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第弍拾肆話「嵐の前の静けさ」(前編)

西南部防衛作戦まであと一周間。

作戦の内容が決定され俺たちはそれに従って模擬作戦を行ってきた。

しかし、成功できたことは今まで一度もなかった。

一週間前と言うことで俺たちは四国に配置されることになる。

そして配置されたあとは簡易なシミュレーションしか行うことができず、作戦についてのシミュレーションは行うことはできない。

つまり一発本番でやるしかないのだ。



夕暮れの貨物船にて__


俺は一人貨物船のデッキにて風に当たっていた。

その時後ろから話しかけられる。


「三木君」


「ん? なんだ?」


後ろを振り替えると美月がいた。

美月は俺の隣に来る。


「なんか切羽詰まった顔してるね。ほら、少しはリラックスしないと」


「え......? あぁ......」


俺は言われた通り手を上に伸ばしてストレッチする。

ふっと溜め息をつき、再び手すりに腕をおいた。


「......私さ、怖いんだよね。今回の作戦がさ」


「怖い......? まぁ、俺も怖いよ」


美月は少し暗い表情だった。

そんな様子を見かねて俺は一つ提案をする。


「じゃあさ、その背中押してやるよ」


「......?」


「もし、この戦いが終わったら何でもひとつ美月の願いを叶えてやるよ」


「ほんとに......?」


「もちろん」


美月はうーん何にしようかなと考えた。

その表情は前より明るくなった気がする。

しばらく経って美月は口を開く。


「__私、海行きたいかなっ!」


「海? 今も海の上だけど......いいのか?」


「うん、ずっと海行きたかったの。あ、でも浜辺とかで遊びたいっていう意味ね」


「.....分かった。じゃあ楽しみにしてろよ」


「やったー!」


海......か。

確かにこの世界だと行こうにもそう簡単に行けないのか。

元の世界では海なんて行けて当たり前、この世界に来ると平和という差が生じてしまうのが心苦しい。


俺はなんとでも美月を海に行かせたいと強く思った。

その宛はどこにあるかという話だが、上になんとか説得するしかないだろう。



時は進み夜となる。

夕食を食べ終えたあと、まっすぐその足で長谷教授の元へ向かった。

長谷教授が作戦に参加する必要などなかったのだが、上に何回も強く参加させるように訴えたおかげで上手くいったそうだ。


「__長谷教授はどうしてこの作戦に参加したんですか?」


「んー、ただ気になっただけかしらね。特に深い理由はないわ」


「そうですか......じゃあ、本題に入りたいのですが大丈夫でしょうか?」


俺は息をすっと吸う。


「......この戦い、無限にループしてしまうかもしれません」


長谷教授は特に驚くことはなく「そうね」と一言言った。

おそらく俺の言いたいことが分かっているのだろう。

この戦いで命を落とせばもう一回やり直しとなる。

しかし、この作戦のシミュレーションは何度も行ったが一度も成功したことがない。

つまり活路を見いだすことができなければ、一生その戦いをしなければならないのだ。


「__もしそうなったら元の世界に戻ることを勧めるわ」


「............」


「まあいいわ、何かあったら相談しなさい。この世界でも元の世界でもね」


「分かりました」


俺は待機室に戻ることにした。


その廊下の途中でばったり早苗に会ってしまう。

すれ違い様にボソッと「キモ」と呟かられた。

そんな早苗を俺は呼び止める。


「なぁ、如月」


「何よ」


俺は一つ気になることがあった。



「どうして俺をそんなに避けるんだ?」

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