第弍拾弍話「あの世界へ」(中編1)
午後の講義も終わり帰路につく。
「またな、今日は本当に助かったぞ」
「あぁ、また明日な」
俺はそう言って今宵に手をふる。
よし、今日は今宵と仲良くできたぞ......!
この世界でやることも少し進展した気がする。
このまま頑張ろう__
「ヒロ君、なに女と話してるのー?」
後ろを振り返ると、無理やり笑い顔を作っている琴がいた。
その拳はグーで握られている。
「今日知り合ったんだ。どうかしたのか?」
「.......別になんでもー」
琴はプイっと顔を背ける。
なんでそんな態度をとっているのか俺には何も分からなかった。
「じゃあバツとして一緒に帰ろ!」
「あ、あぁ、まあいいけど」
「えへへ、やった~」
バツ? とりあえず付き合ってやるか。
今日の帰りは一人だし。
しばらく色々な話をしながら話題はサークルの話となる。
「__そういえばヒロ君ってなんのサークルに入ったの?」
「ゲームサークルに入ったかな。ほら、俺が前に遊ばせたゲームあるじゃん。あれのゲームをやってるんだ」
以前俺は琴にアーマードのゲームをやらせたことがある。
琴がやったときは散々だったけれども。
「へぇ~! やっぱ昔からゲーム好きなんだね!」
「確かにそうだな。そういう琴はなんかサークルに入ったのか?」
琴はうぅ~とうめいた。
どうやらまだ決まってないらしい。
俺はその時ゲームサークルに新しく入ったのが俺以外にいないことを思い出した。
そしてこう言った。
「入りたいサークルなければ俺のとこに来るか?」
「はぇ?」
「あ、いや、無理にとは言わないかな。どうかなーって」
琴は歩きながら考え込む。
1分ぐらいが経って答えを出した。
「__ヒロ君がいるならいい......かな?」
「ほんとか! ありがとうな!」
俺はサークル仲間が増えた嬉しさあまり琴の手を握った。
「え!? あ、あ、うん、よ、よろしくね......」
琴はあたふたしながらもこちらの手を握り返す。
そうしたあと、またしばらく話ながら琴を家まで送った。
「__ここまでありがとう、また一緒に帰ろうね!」
「うん、分かった」
琴が家のドアを開けて中に入っていくまで見送ったあと、俺は自転車に跨がり自宅へと走らせた。
家に帰ったあと真っ直ぐ自分の勉強机に向う。
大学内だけでは西南部防衛作戦について考える時間が少なかったからだ。
あれこれ試行錯誤しながら3時間が経過したが一向に思い付かない。
ふと気分転換に俺はゲーム機を作動させた。
ゲーム画面になってから俺はとあることを思い出す。
そして急いでストーリーモードのとある場面のリプレイを探して再生ボタンを押した。
それこそが西南部防衛戦線というミッションだった。
リプレイ画面を見ながら俺はメモとった。
ゲームだったからそこまで気にしていなかったが、これこそ立派な作戦を立てていたのである。
合計1時間にも渡る戦闘を観終えて、俺はベッドに寝っ転がった。
「なんだ、簡単なことじゃないか......」
清々しい笑みを浮かべて自身のメモを眺める。
そのあと俺はご飯や風呂、寝る準備をすませベッドに入った。
その右手にはメモが握られている。
「前に転移した時、手に持っていた物も転移できた。ならいけるはずだ......!」
俺はぐっすりと眠った。
あの世界にこれを届けるんだ。
そうしたら俺は____
俺は目覚める。
なんだかすっきりしたかんじだ。
まあ昨日いいことがあったからだろう。
右手にはメモが握られている。
「良かった、上手くいったんだな」
俺は起き上がる。
だがとある声に俺を現実に戻した。
「ヒロ~朝ご飯よ~」
その時俺は気づいた。
まだ俺は、
転移していなかったということを__




