第捨捌話「模擬戦開始」(前編)
「__お、みんないたのか。おはよう」
俺はみんなに挨拶をしながら教室に入る。
今日は作戦の確認のために5時半に起きて6時にはちょうどここに着いたところだ。
そして1枚のコピー用紙の上に消しゴムを駒がわりにして今回の作戦をもう一度伝える。
作戦はこうだ。
まず全体「く」の字のフォーメーションとなって索敵を行う。
敵を見つけたら散らばって一対一に持ち込む。
この時なるべく他に戦ってるところとは距離をとらなければならない。
なぜならもしやられた時、相手の機体が他に戦っているところに参戦したら危ういからだ。
そして最後に相手のペースにのまれない、これが一番重要だ。
「__こんなかんじだ。何か疑問があれば言ってくれ」
特に意見はなかった。
早苗は遠くから一応聞いていたらしいが大丈夫なのだろうか。
心配する時間など儚く、時刻は7時となった。
「__今日は知ってのとおり模擬戦だ。9時にてシミュレーションルームに集合、点呼をとったあと相手の隊と顔合わせ、それが終われば戦場だ」
俺はゴクリと唾を飲む。
あと2時間後だってのに緊張が止まらない。
「以上だ、あとは解散しろ。敬礼!」
「__はぁ......」
「どないしたんや、三木」
「そうですよ、らしくないですよヒロ君」
俺が窓際でため息を漏らしていると駆と透が声をかけてくれた。
「あぁ、あの作戦でホントに良かったのかなって」
それもそのはず俺は対人戦についてはド素人だ。
即興で考えたようなあんな作戦で上手くいくか悩んでいた。
もし失敗したら、もし負けたらどうしようと頭を抱えていた。
「なんや、やってみないと分からんやろ? 人生はそんなもんばっかや」
「駆君の言うとおりですよ。それに失敗してもそれが勉強になりますから。当たって砕けろとよく言うじゃないですか」
確かに負けても特にデメリットはない。
仲間がこうして励ましてくれているんだ。
リーダーとしてしっかりしないと。
「......そう、だよな。なんだかこう考え込むのも馬鹿馬鹿しくなってきたぜ」
「__あぁ、男性の熱い友情はいいですなぁ」
同じ教室にて、ずずっと琴はペットボトルに入った緑茶をすする。
「そうですねぇ、これまた乙なものですねぇ」
「うむうむ、琴の言ったとおり友情とは素晴らしいものだ。私らもいい友情を気づけているだろう。それも大事なものである」
「............?」
小夜は何を言ってるのか分からずはてなと首を傾げる。
「まあそのうち小夜ちゃんにも分かるよ」
琴は小夜の背中をぽんぽんと優しく叩いた。
「......ふん、下らない。三木のこと見たくないから私、先に行ってるね」
早苗はまだ30分も時間があるのにも関わらず教室を出ていった。
「早苗ちゃんにも分かるといいんだけどなぁ......」
美月は出ていく早苗を目で追いながらそうポツリと呟いた。
「__さて、点呼をとる。順番に整列しろ」
シミュレーションルームに来た俺たちは東雲教官に言われたとおり順番に並び点呼をとる。
「よし、次に相手の隊との顔合わせだ」
そう東雲教官が言うと自動ドアが開き何人かがゾロゾロ入ってきた。
「え、まさか......!?」
俺はあまりの出来事に言葉を失う。
なぜなら相手のエースらしき人物が__
元の世界で戦いあったあの男なのだから。