第弍拾話「模擬戦を終えて」(前編)
模擬戦が終わりみんながモニタールームに集まる。
「__諸君、この度は忙しい中、模擬戦をしてくれて感謝する。今回の模擬戦で得られたデータを元にさらなる開発の改良を進めていく。それでは解散、三木らは次の授業に備えるように」
えぇ......休む暇などなく通常どおりの授業かよ。
他の仲間も疲れているのに。
ってあれ?
よくよく見たら早苗だけがいなかった。
さっき集まった時にも彼女の姿はなかった。
どこにいったのだろうか。
俺はここにいた他の仲間を集めてモニタールームにて反省会を行う予定だった。
あいつがいないと困るが、みんなの時間を割くわけのはいかないので早苗抜きで始めることにした。
モニターで最初の戦闘から見始める。
時間といえばハッチから出て接敵した時だ。
「__あ、ここ私やられちゃったところじゃないですか!」
声をあげたのは琴だった。
確かに初っぱな撃ち落とされていた。
ちょうどモニターにもその様子が映る。
「あぅぅ、すみません。せっかく見つけたのに......」
俺はあの時を思いだした。
「__いや、あの時琴が最初に見つけていなければ何機かやられていただろう。本当に助かったよ」
「え、そうなの! えへへ、ありがとぅ~」
「うむ、私も見つけることができなかった。そなたには感謝しているぞ」
「うんうん、もっと褒めてもいいんだぞ!」
「ただ、せっかく見つけたのにいきなりやられるのはちょっとマズイ......かな......?」
琴はしょぼんとうつむいた。
だが、索敵には功を成していた。
俺は「そう落ち込むなって」と声をかけ、リモコンの再生ボタンを押した。
次のシーンは透と今宵の戦闘だった。
「あぁ、この戦いか......」
「そうですね今宵さん、これ、二対二になったんですよ」
スナイパー勝負では相手の方が経験が上。
だから接近戦に持ち込み盤面を荒らす必要があった。
「なるほど......」
こんな戦いもあるのかと釘付けになった。
中でも純という人物が気になった。
彼の立ち回りには隙がない。
もし少しでもミスが生じればこの戦いは敗北となっていただろう。
その次は美月の戦闘場面だった。
最後の拳同士でやりあっているところで俺は美月に声をかける。
「美月、よく勝てたなぁ......」
「あはは、意外と向こうもノリが良かったみたい」
そして早苗の戦闘場面と映り変わる。
一部始終を観ていたが誰も口を開くことはなかった。
そんな中、琴が言う。
「もしかして自分だけ負けて悔しかったのでしょうかね、私も最初で負けちゃったから気にしなくてもいいのに......」
「まぁ色々と複雑なんだろうな、あとで俺が声をかけるよ」
場面はまた映り変わり俺と太田の戦闘となる。
駆の戦闘場面はある程度聞いてたし、内容もちょいアレで色々と微妙ということなので割愛した。
「男同士の拳の殴り合い、いいね!」
美月が目を輝かせる。
確か合気道をやっていたんだっけな。
「三木、キックボクシングどこでやってたんや?」
最後まで見終わると駆が聞いてきた。
「あぁ、あれは__」
高校生の時に部活に入らずクラブに入って3年間やってたんだ、と言いたいところだがこの世界では俺は地下で訓練してるという設定だから言えなかった。
代わりにこう応える。
「地下にそういう施設があるんだ。まぁ色々とやらされたかんじかな」
みんなは「おぉ~」と声を揃えた。
「__さて、小夜の戦闘場面を見ようぜ」
深く詮索されないように俺は話題を変える。
リモコンの再生ボタンをピッと押し込んだ。