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第弍拾肆話「嵐の前の静けさ」(後編)

「どうして俺を避けるんだ?」


それは地雷と呼ばれるほどの発言だったと思う。

早苗は沈黙のあと口を開く。


「前も言ったじゃない。ノコノコとアーマードの装着員になったのが気に食わないからよ。」


当たり前だが強い口調だった。

しかしその答えは真っ赤な嘘である。

元の世界でも早苗は俺のことを嫌っていた。

だとすると、こっちの世界でも俺を嫌う理由は一緒のはずだ。

だがこれ以上聞くともっと距離が遠のいてしまうだろう。

俺はそのことに気をつけながら続けざまに言った。


「俺さ......この戦いが終わったら装着員をやめようと思う」


「は......?」


この気持ちは正直だった。

確かにこの世界を守りたい、そうは言ったがあくまでもこの作戦までという話だ。

この戦いが終わればあとはあいつらだけでも何とかなるだろう。


「だからこの戦いだけは共に頑張りたいと思う」


「............」


「最初で最後の頼みだ」


俺は頭を下げる。


「......違う」


「......?」


「違うから頭を上げて」


俺は言われた通りスっと頭を上げた。

「どういう......ことなんだ......? 違うってなにが__」


パシンッッッ


俺は左頬を強く叩かれる。

そうしたあと早苗はどこかへと走って行ってしまった。

俺はしばらくボーッと突っ立っていた。



そして時はさらに進む。


各所の下見や平気の配置が終わった。

俺たちは簡易シミュレーションボックスで近接戦闘訓練や射撃訓練を行った。

最後の夕食となった時みんなは集まる。

夕食は炊き出しのようなかんじで外で食べることになった。


「__いやぁこれが最後になるんやなぁ」


「うむ、そうだな。みんながこうやって集まって食べるのは今日でおわりなのかもしれない」


「もう一度みんなで食べるために生き残ろうよ。ね、三木君」


「あぁ、必ず生き残ろうな」


夕食を食べ終えたあと各自持ち場へと配置された。

レヴナントが来るのが明日、明後日、明明後日(しあさって)、いつ来るのかは正確には分からない。

もしかして今来るかもしれない。

だからいつでも出撃出来るようにしなければいけないのだ。


俺はアーマードを装着し待機した。

みんなが仮眠を取り始めしばらくした時、誰かから通信が入る。


「あー......あー......三木さん、起きてますか?」


その声の正体は琴だった。


「なんだ? 眠れないのか?」


「あーはい、私、どうしても緊張しちゃって」


「そうか。まあ俺もそんな感じだ」


「そうですか、奇遇ですね。そういや三木さんにあげたお守りってまだ持ってますかね?」


「あぁ、今でもポケットに入れてるよ」


「えへへ、持ってくれてありがと。あのお守りはね。実は私のお兄ちゃんのものなんだ」


「琴はなんでそれを持ってたんだ?」


「沖縄から出る時お兄ちゃんがくれたの。お前は生き残るんだぞって」


「そうなのか。でもそんな大切なものを俺にあげて良かったのか?」


「それはね......三木さんがお兄ちゃんに似てるからなんだ」


「............」


「あ、ごめん、引いちゃった?」


「いや、そんなことはない。ただそう言われるとなんか琴の兄さんから琴を守れって言われてるかんじがしてさ」


「......そっか」


琴の顔は少し赤らんでいた。


「えへへ、なんだか今日は安心して眠れるかも。じゃあね、三木さん。おやすみなさい」


「おやすみ」


俺は通信を切り静かに目を閉じた。

そして眠りにつく。

















嵐が来るのはそう遅くはなかった。

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