第拾捌話「模擬戦開始」(後編)
撃ち放たれた弾丸は純の左腕に着弾。
咄嗟の反応により致命傷を防いだ。
「お借りしますよ......千歳さん......」
純は千歳が持っていたスナイパーライフルを拾い、無理やり片手で持ち上げる。
次の発射までの時間に仕留めなければない、純には冷たい汗が顔の横に流れる。
バイポッドは取り付けていない、ろくに反動制御がままならい状態だ。
それでも建物の屋上にいる機体に標準を合わせる。
対する透はその最中にコッキングを引きもう一度狙いを定めた。
互いの視線が重なりあう。
その直後互いのトリガーが引かれるのだった。
乾いた発砲音とともに発射される鋭い弾丸。
それらはすれ違い、目標めがけて飛んでいく。
弾丸は純の胸部に着弾、小さい風穴だがそれは急所を撃ち貫いていた。
もう一つの弾丸は透の頭部の中央を撃ち貫いた。
両者は機能を停止する。
スナイパーライフル勝負は引き分けの形で終わるのだった。
***
「きゃはは! それそれ~!」
「くっ......!」
後ろ向きでビルとビルの間を飛行しながら自動小銃K48で応戦する美月の姿があった。
相手の装着者は愛菜、可愛い担当と言いながら実際には近距離担当。
同じ武装であるK48を片手に美月を追い詰めようとしている。
相手の速さを越える速度でないと追い付かれてしまうため、ブースターの出力を上げるものの、その分推進剤の消費は激しくなる。
(こうなったら......!)
美月はさらに出力を上げて建物の屋上へと降り立つ。
そこでマガジンを付け替え、もう片手に短機関銃MP67を装備する。
そしてやつがこちらまで昇ってくる時を狙う。
「__みーつけた」
しかしそう甘くはいかなかった。
後ろから現れた機体はK48をこちらに向けて構えていた。
直後、食らいつくような乱射を背中に浴びせれる。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ」
猛攻により銃を二つとも床に落としてしまう。
弾が切れたあと愛菜は新しくマガジンを付け替えようとする。
その瞬間を狙い、美月はブーストをかけて地上へと撤退した。
機体はボロボロ、ブーストできる推進剤もあと僅か。
美月は勝機を確信することができない状態だった。
それでも美月は思う。
(逃げてばかりじゃダメだ。どんなピンチでも立ち向かわないと......!)
そんな中、建物の陰からアーマードが姿を現す。
その時美月は愛菜に無線を繋ぐ。
「可愛いものが好き、そうなんでしょ......?」
「うん! だ~いすき!」
「それなら来なさい愛菜! 銃なんて捨ててかかってこい!」
その瞬間、愛菜の目付き、表情が一気に変貌を遂げる。
「......野郎、ぶっころしてるッッ!」
途端、愛菜は銃器を投げ捨て拳を振りかぶり距離を詰めていく。
美月は腕を引き締め相手の様子を伺う。
距離を詰められたと同時に愛菜は頭部めがけて殴り付けようとする。
だが__
バシンッッッ
「!?」
その拳は握り掴まられ美月はもう一本の腕で敵機の二の腕を掴む。
「一応これでも合気道、やってたんだから__ねっ!!」
そしてブーストをかけて思いっきり地面へと投げ飛ばした。
あまりにもの衝撃に愛菜の機体は機能を停止する。
「う、うぐ......」
「よし、美月の勝ち! って__あれ?」
ガッツポーズをした後、味方のところに助けにいこうとブーストをかけた時、フシューという抜けた音がする。
どうやら完全に推進剤が切れたようだ。
「ごめんみんな、もう私動けないや」
てへっと笑い自ら降参ボタンを押して戦闘から離脱する。
__戦いはまだ序の口にしか過ぎなかった。




