第4話,何かが違う?
さっきまでの初配信で、投げ銭を貰い浮かれていた。
「初配信で1000コインも貰えるなんて、配信も辞められないなー!」
思わず部屋の中で叫んでしまった。
そういや、チャンネル登録数何人だろう? ワクワクしながら配信アプリを開いてみる。
■チャンネル登録者数 7人
7人、か。同接は結構居たと思ったけど、なかなか難しいんだなぁ。大翔が凄いって事が良く分かった。まぁ、最初は誰も来ないかなって思ってたし、上出来だよね。
ふと、部屋の時計を見てみると午前0時を少し過ぎた所だった。明日は日曜だけど、あまり遅くなると寝過ぎて配信が遅くなってしまう。
「それだけは避けないとな。せっかく上手く行ってるんだから」
布団に入り、ゆっくりと目を閉じる。明日からの配信にまた、胸を躍らせていた。
*
午前10時。結局寝坊してしまった。
リビングに降りると、母さんが用意してくれた朝御飯があった。両親は出掛けた様だ。
『ダンジョンばかり行ってないで少しは勉強もしなさい』
母さんの置き手紙にテンションが下がる。
「分かってるよ」
手紙に呟きながら遅い朝食をとる。朝食を食べながら大翔の配信を見る。
「今日は一人じゃないんだな。パーティ組んだのか」
通常ダンジョンは他のプレイヤーもいるから、気の合う仲間とパーティ組んだら楽しそうだなー。大翔とパーティを組んでプレイする所を想像する。
『それでは、今日はここまで! 今日の夕方配信はありません。また、金曜の夕方見に来て下さいねー!』
大翔の声で配信が終ることに気付く。
やっぱり、見てても楽しいし今から配信始めようかな。
部屋に戻り、ダンジョンの入り口へ。今日は三階層からだ。
「メタモルフォーゼ!」と唱えて、三階層の入り口へ。ドローンを準備しようとした時だった。
「助けてくれよぉ」
弱々しい声。この声は、スラキーだ!
「スラキー、何処だ?」
良く見ると、三階層の入り口でゴブリン達につつかれながらぶるぶる震えているスラキーが居た。
「スラキーを離せ!」
持っていた剣を振り、ゴブリン達を追い払う。スラキーが怒りながら、胸に飛び込んできた。
「何処行ってたんだよ! お前探してたら、ゴブリン達に追いかけられるし、お前居ないし。怖かったんだぞ!」
良く見ると涙目だ。
「ごめんね、スラキー。俺、家に帰ってたんだ。ここに、ダンジョンの中にずっと居るわけじゃないんだ」
「俺、怖かったんだぞ」
涙目でこっちを見つめるスラキー。
「そう、だよな。怖かったよな? 連れていくから、二階層に帰るか?」
すると、スラキーは首? をふりふり。
「それは、嫌だ。あいつにも『俺は見てくる!』って、反対を押し切って出てきちゃったし、今更帰れないよ」
「あいつ、ってピンクのスライムの事?」
「おう……」
って、スラキーちょっと照れてる?
「もしかして、恋人か?」
「違うよ!」
焦ってる。可愛い。
「好きなのか?」
「もう、いいだろ!」
顔を真っ赤にして怒ってる。
「スラキー? 怒った? ん、まぁ、スラキーも後には引けないんだな」
「そうだよ。俺は一度言ったら実行する! だから、連れて行けよ!」
俺をじっと見つめて、ピョンピョン跳ねている。
「分かったよ。じゃあ、俺が帰る時はちゃんと考えるからな? やっぱり、一人にはしておけないし心配だからさ」
そう言うと、スラキーはちょっと照れくさそうに俺の名前を呟いた。
「ありがと……ユウ」
「っ!? 今、名前? 呼んでくれたのか!? ありがとなスラキー。もう一回言ってくれないか?」
期待を込めてスラキーを、見てると、スラキーは照れながら拗ねている。
「な、言わないよ! 期待したって無駄だからな?」
可愛い。
「ふふ、分かったよ。それじゃあ、配信始めようか!」
スラキーに名前を呼ばれ、気分良くドローンをセットし、配信を始めようと配信アプリを開いた。すると、コメントがいっぱい付いていた。
あれ? まさか、配信、してたのか?
画面をスクロールする。
『おお、来た来た』
『ユウ氏、待ってたぜ』
『今日は遅かったね。もしかして、寝坊かなー?』
『って、あれ? 配信してるの気付いてない?』
『挨拶無いもんな』
『あ。スライムもいるーって、襲われてる?』
『ゴブリン? 大丈夫かな?』
『あっ! ゴブリン一振か。強いんだな』
『スライム、抱きついてる! かわいー』
『って、また何話してるか分かんないね』
『主の言葉から察するに、スライムどうするか? みたいな?』
『おーい! 主!』
『ユウ氏ー?』
『気付かないのー?』
『草』
『おーい』
『帰っちゃうよ?』
『え? 今、配信始めようかってスライムに話しかけてるよw』
『www』
『あ。気付いた』
『慌ててる。やっぱり繋がってたの気付いてなかったのね』
同接数10、コメント20越えてる……いままでの、配信されてたのか? ヤバい、コメント返さないと!
「みなさん! 来てくれてありがとうございます! ごめんなさい、配信繋がってるとは思わなくて」
『良い良い、楽しんでたから』
『あるあるだな』
『主がスライムに好かれてるのは十分伝わったw』
『ゴブリンって事は七階層かな? いつの間に行ったの?』
『ゴブリンを簡単に追い払うなんて凄いね』
あれ? 七階層とか言ってる人いる? 何でだ? ゴブリンといえば三階層なのに。
「あの、何か勘違いされてる様ですが、ここはまだ三階層の入り口ですよ?」
『? 三階層?』
『ゴブリン居るのに?』
『チュートリアルの三階層の主要な魔物っていったら、角兎だよな?』
「角兎もあっちにいますよ。ただ、主要な魔物ではなく割と弱い魔物ですが」
『主、何かがおかしいぞ?』
『そういえば、他のプレイヤーが全然映ってないけれど?』
『チュートリアルじゃないんじゃないか?』
え? 皆、何を言ってるんだ? それに、チュートリアルって、他のプレイヤーと合流できたりするのか?
「えと、他のプレイヤーの方には会った事無いです。けど、チュートリアルで合ってはいると思います。ステータスオープン!」
ステータスが開く。
状態:呪い(ループ)
場所:チュートリアル(個別)三階層
やっぱり、ちゃんとチュートリアルで三階層だよな?
『確かにステータスにはチュートリアルって書かれてるな』
『三階層、だな』
『ん? 個別って何だ? こんなの他の人にあったか?』
『少なくとも、俺には無かった』
『私にも無かったわ』
『ユウ氏、何か変だぞ?』
皆さんチュートリアル経験者みたいだな。しかし、(個別)か。気付かなかったけど、確かにこれって何だ?
『これも、呪いなのか?』
「僕にも何が何だかさっぱり分かりません。個別というのも今気付きましたし、皆さんの言う、他のプレイヤーとも会ったことありません、しかも通常? チュートリアルでのゴブリンが七階層なら、最上階三十階層のボスは何ですか? 知っていたら教えていただきたいです」
『三十階層!?』
『って言ったか?』
『ユウ氏、チュートリアルの最上階は十階層だ』
え? 何だってー!?
ご覧いただきありがとうございます☆
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優がいるチュートリアルは、普通のチュートリアルとは様子が違うようです(*・ω・)