第弍拾弍話「あの世界へ」(中編2)
「なぜだ......? 俺はあの世界にいかなければならないのに......」
俺はもう一度ベッドに潜り込んだ。
しかし何も変わらない。
とりあえず俺は原因解明のために長谷教授の元へ行こうと考えた。
俺は支度を済ませて家を飛び出した。
講義まではまだ時間がある。
大学に着いた直後まっすぐB5資料室へと向かった。
ノックをすると返事がされドアを開ける。
そこには長谷教授ともう一人生徒がいた。
その生徒というのは如月 早苗だった。
「ごめんね、早苗ちゃん。ちょっと大事な客なの。また今度でいいかしら」
「はい、色々とありがうございます。では」
早苗はドアに向かった。
俺は左側に移動する。
その時、すれ違い様にボソッと早苗は俺に対してこう言い捨てた。
「......えこひいき」
まさかこの世界でも同じ扱いなのか......
こいつとはこっちでもあっちでも仲良くなれなさそうだ。
「__で、用はなにかしら」
「えぇ、実は__」
俺は前に転移した時からのこと、これから大きな戦いが始まること、そして今日、向こうの世界に転移できなかったということを話した。
「__なるほど、大体分かったわ。その転移についてが今回の課題ね」
「はい......また一度寝ればいけますかね......?」
俺は不安になる。
長谷教授はうーんと長考をしたのち、とある提案を出した。
「講義が終わったあと私の家に来てちょうだい。あなたをあの世界に連れていけるかもしれないわ。これ、私の家の場所を書いたメモね」
俺は長谷教授から1枚のメモ用紙を受けとる。
「分かりました。ではまた」
それからしばらく経って今日の講義が全て終わった。
いつもどおりに部室に入ると誰かが東雲凛花先輩に挨拶をしていた。
「琴、もうサークルに入ったのか。早いな」
琴は「えへへ」とこちらに振り向いて笑って手でVの字を作る。
早速琴は自身のアカウントを作りゲームの世界へと飛び出した。
このゲームはアカウントがあればどのゲーム機でも遊べる。
勿論パソコンやスマホでもできるが専用のVR機器でプレイした方が迫力があって楽しいし、何より自由に体を動かせる。
最近ではアーケードでもプレイできるようになるという情報が話題だ。
と、説明したわけだが、琴はもって3分ぐらいですぐにやられてしまう。
「あ、あぅあぅ~」
おまけに酔ってしまったらしい。
「ま、まぁ、最初はこんなもんだ。あ、無理しなくても構わないぞ。しばらく休むがいい!」
琴を引き留めたいからだろうか。
凛花先輩が必死に琴のことをフォローしている。
「お気遣いありがとうございます。うーん、家でも練習したいんですがお金がなくてVR機器買えないんですよね......」
確かに家で練習した方がいいかもしれない。
が、VR機器セットを買うのには少々お金がかかる。
俺だって今まで貯めていた全財産をかけて買ったものだ。
凛花先輩はそんな琴を見かねてこう声をかけた。
「VR機器なら私が貸すぞ?」
「え、ホントですか!?」
「うむ、この部活ではそういうのは全て貸し出しOKだぞ。貸し出しの証明書を発行する必要はあるがな」
「ありがとうございます! 凛花先輩!」
「良かったな、琴」
「うん!」
俺たちはサークル活動が終わる時間までめいいっぱい楽しんだ。
そして帰る時間となる。
俺は琴と廊下を歩く。
「__今日もご一緒しませんか!」
琴のテンションがやけに高い。
だが俺には用事がある。
申し訳ないが断らないと。
「あー、ごめん。今日外せない用事があってさ」
「むむー、それって女の子?」
女の子......というより女性なんだがな。
「女性ってかんじかな。とは言っても長谷教授だ」
「へーー」
琴はジーとこちらを睨む。
なんでだか分からないがとりあえず「何もないから」と釘を打っといた。
「__じゃあな。また明日」
「うん! じゃあねーー」
俺は自転車に乗って長谷教授の家を目指した。
坂を駆け下りる時の風が気持ちいい。
時刻は7時になりそうだった。
俺は急いで自転車をこいだ。




