第5話,レベル違いのチュートリアル
「え? 十階層が最終なんですか?」
『通常はそうだよ』
『ですね。チュートリアルで三十階層とか聞いたこと無いです』
無いんだ。じゃあ、俺が居るチュートリアルって何だ?
「それじゃあ、通常のチュートリアル十階層はどんな魔物がボスなんですか?」
『オークだな』
『オークですよ』
『十階層に入ると、ゴブリンを従えたオークが居て、最後にレジェンドオークがいます』
オークは確か、こっちでも十階層にいたっけな。レジェンドオークも一緒に。
「そうなんですね、こっちではオークは最上階のボスでは無いです。十階層で現れはしますが、そんなに強くはないと思います」
『十階層は合ってるのか』
『けど、全然強さが違うみたいだね』
『魔物というより、ユウ氏が強いのでは?』
『ゴブリンを一振だったもんな、レベルも30だし』
確かに、ダンジョンも安易に進めるようになったし、強くはなってると思う。だけど、俺はチュートリアルから出れない。通常ダンジョンでどれだけ通じるかも分からない。
「そう、ですね。確かにレベルは30まで上がりました。強くなってるとも思います。けど、僕は早くチュートリアルのループから抜け出したいです!」
『そう、だよな』
『どうやったら呪い解けるんだろうね』
『頑張れー』
ピロン
■500コイン
「ありがとうございます!」
また、投げ銭してくれた。応援してもらえてるのってやっぱり嬉しいや。
「おいっ! 危ないっ!」
急なスラキーの声に驚きながら振り向くと、ゴブリンが数匹、鎌のようなものを振り上げて俺に襲いかかってくる所だった。
「うわっ! このっ!」
間一髪、ゴブリンの攻撃を避けて反撃する。
「ありがと、スラキー」
「気を付けなよ、お前が殺られたら俺まで殺られちゃうんだからな」
「そうだよな、ごめんな」
「分かったなら良いけどさ」
確かにちょっと軽率だったな。配信に夢中になって、殺られるところだった。
『ユウ氏、大丈夫か?』
『今、スライムちゃんがユウさんの事助けた?』
『だよな? スライムのピキーって声がしたと思ったらゴブリンが居たもんな』
『優秀なスライムだな』
『俺もこんなスライム欲しい』
『可愛いし』
『可愛いくて、頼りになる相棒か』
スラキー、人気だな。確かに可愛い、可愛いって言ったら怒りそうだけど。
「スラキー、人気者だな」
「そ、そうかな。何だか照れる」
照れながら飛び跳ねるスラキーが可愛い。
ゴブリンを倒しながら進んでいく。と、ふと気になり、ゴブリン達が現れてくる道を見てみた。すると、思ったより奥に続いてそうだ。
「おい! ユウ、そっちは……」
「ん? スラキー、どうした?」
「通常道から外れてるぞ?」
あ! スラキー、心配してくれてるんだな。何だかんだ優しいよな。
「大丈夫だ! やられたりはしないよ。それにいつも通りじゃ、いつまでもココを抜けられないしな」
「まぁ、そうなんだけどさ」
あれ? 心配してるわけじゃない? まるで行って欲しくないような言い方だな。
「スラキー、何かあるのか?」
聞いてみるが、スラキーは言うつもりは無いようだ。
まぁ、無理に聞いても仕方ないか。
「別に、何もないよ。だだ……」
ただ……って、そこが気になるんだけどな。まぁ、良いか。
スラキーの言うことが少し気になりはしたが、とりあえずゴブリン達が出てきている道へ行くことにした。いつもとは反対方向だ。
「スラキー、嫌なら付いて来なくても良いよ? ゴブリンも片付けたから、しばらくは来ないと思うし」
そう言うと、スラキーは少しムクレながら付いてきた。
やっぱり、何か怒ってるのか? 付いては来てるみたいだし、しばらくそっとしておくか。
スラキーを気にしつつしばらく進むと、少し開けた所に出た。奥には、何かの植物らしきものの蔓のが絡まった箱がある。
『ユウ氏、やめとけ』
『何か嫌な予感がする』
『そうか? 俺は開けてみても良いと思うぞ?』
『宝箱かもしれないよ?』
『けど、宝箱が魔物かも』
『わくわく』
『ワクワク』
『開けてしまおう!』
『みんな、好き勝手言って……ユウさん、気を付けてね』
華さん、いつも心配してくれる。優しいんだろうな。嫌な予感がするって言ってる人もいるけど、このままじゃ何も進展しないしね。
「皆さん、箱を開けてみようと思います!」
『おお!』
『勇者だな』
『気を付けて!』
『頑張れ!』
『(っ`・ω・´)っ』
『q(*・ω・*)pファイト!』
コメントがいっぱいだ。よしっ! 開けるぞ!
警戒しつつ、箱に近づき蔓に触れた瞬間、蔓が全身に絡み付いてきた。
やべっ! この蔓、魔物だったのか!
『ああっ!』
『ユウ氏!』
『蔓が魔物だったのか!』
『キラーグラスじゃないのか?』
『けど、キラーグラスは上位魔物じゃなかったか?』
『大丈夫かな?』
『ここ、通常じゃないみたいだし、有り得るかもね』
上位魔物だって!? 確かにこいつは見たこと無い、このままだとやられてしまう……どうすれば?
そんな時だった! スラキーが急に叫び声を上げた。
「ピキーッ! ピキュ、ピキュ、ピキーッ!」
すると、その声に反応したのか、キラーグラスの締め付けが緩まった。
今だっ!
持っていた剣で、キラーグラスを斬る。蔓を斬ると『グギャガガガ』という叫び声と共に塵になって消えた。
「ありがと、スラキー、助かったよ!」
「ホントに気を付けろよ!」
スラキー、また助けてくれたんだな、まだ怒ってはいるみたいだけど、何だかんだ優しいよな。
『良かった』
『スライムちゃんお手柄』
『助かって良かったな』
『スライム様々だな』
『流石、相棒だな』
リスナーの皆さんにも心配かけちゃったな。
「皆様、ご心配おかけしました。今からこの箱らしきものを開けようと思います!」
箱の上にかかっている灰を払う。すると、只の木箱かと思っていた箱は金属で出来ており、何かの模様が書かれている。恐る恐る箱を開けてみると、中には1本の巻物の様な物が入っていた――――
ご覧いただきありがとうございます。
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スラキーは最高の相棒です☆飛び跳ねる姿も可愛いし、主人公をカバーしてるスラキーを見た、リスナーさん達からの人気も急上昇中~
拗ねたり怒ることはあっても、主人公の事が大好きです(*^^*)