第12話,時空間移動!?
ダンジョン0階層をぐるぐる回る。が、相変わらず魔物の姿も無い。
いつもと変わらずか。否、でも魔物の気配はするんだよな。
そう思いながら、来た道を確認しようと後ろを振り向く。すると、スラキーが話しかけてきた。
「ユウ、どうしたんだ?」
スラキーがそう言うと、他のスライムも一斉にこっちを向く。
「い、いや、この階層にはもう他に魔物はいないのかなって。ちょっと確認してたんだ。なんとなく魔物の様な嫌な気配はするんだけどさ」
そう言うと、スラキーや他のスライム達が何だか悲しそうな顔をする。
「それって、俺たちのことか?」
そういや、スラキー達も居たんだった。けど、いつもとは違うんだよな。とはいえ、この気配はスライム達の気配となんとなく違うのも分かる。
「い、いや、違うよ。誤解があったなら謝る。スラキー、それに君たちスライムからは嫌な気配はしないよ」
「そうか、なら良いのだけど。気配ってどんな感じなんだ?」
「んー、そうだな。何だか嫌な感じがするんだ。それが近くなのか、遠くなのかも分からない。ただ、ずっとこっちを睨んできてるような感じでさ」
そう、さっきからずっと睨まれている……こっちを見ている気配。それが何なのかは分からない。
警戒しないとな。今まで居なかったからって、この先も居ないとは限らないし。
スラキーの方を見ると、また考えているような素振りを見せていた。
「ユウ、その気配ってさっきからなのか? それと、今って何階層だ?」
「スラキー、何を言ってるんだ? 何階層って、階段登ったり、どこからか降りたりもしてないんだからまだ0階層だろう?」
そう答えると、スラキーは少し申し訳無さそうな顔をしていた。
「ユウごめん、混乱するだろうからって黙ってたんだけど、今は0階層じゃない気がする。ぐるぐる周っている時に何か変化はなかったか? 例えば道が少し違うなとか」
0階層じゃない……? いつの間に? もしかして、チュートリアルから出たりしてるとか? スラキーは何か知ってるのか?
「確かにあったな。無いはずの所に扉があったり、どう見ても場所は同じなのに、地面が濡れてたりしたけど、あれもそうなのか? そう考えてみると何箇所か違う所があった様な気がするよ」
俺の言葉を聞き、スラキーはハッとした表情をした後、真剣な顔で聞いてきた。
「ユウ、落ち着いて聞いてくれるか?」
スラキーの、ゆっくりとしたいつもとは違う声に不安になる。
「スラキー、どうしたんだ? 急にそんな顔して」
「あ、あのな……多分、ここは0階層でもなく、そしてユウ達の世界のダンジョンでもない」
「え? 俺達の世界じゃない?」
「ああ。ユウはさっき、無いはずの所に扉がって言ったよな? そうなんだ0階層には扉なんてあるはずが無いんだ」
「けど、入っても特に何もなかったよ? 扉を通ってもただ同じ道が続いてたし」
「ユウ、本来扉はゲートなんだ。だから扉の先が今までと同じなんてあり得ないんだよ。ユウは気付かないうちに、扉を通って違う世界に入ったんだ」
スラキーの話に頭が真っ白になる。
「ユウ、大丈夫か?」
しばらく黙っていたので、スラキーが心配そうに聞いてきた。
「……あ、ああ。大丈夫……だ、と思う」
「全然大丈夫そうじゃないな……」
「う、ん。まだ信じられなくて。それにココは何処なんだ?」
「そうだよな。何か調べられる方法でもあれば良いのだけど……って、そういえばユウは自分のステータスって見られるんだよな?」
スラキーの言葉にハッとし、慌ててステータス画面を開く。
「ステータス、オープン!」
名:ユウ
年齢:17
職業:魔物使い
状態:時空間移動中
場所:アトディマス島、ベル塔B階層、通路5
level:47/99
――ステータス――
HP:315/320
MP:230/250
攻撃力:S
魔法攻撃力:A+
防御力:SS
魔法防御力:A
回避率:A
命中率:A
運:S
時空間からの脱出方法:鍵となる装備のコンプリート、王の資格(龍の鱗)
チュートリアルクリア回数:18
装備:古の剣(鍵)、チュートの盾、チュートの鎧、チュートの兜、チュートのブーツ
スキル:武器合成:同武器5つで合成可能(MP50)、メタモルフォーゼ(MP5)※無効エリア、チャーム:魔物魅了(自身よりレベルの低いものに対して有効)、???
ステータスを開くと分からないことだらけだった。
職業が学生じゃなく魔物使いになってるし、いつの間にか17歳になってる。状態も時空間移動中って、どういう事だ? そんな事、タイムマシンでも乗ってないとあり得ない、否、そもそも現代にタイムマシンなんてあるわけが無いよな。それに……アトディマス島って何処……だ……?
色々考えていると、スラキーが心配そうに尋ねてくる。
「ユウ、顔が真っ青だけど大丈夫か?」
「スラキー、俺は今、何処に居るんだ? アトディマス島って何なんだよ! 時空間移動中なんてそんなこと……っ!」
思わず、スラキーに向かって叫んでいた。泣きたくなんて無いのに、怖い気持ちが溢れて涙が出てくる。そんな俺を察してか、スラキーは本来の姿になり、抱き締めてくれた。
「落ち着け。ユウ、大丈夫だ。ユウは一人じゃない、俺たちも居る。俺はユウから絶対に離れない。これからもずっと。だから、安心して? ところで、ステータスに出てる情報を教えてくれるか? アトディマス島って言ったか?」
「ごめん、ありがとう。だいぶ取り乱してた。それで……えと、スラキー達にはステータス画面は見えないんだっけ?」
「うん、見えないんだ。ユウが顔を上げて見てる目線の先に何か青っぽい四角があるのは分かるんだけど、多分それの事だよな? 文字とかが書かれてるようには見えないけど」
スラキーに心配かけちゃったな。ずっと側に居てくれるって言ってるのに。それにしても、スラキー達には只の青い四角に見えてるんだ。それも何だか不思議だな。
「そう、スラキーが言ってる宙に浮いている青い四角がステータス画面なんだ。それで、そこに書かれているのは、時空間移動中、今居る場所がアトディマス島とか……何故か誕生日もまだなのに、十七歳になってるんだ」
そう伝えると、スラキーは真剣な顔でハッキリと言った。
「ユウ、アトディマス島っていうのは忘れられた島って呼ばれている島だ。そして、そこにこそ王の資格があると云われている。この島に来れるのも、入れるのも選ばれた者だけなんだ。そもそも、他の者には時空間移動すら出来ないし、扉も入れないんだ」
また、王の資格か……。
スラキーの言葉に、もう抜けられない運命なんだなと、感じていた————。
前回より、だいぶ間が開いてしまったにも関わらず、読んでいただき、本当にありがとうございます!
————
前回から、帰って欲しくなさそうなスラキーです(;・∀・)ユウから絶対離れない。これからもずっと————