第13話,不安な気持ちと束の間の休息
そうはいっても、運命かもとは思っても……抵抗せずにはいられない。スラキーに言ったって何かが解決するわけじゃない、しょうがないかもしれないけど、言わずにはいられなかった。
「また、王の資格? スラキー、俺は選ばれたって言ってたけど、何でなんだ? 俺はただ、帰りたいだけなのに」
そんな俺に、スラキーは困惑したような表情を浮かべている。
何でそんな困った顔を? 一体、スラキーはこの状況をどう考えているんだ?
「ユウ、そうは言うけどさ、王の資格があるって凄いことなんだよ? ここからの道は決して楽ではないかもしれない。だけど、ユウならなれるよ。素晴らしい俺たちの王に」
「ん? スラキー、今、何て言った? おれ……たち?」
問いかけた瞬間、スラキーは驚いた表情で慌てて言い訳をしてきた。
「あ。いや、今のは……ユウなら、王になっても素晴らしいって言っただけだよ」
「スラキー、何か隠してない?」
「な、何も隠してないよ。それよりもユウ、これからどうするか考えようよ」
やっぱり怪しい。慌ててるし、何か隠してるよな。けど今は考えてもしょうがないか。
スラキーの言った事は少し気になったが、確かに今は、これからどうするかの方が大事だ。
「そうだな。ここから脱出して帰る為に、これからどうするか考えなきゃだよな。先ずはこの塔から出られないかな」
「この塔からは出れるはずだよ。ユウは古の剣を持ってる。それが鍵となっているんだ」
「そうか。この合成した武器が鍵に……って、え?」
「ユウ、どうしたんだ?」
「あ。いや、武器が鍵って何か凄いなって」
スラキーの問に慌てて誤魔化したが、スラキーの言っていることに疑問が出てきていた。
何故スラキーは、この剣が鍵って知っているんだ? 確かにステータス画面には書かれてたけど、それは伝えていなかったはず。それにアトディマス島についても、ここにこそ王の資格があるみたいなことも言ってたし、やっぱり詳しすぎないか?
疑問だらけの俺とは対象的に、スラキーは、鍵となるものが凄いと言ったことが気に入ったのか、さっきまでの難しい表情とは打って変わって、にっこりと笑い、楽しそうにしている。
「そうだろう? 武器が鍵なんだ! 何だか格好良いよな。剣を翳すと扉が光って通れるようになる。まぁさっきの様に、また気付かないうちに通ってたってこともあると思うけどな」
「そうだな。確かに武器が鍵って格好良いよな……」
「ユウ、どうしたんだ? 何だか元気ない?」
力なく答えると、スラキーが心配そうに顔を覗き込む。スラキーを疑って、落ち着かないなんて言えない。
スラキーも色々助けてくれたし、俺の勘違いかな。そう思いたいし、あんまり悪く思うのも良くはないのは分かってる。どうしたら良いのかな……
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと色んな事が重なっちゃったから、疲れただけさ。心配かけてごめん」
「そっか、そうだよな。古の遺跡から出られなかったうえに時空間にワープして、知らない所にいきなり来たら、どうしたら良いかも分からないし疲れるよな。俺こそごめん、今日はもう休もうか」
「ありがとう。今日は休むことにするよ」
ひとまず、今はゆっくり休もう。休んだら少しは気持ちも楽になれるかもしれない。
俺はアイテムが入っている袋の中から、簡易テントを取り出す。実はこれ、母が配信の運営に頼んで送ってもらったものだ。テントを建てていると、今度はスラキーが袋から干し肉を出し、火を起こして食事の準備をしていた。
「それ、凄いな。寝床か? その布の中で寝るのか?」
テントを見たスラキーが、目をキラキラさせて、不思議そうにテントを眺めている。
こういうスラキーは可愛いんだけどな。
「そうだよ。これはテントっていうんだ。山や海にキャンプに行く時に使ってたものなんだ」
「キャンプ?」
あ。そっか、スラキーはキャンプとか知らないよな。
「キャンプっていうのは……」
等と説明しながら、スラキー達とワイワイ食事をしながら過ごしているうちに、さっきまでの不安な気持ちは和らいでいった。
「ユウ、おはよう。よく眠れたみたいだな」
スラキーの声に目が覚める。知らないうちに眠っていたみたいだ。
「ああ。スラキー、おはよう。よく眠れたよ」
「良かった。昨日辛そうだったから心配だったんだ」
「心配かけてごめんな。スラキーこそ、ちゃんと休んだか? もしかしてまた、ずっと起きて火の番をしてくれてたのか?」
「今は、前と違って仲間たちもいる。だから、ちゃんと休んだよ」
「そっか、皆もありがとう!」
俺がそう言うと、スライムたちは一斉に『ピキーッ』と応えてくれた。
「さあっ、ユウ、塔を出て行こうか。アトディマス島に!」
「そうだな、行こう!」
この剣が鍵なんだよな。不安はまだまだいっぱいだけど、何とかやるしかない。
古の剣を握りしめ、スラキー達と共に塔の入り口を目指した————
ご覧いただきありがとうございますm(_ _)m☆
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優もスラキーの態度が少し変だと思い始めた様です。しかし、心優しい優はまだまだスラキーを信じたい様です……
二人はこれからどうなるのでしょうか。アトディマス島とは!?
スラキー「素晴らしい俺たちの王に」……
まだまだ目が離せない展開です(*´艸`*)