第弍拾参話「VS明星副司令」(前編)
「......朝、なのか?」
俺は目覚めベッドから出る。
目に映る景色はあの世界の自室。
どうやら転移に成功したようだ。
もちろん右手に握りしめていたメモも。
時間を確認しながら制服に着替えたり、歯を磨いたりなどして準備を済ませる。
そして教室へと向かい、東雲教官の話が全て終わると皆を集めた。
あらかじめメモは他の紙に写しコピーを人数分取っておいた。
俺は皆に手渡す。
「__まあ、理解するのは難しいかもしれない。だがこの方法ならきっと突破の手がかりになるはずだ」
皆はしばらく眺めた後、うんと頷いた。
時は進み、シミュレーションを用いての模擬作戦が始まる。
俺たちは一度集まり確認をしてからシミュレーションボックスへと入っていった。
武装の選択はいつも通り。
各自各々、得意武器を選ぶ。
場所も前回と一緒だ。
そして俺たちは出撃する。
「__で、どうでしたか。東雲教官」
モニタールームで監視していた東雲教官に話しかける。
結果で言うと惨敗、上手くはいかなかった。
途中まではレヴナントを食い止められた。
しかし、味方が弾薬の補給を行うために前線から下がった時に隙が生じてしまい、そこからレヴナントの進行が激しくなってしまった。
これではもう他に手段はなく詰みではないか、そう諦め駆けていた時、東雲教官が言い出す。
「__一体誰から教わったんだ?」
「え? 自分で、ですが......」
「私の想定していたものと全て一緒なのだ。こんなことがありえるとは......」
確か俺はこの作戦をゲームでクリアした時、元の世界の東雲凛花から教わっていた。
思考が似るという場合もあるものなのか。
「まぁ、分かった。よく頑張った。あとは休め」
「分かりました」
俺はドアから出ようとしたが、手前で止まり振り向いた。
「一つ聞きたいことがあるのですが、いいでしょうか?」
「ああ、いいぞ」
「どうして俺らが作戦を考えなければならないのでしょうか」
「............」
東雲教官は無言になる。
「.....そうですか。俺、戻ります」
ドアに手をかけた時、東雲教官は「待て」と呼び止めた。
「......良いだろう、話してやる。実はだな__」
東雲教官は言う。
この組織ヴィーバントは人手不足だということを。
だからこそ、訓練生ではあるが俺たちから何か案を取り出そうとしていたのだ。
「__このことを黙っていて申し訳なかった」
「いえ、とりあえず把握しました。それでは失礼します」
がチャリとドアを閉めた。
......なるほど、そういうことだったのか。
ゲームでも同じような設定で進んでいた。
元の世界である程度ストーリーモードを進めれば、このあとに起こる事象を優位に立ち回れるかもしれない。
だとすると事が終わり次第、元の世界に戻るのが良さそうだ。
俺は心の中でそう決めることにし、歩き始めた時のことだ。
誰かが向こう側から俺の元へ寄ってくる。
その人は腰まで金の髪を生やした女性だった。
後ろには側近であろう人が立っている。
「えっと、貴方は確か、明星軍部副司令官......でしょうか......」




