第弍拾壱話「西南部防衛作戦発表」(前編)
__2010年5月15日
物語は大きく揺れ動く。
「__貴様らに伝えておかなければならないことがある」
そう教卓の前に立った東雲教官が言い渡す。
いつもとは違う雰囲気に何やらただならぬものを感じた。
「貴様らは未熟でありながらもシミュレーションでの戦闘、勿論緊急でのレヴナントとの抗戦で良い結果を出してきた。後者に至っては死者を出さずに終わらせており、大いに感謝している」
東雲教官がそこまで言うとホワイトボードの前に立ち、文字を書きながら喋る。
「だからその腕を買って是非この作戦に参加してほしい」
俺は思い出した。
すっかり忘れていた。
今日があの日の1ヶ月前だというのを。
ホワイトボードに書かれた作戦名、それは__
『西南部防衛作戦』
「__ちょうど四国に当たる防衛となる。ここ最近まだ表沙汰にはなってないが、実は......沖縄が攻め落とされた。そしてレヴナントの動きや速度を検証してみるに、あと約1ヶ月で四国に上陸することになる__」
俺たちは黙ってその話を聞いていた。
沖縄が攻め落とされたことに対しては琴が口を手で抑えていた。
その続きの話としては今後のシミュレーションで、四国を舞台に新しく構築されたエリアで模擬作戦を行うというもの。
だが数までは分からないので、どんな数であっても対処できるように最初からレヴナントを多く出すということ。
「__以上だ。あとは次の授業まで解散してくれ」
解散したあともその作戦について話す者はいなかった。
それほど真剣なものだと受け止めているのだろう。
シミュレーションはしばらくメンテナンスが入ったため9時から11時、1時から3時の授業は全てグラウンドで行われた。
そしてその時が来る。
「__貴様ら、初の模擬作戦になるが今回は指令なしで戦ってもらう」
東雲教官から通信が入る。
俺は通信を返す。
「そんなの無茶ですよ。指令がないと何すればいいか分からないじゃないですか!」
「指令が落ちたら、と考えるがよい。今回だけはこの方法でどこまでいけるか検証する。以上だ。」
途端に通信が途切れる。
無理にもほどがあるだろうバカ指揮官が、と心の中で叫ぶ。
俺は開いたハッチを目の前にして出撃のブーストをし飛び出る。
出撃した直後俺たちは目を疑った。
なぜならレヴナントの数が尋常ではないぐらい多かったからだ。
NPCのアーマードも参戦してるとはいえ、一機で100体倒さないと間に合わないレベルだ。
いや間に合うかすらも分からないぐらいである。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
駆がソニックブレードを両手に前線へと無我夢中でブーストしていった。
他の仲間もそれに追いかけるかのようについていった。
俺もK48で連射しながら地上へと降り立つ。
レヴナントが四方八方から飛びかかかる。
皆は銃器やソニックブレードで応戦するが、リロードや受け止めきった反動などで隙が生まれ、一時撤退を余儀なくされる。
この一時撤退こそがもっともしてはいけない行為だ。
今回の目的はあくまでも防衛、そこから離脱してしまうと一気に攻められてしまう。
「__はぁ......はぁ......はぁ......なんや、この数は......」
「駆君、確かに多すぎますよね......」
「うむ、だがあの数にも屈しない小夜殿はすごいな......」
俺は小夜の方に視線を動かす。
そこにあったのはフォルテを2丁携えて、後退しながら敵を撃破している小夜の姿があった。
その手慣れたような戦術に俺は感心する。
だがしばらくすると弾が切れてしまったのか銃撃は収まる。
小夜はそこで戦闘を離脱した。
初めての模擬作戦は失敗に終わるのであった。