丈で軽いから気に入っている。
今の私は先生の服のお陰で長ズボン長袖だから、男か女かわからない。
逃げても良いなと思う。
睨み合ったままで動きそうにないし、私の魔術は練度が足りない気がしてならない。
ミスったか。
これだったら見とくだけにすれば良かった。
弱音を溢し、結局逃げることにした。
魔力で強化した足で前速力で後ろを向き走り出した。
後ろからは逃げるなと言う声と追いかけてくる音が聞こえるが、気にせず走る。
魔力制御による切り替えは得意だ。
どの部位に魔力を込めれば効率よく身体強化が行えるかは教えて貰っている。
足全体に血管まで様々に魔力を行き渡らせ、跳躍する。
狭い路地を抜けて、屋根の上に登った。
追いかけてくる男も屋根に登り、鬼ごっこが再度開始される。
体格の差は魔力強化で埋める。
スピードは魔力の運用率で埋める。
考える限りの要素を覚えた技術と技で埋めた私は走りながら考える。
これでほぼ男と私に差はない。
あとは経験だと思う。
その経験が私にはない。
仕方ないから、やりたくなかった方法を試すことにした。
見た時から思ってた。この家、飛び込みやすい家だって!
ボロボロの民家を見つけ、申し訳ない気持ちで私はその家に飛び込んだ。




