第7話,ダンジョンからも出れない!? スラキーの秘密
皆に心配されつつ、探索を開始した。周りを見渡してみると、宝箱を倒した後は辺りはシーンとしていて、魔物も全然居ない。ゴブリン達も見当たらない。
それにしても、0階層って何処だろう? 最初が一階層で、次が二階層って上がって行ったのに、通路を反れると0階層なんてどういう事だ? 隠し通路っていうのは何となく分かるけど。
「なぁ、スラキー?」
聞いてみるが、やはり言葉を話してくれない様だ。何か伝えようとしてくれてるみたいだが、分からない。スラキーは飛び跳ねながら何かを言っていた。
「ピキーッ! ピピッ、ピピー!」
「スラキー、それじゃあ分からないよ」
また、はてな顔でこっちを見てる。
スラキーも分かんないよな。俺も何で変身出来なくなったか分からないし。もう一度やってみたらなんとかなるかな。
「メタモルフォーゼ!」
叫んでみても、やっぱり何も起こらない。無効のままか……
『ユウ氏、元気だして!』
『スライムちゃんともきっとまた話せるよ!』
『頑張れ!』
『落ち込んでも良いが、私達が居ることも忘れるなよ!』
皆さんのコメントが暖かい。
「皆さん、ありがとうございます! 頑張ります!」
それからしばらく探索してみたが、やっぱり何もない。
今日はもう止めるかな。とりあえず、この0階層の入口に行って帰ろう。さっき入って来たところから出れるよね?
「皆さん、今日は何も起こりそうにないので、この辺りで終わろうかなと思います。今日も来ていただきありがとうございました! 明日もまた、来て下さいね」
『おう! またな!』
『お疲れ様!』
『また明日ね』
『おやすみー』
皆さんのコメントを見て配信を切り、出口だと思われる場所に向かって歩いていく。しかし、来た道は無くなっていて、元のダンジョンの道に出れない。
どうしよう……道、無くなってる? チュートリアルを終われないだけじゃなくて、自分の部屋にも戻れないのか?
時計を見ると、午後21時を回っている。いつもダンジョンから帰るのは20時位だから、とっくに過ぎている。幸いなのは明日が日曜日だということだ。土日は良く部屋に籠っているから両親も気付かないだろうし、バレずに済む。
のは、良いのだけれど、少し眠くなってきた。だからといってダンジョン内、しかも何があるか分からないし、ここで寝るわけにもいかないし……
チラッとスラキーを見てみる。すると、俺の不安が分かったのかの様に肩の上に乗ってきた。
「ピキー!」
スラキーが見つめて何かを言おうとしている。が、分からない。
「もしかして、慰めてくれてるのか? けど、スラキーごめんな? 俺、全然スラキーの言ってること分からないんだ。それに帰れないし、寂しいし不安なんだ。どうしよう? 俺、このままなのかな?」
スラキーは何も答えない。
言いながら悲しくなってきた。魔物も居ないのは良いのだけど、スラキーは居るけど喋れないし、辺りもシーンと静まり返っている。配信も切っちゃったし。配信は一度切ると12時間は配信できない様になってるし……寂しい。配信も切らなきゃ良かったなぁ。どうしたら良いかも相談したり聞いたり出来ないし、これからどうしよう? 何だか泣けてくる。
壁に寄りかかって座り込む。涙も出てきた。
その時だった。
「ピキーピキ、ピッピ!」
スラキーが肩から飛び降りて叫んだかと思うと、スラキーがモクモクと白い煙に包まれるた。煙が晴れると、緑髪の美少年がそこに立っていた。少年がじっと見つめてくる。最初は何が起こったか全く分からなかったが、良く見ると、スラキーが居なくなっていたので、恐る恐る少年に話しかけてみる。
「え? 誰? もしかして、スラキー?」
すると少年は、少し面倒くさそうにしながらも、頭をポリポリ搔き、照れながら
「そ、そうだよ! 本当はこの姿を見せるつもりは無かったんだ! けどさ、けど、お前が泣くから仕方ないじゃん!」
あ。この声、話し方間違いなくスラキーだ。少年……だよな? 見た感じ12〜13歳ってとこか。
「そう、か、スラキーなんだな。ありがとう。格好悪い所みせちゃったな。俺の方が年上っぽいのに、気を使わせてごめん。それにしても驚いたよ。人の姿になれるなんて」
「こっちこそ、驚かせてごめん。けど、あれだよ? 俺の方が年上だよ。見た目は幼いかもしれないし、俺スライムだけど成人してるからな? 大人だから、気にすんな。それと、俺の名前はスラキーこと、スラキオン・アポストリスだ! 改めてよろしくな!」
そう言いながら、少年姿のスラキーは、ニカッと笑い手を差し出した――――
ご覧いただきありがとうございます!
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秘密の姿を主人公に見せてしまうくらい、スラキーは優しい子なんです(*´ω`*)