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せっかくおめでたいことがサクッと決まったことですし、
カミス邸一階の改装の件、早速アリシエラさんに連絡を、
と思いましたが、ちょっと待った。
つい昨日『ふなずし』改良を始めたばかりのアリシエラさんに、
今日カミス邸の改装をお願いしちゃうなんて、鬼畜すぎやしませんかね。
せめて『ふなずし』改良の件が終わってから、
などと、美味しいお茶をいただきながら考えていた頃が、僕にもありました。
ピンポーン
あれは『ゲートルーム』にどなたかいらしたお知らせチャイム。
はて、どなたかな?
「こんにちは、元祖黒猫嵐の配達便ですよっ」
こんにちは、アリシエラさん。
元祖ってなんです?
「えーと、それはひとまず置いといて、今日は新型魔導具のお届けですよっ」
えーと、確か今は『ふなずし』改良中では。
「ご名答!」
「みごと正解したカミスさんには、出来立てほやほやのニュー『ふなずし』をお披露目、ですよっ」
えーと、確か『ふなずし』改良を始めたのは昨日から……
「まさにその通り、です」
「そして改良点さえ明らかだったら、こんなの私にとってはお茶の子さいさいサイコパス、なのですっ」
もしかしてアリシエラさん、徹夜してハイになってるんじゃ……
「マジでその通り、ですっ」
「でもご安心あれっ」
「魔改良されたこの子は、ご要望通りのグレートな複合型ナビゲーション随時接続式システム、に生まれ変わりましたよっ」
えーと、もしかして略称は、
「『Gふなずし』ですっ」
あー、元々はグレーだった『ふなむし』じゃなくて『ふなずし』が、
テラテラと黒光りするアレな感じに……
「ご要望通りの完全防水性能と、ハードな冒険のお供のための対衝撃性能」
「両立させたら、なぜか無性に"G"をつけたくなりましたっ」
なぜか無性に納得のネーミングなのですが、出来れば、その、色を変えてほしいかな、なんて……
「いかにイケてる若旦那なカミスさんのおねだりでも、そればっかりは不可逆にして不可能なのですっ」
「なぜなら、耐水圧性能も耐衝撃性能も、この漆黒なのにツヤッツヤの不可思議魔導塗料に依存しているからなのです!」
はい、僕みたいな魔導具素人にも、とても良く理解出来ました。
それで今回の『Gふなずし』は、おいくらほどですか。
「ダメですよっ、カミスさん」
「そんな時に言うべきセリフはただひとつだけっ」
「おなじみのアレですよ、アレ」
あー、それでは、
……
でも、お高いんでしょ?
「よくぞ聞いてくれましたっ」
「『ふなずし』または『マツカゼ』をご愛用の皆さまに限り、なんと、今回限りの特別価格」
「 無 料 ですっ!」
はい、お約束ありがとうございます、アリシエラさん。
それで、使い方に変更点などは、
「ございませんっ」
「オリジナル『ふなずし』と全く同じ操作感にてご使用いただけますよっ」
「もし操作に迷ったら、画面右下に常に表示されている"ヘルプ"マークをタッチ、ですよっ」
至れり尽くせりなご説明、本当にありがとうございました。
ご紹介したい方々もおりますので、
もしよろしければ、お茶でも。
「ありがとうございますっ、カミスさん」
「ちょうどこちらへのお届けが最終便だったのですっ」
「それでは不肖アリシエラ、お言葉に甘えまくりの甘えっ子仔猫ちゃん、しちゃっていいかなっ」
いいともですけど、さっきからマリモちゃんが怯えていますので、出来ればもう少しテンション控えめで……




