第捨漆話「何か顔つき変わった......?」(中編)
「__なに? 対人戦をしたいだと?」
「はい! PVPモードに勝った数に応じてポイントが貰えるイベントがあるじゃないですか。それの練習相手になってほしいんですよ」
俺は東雲教官......じゃなくて東雲先輩に頼んだ。
「まあ、いいぞ。だが手は一切抜かないなからな」
__数十分後
「......また、負けた」
「これで8勝0敗だぞ? まだ続ける気か?」
おかしい。
あの戦闘マシーンの小夜に勝ったはずなのになぜ負けるのか?
まあ、よくよく考えるとあれはまぐれ勝ちだったのかもしれないな。
俺は流石にこれ以上続けるのは申し訳ないと思い降参をした。
VR機器を外し近くにあった椅子に腰かける。
はぁとため息をついた時だった。
「よぉ、坊主元気にしてるか?」
話しかけてきた人物は身長が2mほどあるスキンヘッドで肌が少し焼けた男だった。
ノースリーブで緑色のジャケットを着ている。
なんだかサバイバル映画とかに出てきそうな風だった。
「あはは、対人戦ってやっぱ難しいですね」
「うんうん、よく分かるぞ。だがお前をよく見てると一つ注意点があった」
「なんでしょうか......?」
「それは相手にペースを持っていかれやすいことだ。お前、さっきの戦いで東雲につられていただろ」
俺はハッとなる。
確かにそうだった。
東雲先輩は常に俺が攻撃するのを見計らってから反撃をしていた。
何も考えなければそれが普通の戦いに見えるだろう。
だが、東雲先輩は常に自分に有利なポジションにつき、最終的には攻めやすいポジションにいつの間にか俺は誘われていた。
最後の攻撃を食らった時の場所が、ブーストでかわしづらいところだったのはそういうことか。
「対人戦で大事なのは単なる戦闘スキルだけじゃねえ、その場所の地形をいかに早く把握し利用することだ」
「なるほど......勉強になります」
「ま、ものは試しだ。一戦付き合うぞ」
「はい!」
その後俺は一戦どころか日が暮れるまで戦った。
最初は試行錯誤しながらだったため負けることが中心だったが、後半では段々勝てるようになっていた。
「__かーっ、お前は戦闘面はホンットつえーんだな。反応速度が伊達じゃねえ」
「ありがとうございます、なんだか弾がゆっくりに見える時があるんですよね」
「ほう......お前、もしかして__」
「わ、もうこんな時間! 今日はありがとうございました! また明日お願いします!」
時計を見ると7時を指している。
俺は颯爽と部屋から出ていった。
そういえばあの人の名前聞き忘れたけど......まあまた今度でいいか。
駐輪場に着いた俺はチャリの鍵でロックを外した。
「あれ、三木じゃん。今空いてる?」
後ろから美月の声がした。
俺はチャリを出しながら返事をする。
「あぁ、空いてるけど」
「そっか、じゃあ今日も一緒に帰らない?」
「いいよ」
俺はチャリを押しながら美月とともに校門を出た。
辺りはもう暗い。
一応家まで送っていこうか。
そう思ったときだ。
「三木、何か顔つき変わった......?」
「え?」
とっさに言われ困惑する。
「なんだかさ__」
「これから戦場にでも行くみたい」