第拾玖話「修羅」(中編1)
「へっ......年下のくせに中々やるじゃねえか」
「いえ、はっきり言ってこれでもギリギリっすよパイセン」
二体の機体はガレキだらけの舞台の上で見つめ合う。
ここまでの戦闘で駆は銃器を捨てていた。
本人曰く、真剣勝負がしたいのこと。
「てやああああああああああああッッッ!」
ブーストをかけた空がソニックブレードを右往左往と振り回し、駆との距離を詰める。
駆はその猛攻を後ろに下がりながら受け止める。
重厚なソニックブレードの一撃は大きく、受け止めたもののその後の反撃ができないままでいた。
「へっ、しゃらくせえッ!」
空はソニックブレードを両手から片手に持ち替え、背中のロックを外しもう一本のソニックブレードを装備した。
「なんやて!? 二刀流やと!?」
驚いているのも束の間、せめぎ合っている最中空は横から腹部に向かって水平に振り斬る。
だが駆はブースターを起動、その場から一時的に撤退する。
「あぶねぇ......やられるとこだった......」
あの二刀流をどうするか。
真正面にぶつかり合っても相手の方が手数は上だ。
だとすると迂闊に近づくのは危険である。
さてどうしたものか......
珍しく駆は冷静だった。
「何考えてるか分かんねえけど、こっちからいかせて貰うぜッ」
空は両腕を開いた状態で上空にいる駆めがけて飛びかかる。
駆は防御の姿勢で迎え撃つことにした。
しかし何を思ったのか空はソニックブレードを持ったままブーストで機体ごと回転させる。
「螺旋大回転斬りッッ!!!」
荒ぶる旋風のごとく機体に斬りかかる。
一回の防御では受けきることができず、肩や胴にダメージを受ける。
その威力によって地面へと墜落していく。
受け身がとれなく、地面に叩きつけられた時の衝撃でブースター部分にエラーが発生する。
「どうだ、俺の螺旋大回転斬り、こいつを受けたやつは大体死ぬッ!」
上空にたたずむ機体はキメポーズを決める。
***
「__空君頑張ってるね」
「そうですね、千歳さん。ただあの螺旋大回転斬りというのは流石にダサいです」
中継モニターを前に千歳と純が喋る。
他の機能不能になってシミュレーションボックスが出てきた人達も観戦していた。
しかしそこには早苗の姿はなかった。
「あの、千歳さん。どうして彼は二刀流なんですか? 銃器を持たないと敵との戦いで不利になるんじゃないでしょうか......」
美月が千歳に話しかける。
「あぁ、空君はね、ヒーローものが大好きなんだって。子供の頃に見たヒーローが剣を二つ持っていたからだそう。ま、まぁ確かに不利かもしれないけどうちの隊では優秀な近接担当だからね!」
千歳は腕をぐっと引き締める。
「なるほど、一度手合わせ願いたいところだな。ただあの技名はなくても大丈夫な気が......」
今宵が横から入る。
さっきまで敵同士だったお互いが、そこから和気あいあいと話すようになっていった。
話し合いの結果、螺旋大回転斬りはダサいという答えが出た。
***
「.......っけえよ」
「?」
「かっけぇよ! その技名ッ!」
駆は手をついてなんとか立ち上がり、空に向かって叫ぶ。
「ふっ、立ち上がるか若者よ。だがあいにく勝たせてもらおうッ」
空は地上に向かってまた回転しながら襲いかかる。
「望むところだッッ!」
駆はソニックブレードを両手に構える。
「螺旋大回転斬りッッッッ!!!」
「俺の必殺技___」
駆は目をつぶる。
一撃でいい、それに全てを賭ける。
「__駆斬りッッ」
い つ か ら
フ ァ ン タ ジ ー 小 説 に な っ た ん だ




