第弍拾弍話「あの世界へ」(前編)
校門は全く別だが、校舎は一緒だった。
向こうの世界ではこの校舎にヴィーバント第三支部と呼ばれる黒くて大きい立方体のような建物が横に建っているかんじだ。
俺は唖然と立ち尽くした。
しばらく校門で突っ立っていると後ろからパシッと軽く叩かれる。
「よぉ三木! 1日ぶりやな! 元気しとったか?」
誰かと思えば宇崎駆だった。
駆は俺の横にならんで歩き始めた。
「元気といえば元気かな、今日も講義頑張ろうぜ」
「おうよ!」
自転車を駐輪場にとめ、俺たちは大学に入っていった。
講義室へと入っていくなり駆はこう言った。
「じゃあワイは昨日のメガネのツンツン野郎にまた話しかけてくるわ! ほな!」
駆は透の座ってる元へ行ってしまった。
様子を見るに透は凄く嫌そうな顔をしてあーだこーだ話してた。
結局、一緒の席ならいいが二度と話しかけないようにとなったらしい。
よくやるな......駆のコミュ力は相当なものとうかがえる。
ってアイツいないと俺ボッチか。
俺は仕方なく一人で後ろの席に座った。
そして講義が始まる。
講義が始まってから3分ぐらいだろうか。
誰かが後ろから講義室に入っていき、こちらの席の元へ来た。
「......すまないが、ここ、座らせてもらえないだろうか?」
その誰かというのは東雲今宵だった。
俺はいきなりのことで驚きつつも「あ、あぁ、いいぜ」と答える。
「かたじけない」
そう言って俺の席の隣に座った。
俺はなんだか不思議な気持ちを抱いていた。
昨日......というより前の世界で話していた人間がそこにいるのだ。
駆達もそうだが俺は相手を知ってるのに向こうは俺のことを知らない。
そういう状況は俺は苦手なのかもしれない。
午前の講義が終わる。
それと同時に今宵は俺に話しかけてきた。
「__もしそなたが良ければ、学食をおごっても良いだろうか?」
「え?」
「まあ、ただお詫びがしたいのだ。わざわざ席を使ってしまって申し訳ないからな」
俺は今宵と話すいい機会だと思い、二つ返事でOKを出した。
早速二人で同じ席に座る。
よくよく見たらあの世界での食堂とここの食堂も一緒だった。
どうやら中身も一緒のようらしい。
俺はカレーライス、今宵は焼き魚定食を選び席へと座った。
さて、何を話そう。
.......とりあえず世間話から入るか。
「そういえば、こよ......東雲さんはどうして今日、講義に遅れたんだ?」
危うく今宵と呼びそうになる。
この世界ではまだそこまで仲良くない。
他の人にも気を付けねば。
「うむ、大学に入るなり男三人にナンパにあってだな......」
「なるほど、で、どうしたんだ?」
「全員倒してやったぞ」
「ブッッッッッ」
俺は思わず飲んでいた水を吹きそうになった。
この世界でもどうやらかかってくる男に厳しいらしい。
「ま、まぁ、災難だったな。とりあえず無事で何より......」
しばらく適当に雑談をした。
ある程度見切りがついた時、とある話を切り出す。
「__姉っていたりするのか?」
「あぁ、姉はいるぞ。東雲凛花と言ってだな、ゲームサークルの部長をやっているぞ。そなたもサークル紹介で見ただろう。あの女性がそうだ」
なるほど、ここも同じなのか。
「なるほどな。仲はいいのか?」
「そこそこ、というかんじだな。一応、同じアパートで同居している」
「ふむふむ__」
休み時間が終わり、講義の時間となったため俺たちは講義室へと向かった。
講義を聞きながらも俺は西南部防衛作戦について考えていた。