第弍拾話「模擬戦を終えて」(中編1)
「__す、すげぇ......」
「小夜ちゃん......やっぱすごいね......」
駆と美月が小夜の戦闘場面に驚く。
それもそのはずだ。
華麗にスナイパーライフルを振り回し、目標を見つけては確実に弾を当てていく。
おまけにほとんどその場から動いていない。
100点満点中120点の立ち回りと言えるだろう。
綺麗すぎる身のこなしと百発百中のスナイパーライフルさばき、完璧といっても過言ではない。
さすが天才だ。
手に汗すら握らせずに戦闘は終わる。
彼女に関しては反省点という存在はないということが分かった。
後々自分を含めた戦闘の反省を書き出しレポートにまとめた。
リーダーである俺が責任を持って東雲教官に渡すことになった。
「__じゃあ、俺、教官に渡しに行ってくるからあとは休んでくれ」
そう言葉を言い残し俺は東雲教官を探しにシミュレーションルームから出た。
と、提出する前にやることが。
如月早苗を見つけなければならない。
あいつの分のレポートも出さないと東雲教官から何かしら言われるだろう。
それとこの調子じゃ次の授業も出席しないはずだ。
俺はリーダーなんだ。
ちゃんとそこも責任とらないと。
早速、早苗を探すことにした。
タイムリミットとしては次の授業までの1時間半。
まぁ、またあそこにでもいるのだろう。
そう思ってあの時と同じように屋上に向かった。
が、しかし。
「__あれ? いないぞ.....?」
そこには何もなくただヒュゥと風だけが吹く。
俺は仕方がないと思い、階段を駆け下りた。
「だとすると、普通に考えたら自室か?」
はぁとため息をつき、今度は早苗の部屋へと足を運んだ。
何事もなく部屋の前に着いたもののどう声を掛ければいいか分からない。
とりあえずノックをする。
しかし何も返ってこない。
次にノックを3回してみる。
もちろん何も返ってこなかった。
またノックをしてみる。
今回は4回だ。
どうしようかと考え込んだ末、ノックを5回してみる。
......ダメか。
じゃあ今度は6回__
「いやそこは諦めてよっ!」
中から強い口調で叫ばれる。
「......なんだ、いるじゃないか。悪いが人数分のレポートを提出しないといけないんだ。だから書いてほしい、だけど......」
「...........」
「ま、まぁ、ほんのちょっとでいいんだ」
「...........」
未だに模擬戦でのことを根に持っているのだろう。
となるとますます掛ける言葉がなくなってしまう。
変に慰めようとしても意味がない。
むしろ逆効果なはずだ。
だから俺はこの言葉を選ぶ。
「......模擬戦、楽しかったか?」
「............」
「色んな戦法があって、色んな人がいて、勝ちとか負けとか関係なく楽しかったよ、俺は」
「.......そう」
「いい機会だったと思うぜ。あと、これからも強くなろう思えた」
「......そう」
「......代わりにレポート書いてやろうか? こう見えて他人の字を真似るのは得意なんだ」
「......自分でやるから」
俺はドアの下からすっとレポート用紙を突っ込んだ。
3分も経たずにドアの下からレポート用紙が送られる。
念のためにその用紙に書かれていることを確認した。
「__うん、これなら大丈夫だ。ありがとな。あ、次の授業出れるか?」
「......出れるからさっさと行って」
俺は「了解」と返事をしてその場をあとにした。
これで人数分のレポートは全て回収できた。
俺は東雲教官の元へ向かうことにする。
早苗とは仲良くなるのにかなり時間がかかりそうだな。
俺はそう思いながら廊下を歩み進む。