第弍拾壱話「西南部防衛作戦発表」(後編)
「__ところで伴侶つながりで聞きたいんだが、例えばどういう人が好みなんだ?」
「な、何をいきなり言うんだ!?」
今宵は驚く。
「とくに理由はないけど、最近ピリピリした雰囲気だからそういう話もいいかなって。いわゆる恋バナってやつ。女子同士でやったりしないのか?」
「うーむ......まだそういうのはしたことないな......まぁ答えてやろう。ただし、そなたも言うのだぞ」
「はいはい」
俺が返事をしたあと今宵は少し考える。
そしてだんだんと今宵の顔は険しくなっていく。
「__あ、いや、無かったら別にいいんだ」
そう言ったが「待て」と言って手を突きつけてきた。
しばらくして今宵はうなずき答えた。
「そうだな......今まで興味がなかったから早く思い付かなかったが......強いていうならば強い人、と言えばいいのか」
「お、おぉ.....その、強い人の定義とは?」
俺は気になった。
力が強い人、気が強い人、強いといっても千差万別だからだ。
「まぁ、一緒に精進できる人間という感じだ。常にそばにいてもらうのだからな」
「なるほど......今宵らしいと言えば今宵らしいな」
「うむうむ。じゃあ次は三木だ。どういう女の子が好みなのだ?」
「そうだな.......__」
俺もあまり意識してきたことはなかった。
元々ゲーム好きだったため二次元ぐらいしか女の子はあまり見たことなかったな......
だが一応こう答える。
「__ずっとそばにいてくれる人、かな」
今宵はこちらに目を丸くして顔を向ける。
「三木......それはまるで誰でもいいというかんじではないか......?」
「あぁ、まあ、好きになった人が好みってのもあるな」
今宵は「なるほど、それも答えとしてありだな」とホッと息をついた。
「__とりあえず忠告とまではいかないが、恋愛沙汰はここでは持ち込んではいけないぞ。姉も厳しく言ってるが、恋愛にうつつを抜かせ練習がおろそかになっては元も子もない。心に留めておくのだぞ」
「分かってるさ。俺たちはレヴナントを倒すためにここにいるからな」
その後はしばらく階段に座って雑談をしていた。
西南部防衛作戦に対していくらか緊張はほどけた。
時刻は9時半となり、お互い寝るために別れを告げて自室にへと戻っていった。
「__さて今日はもう寝るか」
俺は電気を消してベッドに入った。
目を閉じようとしたがここでふっと考えがよぎった。
「元の世界で作戦とか考えれば余裕じゃね?」
俺が元の世界に行ってる間はここでの時間は止まる。
勿論逆も然り。
俺は有効な転移の使い方を今、編み出したのだった。
「そうと決まれば!__」
俺は元の世界のことを意識が途切れるまで考え、眠りについた。
そして朝は迎える。
窓の向こう側からチュンチュンと可愛らしいスズメの鳴き声がする。
ここはまだ4月。
暖かい風が吹く晴れの日だった。
俺は大きなあくびと共に目覚める。
カレンダーを見た。
今日は4月14日、木曜日だ。
更に学校がある。
俺はパジャマのボタンを一つずつ外し私服に着替えた。
またこの世界に戻ってきたんだと徐々に実感してくる。
朝食を済ませたあと、自転車のロックを外してイスに跨いだ。
俺はまた、長い長い坂を登っていく。
そして大学が見えてくる。
その時何かデジャヴ(前も経験したこと)を感じた。
どうしてだろうか。
なぜ今まで気がつかなかったのだろうか。
俺はポツリと独り言を呟く。
「__この大学ってあの世界の施設と一緒......?」




